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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾章 遊戯創造
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拾之肆 新たな

「え、えーーと……」

 舞花さんの意図するところがわからず、どう反応したら良いのかわからなくなってしまった。

 新たなヴァイアを生み出して、ぬいぐるみを動かす。

 そういう流れだったのに、突然、動かす予定のぬいぐるみをヴァイアにしたいと言われてしまったことで、私の頭は真っ白になっていた。

「リンちゃん、ダメ?」

 目を潤ませて上目遣いで聞いてくる舞花さんの悲しげな表情に胸が締め付けられる。

 どうにかしてあげたいと言う気持ちが徐々に強くなってくるが、言葉が出てこなかった。

 そんな私を見かねてか、那美さんが「マイちゃん、一旦落ち着いてぇ」と間に入ってくれる。

 舞花さんは声に反応して、那美さんの方へと振り返った。

「順番にぃ、お話しを勧めたいとぉ、リンちゃんもぉ、困っちゃうわぁ」

 那美さんの言葉に舞花さんは「そっか」と頷いて、再びこちらに向き直る。

 そのタイミングで、今度は志緒さんが「それで、ヴァイアの外見をぬいぐるみにすることは出来るの?」とグッと顔を近づけてきた。

 既に志緒さんの目は好奇心でキラキラと輝いている。

 志緒さんの勢いには少し気圧されてしまったが、検討内容をまず一つ切り出してくれたことで、私がまず考えることが絞り込めた。

「あー、えーと、外観がぬいぐるみ……」

 私はそこまで口にしてから、目を閉じて、出来るか出来ないかを自身に問い掛ける。

 これまで『オリジン』『シャー君』『リンリン』と実体化してきけど、志緒さんの用意してくれた設計図を元に出現させてきた。

 設計図を元にしていたのでイメージがしやすく、これを作るというのがはっきりと思い描けていたと思う。

 では、舞花さんのぬいぐるみはどうかと考えてみることにした。

 まずイメージは直接目にしているので、設計図よりもしっかりしている。

 触らせて貰えばより完全に近い形で複製できる感覚があった。

 外観や外見は問題なさそうなので、中身について考えてみる。

 ぬいぐるみの中にヴァイアを埋め込めるかどうか、そう考えると、すぐに出来るという感覚が湧いてきた。

 ただ、ぬいぐるみの中身がどうなるのかという方向に意識を切り替えようとすると途端に確信が崩れる。

 綿と機械の入る空間の比率だとか、中身の機械の構成だとかを考えると、私ではイメージしきれないので、それが原因ではないかと思われた。

 ある程度考えることを放棄した方が成功率が上がるのはモヤッとするが、月子先生の『構造や機能の詳細を知らない方が高い性能のものを生み出せる』という指摘は、悔しいけど的確だと痛感する。

 なので、より確実に舞花さんの要望を聞き届けるために、詳細については()()()()()()()()

 直後、私は自分自身の思考の違和感に、ハッとした。

「どうしたの、リンちゃん?」

 急に何かに弾かれるようにして、目を開いたからだろうか、心配そうな顔で結花さんに声を掛けられる。

「あ、大丈夫……なんだか、ぬいぐるみのヴァイアを出すの……出来そうだなって思っただけで」

「そうなの?」

 なるべく明るく言ったつもりだったのに、結花さんの表情は未だ心配そうだった。

 このまま違和感に関して思考を巡らせていると、より心配をかけそうだったので、夜、月子先生の特区の時まで放置することに決めて、笑顔を作る。

「舞花さんの『ステラ』出せそうです」

 まず舞花さんへ視線を向けてそう伝えると「やった~~~!」と嬉しそうな声が返ってきた。

 志緒さんはキラキラの目に加えて鼻息を荒くしながら「で、できるんだ」とじっとこちらを見てくる。

 那美さんは何か考え始めたようで、自分の髪を弄びながら、一人で百面相を始めた。

 残る一人、私を心配そうに見ている結花さんに視線を向けてから、一度咳払いをする。

 それからなるべく表情を引き締めて「少し気になることがあったんですけど、これは一人で感覚を確かめながら少し考えてみないと上手く言葉に出来ません。だから、まとまった時に話を聞いてくれますか?」と伝えると、結花さんは一瞬間を置いてから苦笑して息を吐き出した。

「無理はナシだよ?」

「もちろんです」

 結花さんの言葉に頷きで応えてから、私は話を切り替える。

「ところで、結花さんはどんなヴァイアにしたいんですか?」

 そう尋ねると、結花さんは「えっ! ユイは……」とわかりやすく視線を逸らした。

「出来るか出来ないかは言って貰わないと判断できませんよ、結花さん」

「そ、それは、そう……だよね」

 何かを躊躇っているように感じる結花さんの受け答えに、私はもう一歩踏み込んでみる。

「もしも、私に負担になるかもと思っているなら、大丈夫です。難しかったり出来なかったりしたら、ちゃんと言いますから」

「う、うん……」

 普段の結花さんとは違う歯切れの悪さに、私は少し心配になってきた。

「言い難い……ですか?」

 私がそう尋ねた直後、舞花さんが「ほら、お姉ちゃん、ちゃんと言わないと……舞花が言おうか?」と背中を押すのかと思ったら、役割を変わると言い出す。

 それは結花さんにも予想外だったらしく、慌てた様子で「言う! 自分で言うから!!」と大きめの声で代理を断った。

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