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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
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玖之参拾漆 次のステップ

 私が出現させたハードディスクを見ながら、月子先生は「……本当に出来たね」と声を漏らした。

 月子先生は身長なので、私が失敗する可能性も考えていたんだろう。

 安心して良いですよと言う意味を込めて「出来るって感覚がありましたからね」と胸を叩いて見せた。

「たしかに、君の能力は君自身の実感が重要だからね」

 月子先生はそう言って頷いてから「『オリジン』このハードディスクドライブの容量を調べてくれ」とオーダーを出す。

『計測を開始します』

 一連の動きを見ていた私は、なんとなく理由を察した。

 確認するか一瞬迷ったが、月子先生に()()()()()を伝えるためにも口に出す。

「もしかしてですけど、あり得ないものを出現させてしまってますか?」

 私の質問に対して、月子先生からは「いや、無いことは無いよ。ただ、普通は高額なものだからね、そうポンと手にできるモノじゃないだけさ」と言う答えが返ってきた。

 月子先生に「なるほど」と返しつつも、詳しく調べるのは辞めておこうと決める。

 おそらくだけど、高額意外に何か臥せられたポイントがあるとは思うけど、それを知ると次に出現させる時に壁になる可能性があると想像がついたからだ。

 そんなことを私が考えていると『オリジン』が『計測が終了しました。容量はおよそ60TBです』と報告を上げる。

「ありがとう『オリジン』」

 自然と『オリジン』に対するお礼の言葉が出たのだが、月子先生がそんな私を見て「自然と感謝の言葉が出るのは良いことだよ」と微笑まれてしまった。

 なんだか無性に恥ずかしい。

 が、悪いことではないので敢えて何か言い返したりはせずに、思った言葉とを恥ずかしさとともに飲み込むことにした。


「とりあえず、君の記憶を収める下準備が出来たところで、君の分身をヴァイアが動かせるかを検証しよう」

 月子先生の提案に、私は「わかりました」と同意した。

 分身をヴァイアに動かして貰って、もう一人の京一(わたし)を生み出すというアイデアも、そこが出来なければ始まらない。

 ただ、こちらの世界であろうとアチラの世界であろうと、普通に実体を持った存在として動かせている分身には、そもそもぬいぐるみと違って、自ら体を動かせるのだ。

 大きさ的に多少の負担はあるのかも知れないが、駆動機構が存在しないのに動かすのとはワケが違う。

 諸々を考えていくと、私の中では動かせて当然という気持ちになってきた。

 すると、突然『オリジン』がピッと電子音を立てる。

「え?」

 私が声を漏らした直後『オリジン』が『機能がアップデートされました』と報告を上げた。

 すると、月子先生は「アップデート?」と口にして眉を寄せる。

 そこで少し考える素振りをしてから、月子先生は「『オリジン』アップデートの詳細を報告してくれ」と指示を出した。

『遠隔操作機能が更新されています。凛花様が生み出す『分身体』の操作が可能になりました。凛花様が生み出すヴァイア全機で使用可能になりました』

 そう『オリジン』が報告を上げた直後、あっという間に間合いを詰めてきた月子先生にガシッと両肩を掴まれてしまう。

「つ、月子先生?」

「何をしたか、正直に言いなさい……怒らないから」

 既に怒らないと言っている顔に張り付いた笑顔にもの凄い迫力を感じるのだが、そこには触れずに「特に何も……」と口にしかけたが、睨みと共に遮られてしまった。

「何もしてなかったら、アップデートなんて起きませんね? そうですね、凛花君?」

「そ、そうです……ね」

 私が恐る恐る頷くと、月子先生は「では、思い出してください、何をしましたか?」と顔を近づけてくる。

「ゆっくりで良いですよ。ゆっくりで良いので、しっかりと思い出してください」

「わ、わかりました」

 完全に月子先生の迫力に気圧されてしまったものの、私としても切っ掛けは気になるところなので、行動を振り返ることにした。


「正直、思い当たる点がない……です」

 私の結論に、月子先生の目が鋭くなった。

 その険しい表情に、私は慌てて「ただ!」と声を張り上げる。

 新たな話を私がし始めると判断してくれたのか、月子先生は無言のまま引き下がった。

 私は一度咳払いをして声を整えてから、改めて口を開く。

 頭の中で話す内容がまとまったわけじゃないけど、月子先生なら何か気付くかも知れないという希望を込めて、改めて自分の記憶を辿った。

「ま、まず、ハードディスクを出現させましたよね」

 私の言葉に、月子先生は静かに頷く。

「それで、検証内容が『ヴァイアで私の分身を動かす』に変わりましたよね」

「私はそこで君が何かを考えたんじゃないかと思っている」

 月子先生はそう言うと、私をじっと見詰めて「アップデート内容が今まさに君が言ったことに触れる内容だからだ。つまり、そこからアップデート報告の間に、君がどんな行動をとったかを知りたい」と続けた。

 そうして、限定されたお陰か、ふと一つの行動が脳裏に浮かび上がる。

「……もしかしてですが、ぬいぐるみよりも分身の方が動かしやすいだろうと考えたからかも知れません」

 私の思いつきに、月子先生は「そう」と口にし、深く考え始めた。

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