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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
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玖之弐拾玖 挑戦

「え? 何言ってるの、リンちゃんは……」

 志緒さんにもの凄い呆れ顔を向けられてしまった。

 非常に不服なので、私がスゴイと感じた理由も言葉にする。

「いや、だって、私には思い付かない考え方だし!」

 志緒さんの立場なら、私はきっとがっかりしてしまうだろうから、そこで腐らずに考え方を切り替えて前向きに考えられるのは絶対に凄いことだ。

 私が正真正銘の小学五年生だった頃に、こんな柔軟な考え方が出来たかを考えれば、どれだけスゴイかわかる。

 それが出来る志緒さんへの尊敬を込めて、ダメ押し気味に更に言葉を重ねた。

「私だったら、同じのが作れないって聞いたら、がっかりする! 間違いない!」

 そんな私の力説に、志緒さんは困惑した表情で「そうかな~?」と首を傾げる。

 考えていたのとは違うリアクションに「あれ?」と思わず驚きが声に出た。

 そんな私に対して、那美さんが「私はぁ、しーちゃんと同意見かなぁ」と言う。

「同意見って……」

「うん。リンちゃんなら、がっかりなんてしないで、また別の方法を考えてどうにかすると思うなぁ」

 そう言う那美さんに、志緒さんは「だよね」と大きく頷いた。

「しーちゃんとは、思い付く方法は違うかも知れないけどぉ~。リンちゃんはぁ、がっかりして終わりにはしないと思うなぁ~」

「うんうん。責任感強いし、負けん気も強いもんね」

 那美さんと志緒さんに、私は「え、そ、そうかな!?」と聞き返せば、同時に頷かれる。

「う、うーーん」

 思わず唸った私に、志緒さんは「自覚がないのか~」と苦笑を浮かべた。


「まあ、どちらにしても、もう一個出してみないとだよね」

 私の問い掛けに、那美さんは「そうねぇ」と返してきた。

 志緒さんは「もしも違いがあれば、検証するだけだから、気軽にやって……って、どれだけ大変かわからないから、こんなこと言わない方が良いかもだけど……」と笑顔で話し出したのに、申し訳なさそうな顔で話を締める。

「大丈夫、気持ちが軽くなったよ……志緒さんは考えすぎだよ」

 私の言葉に志緒さんは目を細めて「ほんと? 気を遣ってない?」と詰め寄ってきた。

「だ、だから、大丈夫だよ。それに、無理だったら、多分出現させられずに終わっちゃうと思うし、今のところ出現させる時に体に負担が掛かっている感じはしないから、大変って事はないしね」

「……信じて上げるけど、無理しちゃ駄目だからね?」

「うん。わかった」

 気持ちの籠もった志緒さんの眼差しに頷きで応えてから、改めて『シャー君』二号機を出現させるため、意識を集中させ始める。

 プロジェクターの時の変化を考えると、私が実物の仕様を知った今、『シャー君』ではなく『ヴァイア』に反応するはずだ。

 だけど、音声認識が『シャー君』に反応することを喜んでくれた志緒さんの姿を思い浮かべると、ここは二号機でも変えたくない。

 そう考えた瞬間、これまではなかった大きく体からエネルギーが出ていく感覚がした。

 恐らくこれは、変化させるために必要なエネルギーを持って行かれたということだと思うが、それは同時に()()()ということだろう。

 それならば、可能な限り、一号機と同じものを作り出すと決めた。


 全身からこれまで放出したのと比べものにならないエネルギーが抜け出て、手の先へと集まった。

 最初に『シャー君』を出現させた時と比べると、エネルギーがものに変わる速度が遅い。

 意識を切らすと、エネルギーが散って、出現させることそのものに失敗しそうだ。

 音声が認識する名前の変更、シャー君型へのフォルム変更は出来そうだが、測定不可能なスペックは上手くいかない感覚がしたので諦め、家電や電気機器の操作能力は出来そうだったので詰め込んでいる。

 完璧に同じというわけにはいかなかったけど、どうにか近いしい物は出来そうだ。

 真剣な表情で私の手元を見詰めてくれている志緒さんと那美さんを見て、改めて気合を入れ直し、最後の瞬間に臨んだ。


「勝手に、ごめんね」

 私がそう言って謝ると、志緒さんは「うんうん」と首を左右に振った。

「色を変えてくれたお陰で、どっちが一号機か、二号機かわかるよ!」

 志緒さんの右手に乗る一号機は藍色に近い青色で、左手の二号機は緑がかった青をしている。

 ふと、まったく同じだと見分けがつかないなと考えた結果なのだが、実行する前に聞いておけば良かったと後悔していたので、許してくれた志緒さんの寛大さがありがたかった。

「志緒さんが優しくてよかった」

 私がホッと胸を撫で下ろすと、顔を見合わせた志緒さんと那美さんが順番に口を開く。

「リンちゃんの方が、どう考えても考えすぎよねぇ」

「なっちゃん、人は自分が一番見えないのよ」

 頷き合う二人のやりとりが、なんだか面白くなかった。

 すると、那美さんが「そんな不満そうにしなくて良いでしょ~~」と私の頬をつつく。

「ちょっと、那美さんつつかないでください」

「も~可愛いんだから、リンちゃんはぁ」

 聞く耳を持ってくれない那美さんはツンツンと突く指を止めてくれなかった。

 すると、何故か反対の頬にも突く感触がする。

 視線を向ければ、私に見られて固まった志緒さんが指を私の方に押し付けてるのが見えた。

「志緒さんまで!?」

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