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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
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玖之弐拾漆 スキンシップ

「ちゃんと言うって、難しいね」

 志緒さんの言葉に、私は大きく頷いて同意した。

「でも、那美さんがいてくれたお陰で、すれ違わなくてよかった」

 心から思ったことをそのまま、感謝の気持ちを込めて那美さんに向ける。

「当たり前じゃない~~、私が一番お姉さんなんだからぁ~」

 胸を張る那美さんに「そう言えばそうだった!」ととうい思ったままを声に出してしまった。

「ちょっと、リンちゃん!?」

 私の発言に慌てる志緒さんに続いて、那美さんが「ちょっとぉ~リンちゃん~どういう意味かしらぁ~」と口にしながら近づいてくる。

「え、いや……その、ど忘れ?」

 私の回答はお気に召さなかったらしく、那美さんは私にのしかかってきた。

「ちょっと、那美さん!?」

「処刑じゃぁ~~~」

「えっ!?」

 直後、腰を中心に那美さんの指が蠢き出す。

「ちょ、まっくすぐっ……」

 そこから先は言葉を発すことが出来ず、私の口から出るのは那美さんのくすぐりで強制的に吐き出させられた笑い声だけだった。


「すみませんでした」

「わかれば、いいのですぅ~緋馬織は上下の関係に厳しい学校なのですぅ」

「はつみ……」

 思わず初耳と言いかけた私の視界に、ワキワキと動く那美さんの両手が見えた。

「き、肝に銘じます」

「よろしぃ~」

 一連のやりとりの後、那美さんと私は顔を合わせて同時に笑い出す。

 こんな茶番に、当然意味は全くないんだけど、胸が凄く温かいと思えた。


「もう、二人だけ盛り上がってズルイ!」

 那美さんがくすぐってきてからずっと『シャー君』と話していた志緒さんが、もの凄く不満そうにそんなことを言い出した。

「なら、私を助けてよ~」

「え、なんで?」

 真顔で返された私は思わず瞬きをしてしまう。

 そんな私の反応に、志緒さんは何かに気が付いたようなハッとした表情を見せて慌てて言葉を付け足した。

「だ、だって、リンちゃんがなっちゃんがお姉さんなの忘れてたって言うんだから、お仕置きされただけでしょう?」

 そう言われてしまうと、確かに私が一方的に悪いと頷けてしまう。

 だから、放っておいたと言うことなのだろうというのはわかったけど、そこで気になる点が頭に浮かんだ。

「もし仮に私がやり返して那美さんをくすぐっていたら?」

「もちろん、なっちゃんに援軍するけど」

「えっ私の味方はしてくれないの?」

「悪いの、リンちゃんだからね」

 ぐうの音も出ない程のストレートな意見に私は「確かにそうですね」と素直に白旗を揚げる。

 と、同時に、考えのベースに京一の部分があるせいだなと、今後に向けての反省点も強く実感した。

 こんなやりとりを月子先生にでも知られてしまえば、私の意識不足を馬鹿にされかねない。

 今は『卯木凛花』だと言うことを、しっかりと頭に刻まないといけないなと改めて気を引き締めた。


「それで『シャー君』じゃなくて、リンちゃん制作の『ヴァイア』なんだけど……」

 志緒さんが言い直したことに苦笑しながら「長いから、今後は『シャー君』で統一しよう」と提案すると、すぐに二人とも頷いてくれた。

 特になんだか嬉しそうな志緒さんの様子に、こっちも頬が緩みそうになる。

 そんなことを思ってると、視界にニヤニヤとこちらをみる那美さんの姿が入ってきて、そこで既に自分の表情が緩んでることに思い至った私は、慌てて話を進めることにした。

「シャ、シャー君が、ど、どうしたの?」

 急場しのぎの私の問い掛けに、ありがたいことに志緒さんはすぐに「リンちゃんは、さっき私が照明の指示を出したの覚えてる?」と応じてくれる。

 志緒さんの言葉に軽くその時のことを思い浮かべながら、私は頷いた。

「灯りを消したり暗くしたりだよね」

 私の返しに、志緒さんは深く頷いてから、とても真剣な表情で「実はね、リンちゃん」と切り出した。

「この部屋の照明、明るさを変える機能ないしぃ、そもそもリモコンもついてないのぉ」

 急に横から入ってきた那美さんの情報に、私の口から「えっ!?」と驚きの声が飛び出る。

 設定していないのに操作できた……を、遙かに上回る『シャー君』のとんでもさに、その後はまったく声が出てこなかった。

 そんな私の目の前で、志緒さんが那美さんに抗議し始める。

「もう、なっちゃん、私が言いたかったのに!」

「そうねぇ、でも、私も言いたかったからぁ~」

 シレッと返された那美さんの発言に対して、志緒さんは「む」と一言声を発してから唸り始めた。

 それから矢山が空いたところで、志緒さんは「じゃあ、しょうがない」と言って、受入れてしまう。

「私も説明したいって思ってたから、なっちゃんの気持ちは誰よりわかっちゃうしね」

 苦笑交じりに言う志緒さんに、那美さんは少し驚いた表情を見せた。

 それから、志緒さんに似た苦笑を浮かべながら「別に怒ってもいいんだよぉ」と言う。

 対して志緒さんは「うーん。でも、私も言いたいって思ったら止まれなくなっちゃうから、なっちゃんの言いたいって衝動を止められないかな」と返した。

 そんな志緒さんの言葉に、那美さんは少し申し訳なさそうに「悪戯半分でも?」と尋ねる。

「悪戯心かも知れないけど、言いたいって思っちゃったんでしょ? 私の『説明したい』と変わらないよ」

 那美さんは志緒さんの返しに「いい子すぎるぅ」と言いながら抱き付いた。

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