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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
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玖之拾漆 異常

「三人なんだからねぇ、さ~~ん~~に~~ん~~!」

 腰に手を当ててわかりやすい怒っていますポーズを取る那美さんに、私と志緒さんは「「ごめんなさい」」と謝罪の声を重ねた。

 すると、那美さんは「じゃあ、許すぅ」と言って笑みを浮かべる。

 那美さんの』寛大な判決にホッとした私敏夫さんは、顔を見合わせてから笑い出した。

「だ~か~ら~、さ~ん~に~ん~!!」

 直後、那美さんからのクレームが飛んでくる。

 結局笑いを止めて今度は三人で真顔を突き合わせることになったが、その直後、三人同時に笑い出すことになった。


 レコーダーに繋げたタブレットパソコンの画面に、記憶そのままの流れでロゴが表示された後、見慣れたメニューが表示された。

 メニューには、ボタン状の『見る』『録る』『編集』『設定』といったアイコンが表示されている。

「この画面になったら、リモコンで……」

 説明しようと思って口にした言葉で、私は自分のミスに思い至った。

「リモコン……出してなかった」

 そこに気付いたならとるべき行動は一つである。

 ところが、目を閉じて『リモコンを出す』ために意識を集中始めたところでストップが掛かった。

「リンちゃん、ちょっと待って」

「うぇっ!?」

 止められると思っていなかったので、変な声が出てしまったが、ストップを掛けた志緒さんはそれに触れることなく、真面目な顔で「先に試したいことがあるの」と訴えてくる。

「た、試したいこと?」

 私が聞き返すと、志緒さんは大きく頷いて「デッキを直接操作したり、市販のリモコンが使えるかを試したいんです」と考えを教えてくれた。

 内容を聞く限り私があのまま出現させてしまってもよかった気がしなくもないけど、ここは志緒さんの訴えを受入れる。

「そっか、じゃあ、志緒さんに任せるね」

「うん!」

 嬉しそうに頷く志緒さんを見て、私の選択は間違ってなかったと思いながら、改めて、主導権を委ねることに決めた。


 デッキに触れボタンを押している志緒さんが「う~~ん」と首を傾げながら唸った。

「志緒さん、どうしたんですか?」

 私の質問に対して、振り返った志緒さんが「どうしたら動くかなと思って」と言うので、参考になればと思ってデッキに触れてみることにする。

 普段はリモコン操作をしていたけど、直接デッキに触れて動かしたこともあるので、その操作方法を思い浮かべながら、記憶に従ってボタンを押してみた。

 すると、私の操作に従って、選択されたアイコンが大きくなり、選択を外されたアイコンは他のものと同じサイズに小さくなる。

 決定ボタンを押せば『録る』の詳細にはダビングやテレビ欄、直接入力などの選択肢が現れた。

「操作感覚は、元々うちで使っていたものと同じに感じますね」

 操作感について参考になればと、思ったままを志緒さんに伝えるが、反応が薄い。

 それが気になって「志緒さん?」と声を掛けると、体を震わせた志緒さんが私を見た。

「志緒さん、どうしました?」

「あー、えっと、リンちゃん。操作変わって貰っても良い?」

 志緒さんにそう言われて「もちろん」と頷く。

 そうして操作パネルの前を開けると、志緒さんはすぐに操作を始めた。

 ポチポチという独特のボタンを押す音が響き、合わせて画面上でポップアップが起きたり、カーソルが上下左右に動く。

 何度もボタンを押して、無心に操作している志緒さんを少し不思議に感じた私は「操作性はどうですか?」と声を掛けてみた。

 すると、志緒さんはとてもにこやかな笑顔を浮かべて「うん。異常だね」と言い放つ。

「……ん?」

 想像もしていなかった言葉が聞こえた気がして、私の思考は緊急停止した。

「リンちゃーん」

 志緒さんが私の目の前で手を振って、声を掛けてくれてることに気が付き、我に返る。

 そして、私はすぐさま志緒さんに問い掛けた。

「し、志緒さん、今変なこと言わなかった?」

「まったく言ってないよ」

 さらりと返された志緒さんの言葉に、一瞬固まってから、私は改めて聞き直す。

「異常って……いったよね?」

「異常だからね」

 大きく頷く志緒さんに、私は顔が引きつるのを感じながら「ど、どこが……?」と尋ねてみた。

 すると、志緒さんは「うん、実演しましょう」と言うとデッキに指を触れる。

「見ててね」

 志緒さんがそう言うと、タブレットの画面に映し出されたメニューが動きを見せた。

 ただ、動きは至って普通で、異常なところなんてどこにも見当たらない。

 そう思っていると、志緒さんが「今ね、ボタン押してないの。触れているだけ」と言い放った。

「えっ!?」

 思わず声を漏らしてしまった私は、志緒さんの指先と画面を交互に見て確認する。

 すると、言葉通り、指は触れているだけでボタンを押すこともないのに、メニュー画面の方は様々な動きを見せていた。

「ね、異常でしょう?」

 志緒さんの問い掛けに対して、私は苦笑するしかない。

 元々はボタン操作が必要なデッキが、そのボタンを押さなくとも触れているだけで操作でき手しまう状況を言い表すなら『異常』が確かにふさわしいと、私は納得してしまった。

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