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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
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玖之拾伍 じゃれ合い

「あははは、ほら、やっぱりぃ~~」

 楽しそうに笑う那美さんの声に恥ずかしさが爆発しそうな私が、志緒さんの様子を見ようとしたことで、お互いの視線が重なった。

 直後、誤解をされないようにと思った結果、またも同時に「「似てるのが嫌って事じゃないからね!」」と言い合ってしまって、那美さんの笑いを加速させてしまう。

 これでは那美さんの似たもの同士という言葉を否定できないなと思ってしまった。

 そのタイミングで、那美さんが口を開く。

「ちなみに、二人とも、相手が自分に似てたら嫌な気分になるんじゃないかと思ってたでしょう?」

 その指摘に、三度私と志緒さんは「「うっ」」と声を重ねることになった。


「マイちゃん、ユイちゃんのコンビみたいだったわぁ」

 一人ニコニコの那美さんに対して、私も志緒さんも顔が火照って仕方なかった。

 今の自分の表情派生書くにはわからないが、志緒さんの表情から容易に連想できてしまう。

 何も言えなくなってしまった私と志緒さんを前に、那美さんは大きく溜め息を吐き出した。

 釣られて視線を向けると、頬に手を当てた那美さんが「私もコンビになってくれる子が欲しいわぁ~」と呟く。

 咄嗟に『月子先生とかどうですか?』と言いそうになって飲み込んだ。

 なんとなく、それ入ってはいけないと、私の中の何かが警鐘を鳴らしている。

 好奇心は旺盛な方だけど、流石に踏み込むのは辞めようというくらいには、危険な香りを感じた。

 一方、志緒さんも那美さんの発言が気になったようで「まーちゃんは、ちょっと違う……か、な?」と呟く。

 腕まで組んで悩み始めてしまった志緒さんを見て、那美さんが慌てて「あ、しーちゃん、そ、そんな真剣に悩まないでぇ、冗談だからぁ」と声を掛けた。

「え……でも……」

「リンちゃんもしーちゃんもまじめすぎて困るわぁ~」

 じゃれつくように那美さんは、志緒さんに抱き付く。

「なっちゃん?」

 驚きの声を上げた志緒さんは、体をくすぐられたのもあって即座に笑い声を上げ始めた。

「も、もう!」

 志緒さんの怒った声が聞こえた後で、攻守が入れ替わり、那美さんが笑い声を上げる。

 盛り上がった二人を見ながら、那美さんが口では冗談と言ってはいるものの、それは誤魔化しだろうと私は考えていた。

 ふとこぼれた言葉には、意識していない分本音が含まれやすい。

 それほど強く思ったわけじゃなくても、那美さんの本心は自分と似た相手を求めているのだ。

 無意識の那美さんは、自分が特別という認識がある分、皆との距離を感じているのかも知れない。

 私も本来は成人しているのに、見た目や『神格姿』の事もあって、小学生の中に紛れているので、多少は境遇に近い者があるはずだ。

 自分が周りと違うというのは心細いし、自分に近しい存在を求めたくなる。

 ただ一方で、そういう弱い自分というのは受入れがたいものだし、自分のキャラクターというものもあるので、那美さんがそこを誤魔化すのにはいろんな理由があるんだろうなと思った。


「ひゃっ!」

 一人考えを巡らせていた私の脇腹を機転に衝撃が走った。

 体に一気に駆け抜けるしびれるような感覚と同時に、体から力が抜ける。

「にゃ、にゃに!?」

「リンちゃんだけ見物はよくないわぁ」

「仲間はずれはダメだもんね」

「はっはいぃ!?」

 気付けば目の前に那美さんと志緒さんの顔があった。

 更に右半身に那美さん、左半身に志緒さんがくっついていて、それぞれが私の脇腹に手を伸ばしている。

「にゃにしてるんですかっ!!」

 私の抗議の声に対して、那美さんと志緒さんは声を揃えて「「くすぐり~」」と返してきた。

「ちょ、やめっ!」

 こしょこしょと細かく指を動かしながら脇腹から脇にかけて動き回る志緒さんの手と、脇腹からお腹を撫で擦るように往復する那美さんの手、種類の違う刺激で力が抜けた体に、くすぐりに反射するからだが筋肉を緊張させるので、一時も休めない。

 二人のくすぐり攻撃に追い詰められつつも、年下の女の子を力で排除するわけにはいかないという意識が、無理矢理振りほどこうとする気持ちを押しとどめた。

 最初こそギリギリまで我慢するつもりだったのだが、流石に限界が近づいてくるとそうも言ってられない。

 が、もうだめだと思い二人を突き飛ばそうと思った時には体に力は要らなくなってしまっていた。


「ゴメンなさい。リンちゃん」

「つい調子に乗ってしまいました」

 私の前に正座した那美さんを志緒さんは同意って頭を下げた。

 正直、私も自分の状況を読み誤って、ストップを掛けるのに遅れてしまったので、二人だけの制というわけではない。

 とはいえ、苦しかったし、私もやり過ぎだなとは思うので、どういう風にお説教をすべきかで悩んでいた。

 すると、那美さんが自分の上着をめくって「ほら、リンちゃん、くすぐって良いよ!」と言いながら頬を赤らめる。

 それを見ていた志緒さんも慌てて、上着の裾に手をかけた。

「ちょっと、待って、わかったから! 許すから、服をめくらないで!」

 私の言葉に、那美さんと志緒さんが手を止める。

 それを見てホッとした私に、那美さんがとんでもないことを言い放った。

「服の上からくすぐりたいのぉ?」

「違いますっ!!!」

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