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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
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玖之拾肆 一致

 機械のことを詳しい女子というのは多くはないだろうし、もの凄い勢いで説明する志緒さんは、私から見ても少し気圧される部分があった。

 同年代の女の子がされたら、志緒さんから距離を取ってしまうかも知れない。

 きっと過去に拒絶された経験が志緒さんにはあって、それがトラウマになっているのだろうと思った。

 そう考えると、志緒さんがどこか呆然としているのにも納得がいく。

 当たり前かもしれないけど、これまで志緒さんの機械に詳しい一面を見た子達と私の反応が違っていたて驚いたのだ。

 だから、もっと安心させて上げようと思う。

「好きなものに詳しくなるのは当たり前だし、好きなものなんて人によって違うでしょ? 私なんて、こう見えてお菓子好きで甘いものに目がないよ?」

 常に笑いを誘ってきた私の渾身の自虐ネタに、志緒さんも那美さんも一瞬真顔になってから笑い始めた。

 このネタで笑わなかったヤツはいないのである。

 なんだか買ったような気になっていた私は、事実の誤認に気付かずに勝ち誇っていた。


「リンちゃん、それ、普通だわぁ」

「むしろ、似合いすぎてるから、私の機械の話と釣り合わないよ?」

 笑いながら言われた私の頬は恐らくポスト並みに赤いはずだ。

 つい京一の意識で放った渾身の自虐ネタだったけど、今の凛華の姿で言えば、自虐でも何でもない。

 むしろ『でしょうね!』と言われても当然の内容(ネタ)だと言うことに、ようやく気が付いた。

 もの凄く恥ずかしいものの、まあ、志緒さん……と、那美さんも笑ってくれたので良しとしようと思う。

 私はそもそも、場を和まされるための自虐ギャグのつもりで発言したはずだ。

 予定と違って恥ずかしかったけど、それは飲み込もう。

 心でそう決めた私は「そ、それじゃあ、実験に戻ろう……か」と切り出した。

 対して志緒さんは「リンちゃん」と私の名を呼ぶ。

「ん?」

「ありがと」

 柔らかな笑みと共に放たれた志緒さんの言葉に、少しは気持ちを軽くして上げられたんじゃないかと思えて、胸が熱くなった。

 だから、志緒さんへの返しは、少し照れくささ混じりの言葉になってしまう。

「何にもしてないよ……だって、私は普通のことを言っただけだし、ね」

 私の言葉に志緒さんは頷きながら笑みを深めてくれた。

 が、このタイミングで、にゅっと私っと志緒さんの間に、顔を挟んできた那美さんが「私はお菓子が大好きとかねぇ~」と茶々を入れてくる。

 こんな少し照れ笑いをしている状況でそんなことを言われればどうなるか……当然、私達はそのままお腹を抱えて笑うことになった。


「これ……スマホ?」

「うん」

 志緒さんが手にしたスマホを見て、目を丸くした。

 さっき撮影に使っていた志緒さん自身のスマホではなく、私がレコーダー同様に、今目の前で出現させたばかりのものである。

「スマホも出せ……るよね、プロジェクターも出せるんだもんね」

 発言の途中で納得したらしく、志緒さんはしきりに頷きを繰り返した。

 一方那美さんは、表情を輝かせながら志緒さんの手に収まったスマホを見て「で、このスマホはどんな凄いことが出来るのぉ?」と尋ねてくる。

「さすがに、私の出したもの全部に特殊能力があるわけじゃ……」

 そこまで言いかけて、私は『異界NetTV』の存在を思い出した。

 固まった私を見ていた那美さんが「しーちゃん、この反応はぁ~」と言いながら志緒さんを見る。

「ありますね、確実に何かあります」

 ジト目になった志緒さんがズイッと私に顔を近づけてきた。

 それに倣って、那美さんもニコニコしながら顔を近づけてくる。

 そんな二人の圧力にあらがえるわけもなく、私は早々に白旗を揚げてしまった。


「『異界NetTV』」

「流石、リンちゃん……規格外だわぁ」

 私の簡潔な説明に対して絶句した志緒さん、一方の那美さんは頬に手を当てて大人のお姉さんみたいな雰囲気の溜め息を吐き出した。

 那美さんの溜め息に心がざわついた私の口から、勝手に説明が飛び出す。

「で、でも、これがあれば、アチラの状況をこちらで掴むことが出来て、ですね!」

 何に焦っているのか自分でもわからなくなっている私を、那美さんの手の平と「リンちゃん」という呼びかけが制した。

「は……はい?」

 辿々しくなってしまった私の返事の後で、那美さんは「わかりにくかったかも知れないけどぉ」と話し出す。

「褒めたの、リンちゃんを褒めたのよぉ」

「ほめ……」

「私はしーちゃんやリンちゃんみたいに賢い方ではないけど、でも、その『異世界netTV』が私たちのスゴイ助けになってくれそうなのはわかるわぁ」

 那美さんは真っ直ぐと私の目を見ながら言葉を続けてくれた。

 そのお陰で、心の底から思ってくれているのだというのが伝わってきて、勢いで生み出したスマホや『異世界netTV』がとても誇らしくなってくる。

 そんな私の気持ちの変化を表情か……ひょっとしたら能力で感じ取ったのであろう那美さんが笑みを深めた。

 そして、那美さんは振り返って志緒さんに視線を向ける。

「しーちゃんと、リンちゃんって、結構似たもの同士ねぇ」

 直後、私と、志緒さんの声が重なった。

「「そんなことないです!!」」

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