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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
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玖之拾壱 混乱

「あ、改めて、実験を始めようと思います」

 あのまま妹談義が続いたら、本当に妹扱いされかねないと踏んだ私は、パンと手を叩き合わせて、話を切り替える旨を主張した。

 対して、志緒さんも那美さんも「「はーい」」と声を揃えて同意してくれる。

 反対意見が出なかったことに安心しつつ、話を切り出した。

「まずは、記憶の保存ということで、レコーダーがいいんじゃないかと思います」

 私の言葉に、那美さんが「なるほどぉ」と頷いてくれる。

 志緒さんは「頭のイメージを映す、()()プロジェクターの応用だね。映像で投射するんじゃなくて、録画データとして記録するんだね」と意を汲んでくれた。

 私は志緒さんに「うん」と頷いてから、テーブルに向けて両手を伸ばす。

「リンちゃん?」

 志緒さんに名前を呼ばれた私は、きっと手をかざしたことに疑問があるんだろうと考えて、この後にやることを説明することにした。

「えっと、私の中の力をこの伸ばした手の先に集めて、それをレコーダーに変化させようと思います」

 私の説明に対して、那美さんは「おーー」と歓声を上げる。

 一方、志緒さんは私に手の平を見せて「待って、ストップ、動かないで」と言ってきた。

「志緒さん?」

 どういうことだろうと思わず目を瞬かせる私に、志緒さんは立ち上がると自分の机に掛けていく。

 引き出しを開けて、中から取り出したものを「リンちゃん」と言って私に見せてきた。

「えーと、スマホですか?」

「うん」

 私の問いに頷いた志緒さんは、軽い足取りでシャー君のそばまで戻ると、トスンと勢いよく腰を下ろす。

 ふわりとスカートがめくれたのを見て、思わず私は反射的に視線を逸らしてしまった。

 その私の反応に気付いたんだろう志緒さんが「あ」と声を漏らす。

「みたくなかったよね?」

 そう尋ねられた声がどこか悲しげで、私は慌てて左右に首を振った。

「そ、そんなことないよ!? いや、そんなことあるけど、違くて! そういう意味じゃなくて、見たい! も、ち、ちがくて、でも、だから、あの……」

 言葉を重ねる程に、自分自身が何を言いたいのかわからなくなってくる。

 フォローしなきゃいけないけど、否定も出来ないし、肯定すると問題だしと、頭がぐるぐるし始めた。


「リンちゃん!」

「ふぁい?」

 私の喉からかなり間の抜けた声が出た。

「ゴメンゴメン、揶揄っちゃった」

「あ、ふぇっ」

 ぐるぐる回っていた頭が物理的に撫でられる。

「って、はっ!?」

 頭の感覚に驚いて、反射的に身体を引くと、私の頭に伸ばされていたのであろう志緒さんの手が視界に入った。

「む~~」

 名残惜しそうな声を上げて、伸ばしていた手の指を志緒さんは細かく動かす。

 何やらイソギンチャクを思わせる動きに、ちょっと背中が涼しくなった。

「私もここの前の学校で、スカートめくりして泣き出しちゃった子がいて、大問題になったことがあるから、リンちゃんが焦るのわかるよ」

 シャー君を抱きしめながら、志緒さんは過去を思い出す様に天井を見ながら言葉を続ける。

「だって、その時めくったのも女の子だったけど、凄く泣いちゃってね……やっぱりスカートの中見られるのが嫌な子は嫌だからね。気遣ってくれてありがとうね、リンちゃん」

 そこで一旦言葉を切ってから、志緒さんはニッと笑って「まあ、私はスカートの中見られても平気だから安心して!」と言い切った。

 その後で、志緒さんは「あ」と言った後で、まるで水銀式の温度計のように、首から徐々に赤が上へと登っていき、頭のてっぺんまで赤くなってしまう。

「ちょ、あ……」

 意味を成さない声を発しながら志緒さんは、抱えていたシャー君を抱き上げて、真っ赤になった顔を隠した。

 ふるふると頭を振りながらギュッと自らの顔をシャー君に押し付け、何事かを叫ぶがくぐもって言葉になら無い。

 しばらく聞き取れない叫びを上げたところで、志緒さんはピタリと動きを止めた。

 それから見てわかる程大きく肩を動かして深呼吸をした志緒さんは、そこでもう一度動きを止める。

 やや間を開けてから、ちょっとだけシャー君をズラしてこちらを見た志緒さんは「も、もちろん誰でも平気じゃないよ? リンちゃんやなっちゃんだから平気なだけだからね、勘違いは駄目だよ?」と恥ずかしそうに主張した。

「う、うん」

 恥ずかしがる志緒さんの気持ちが感染したのか、私は頬が熱くなるのを感じながら小さく頷く。

「よ、よろしい」

 そう言って志緒さんが澄まし顔を見せたことで一段落した後、訪れた沈黙に、私たちは同時に笑い出した。


「あーーおかしぃ」

 なんだかんだ一番爆笑していたのは私たちのやりとりを見せられる形になっていた那美さんだった。

 当事者の私たちの照れ隠しを含めた笑いと違って、心の底から笑っているのが羨ましいような、恨めしいような、妙な心境になる。

 私はその気持ちを頭を振って振り払うと、さっき、聞けなかったことを志緒さんに尋ねた。

「それで、志緒さん、スマホをどうするんですか?」

「あ、えーとね」

 志緒さんはそう言いながら今度はベッドの下の収納から、何かを取り出し始める。

 ややあって、志緒さんは「じゃーーん」と言いながら取り出したものとスマホを組み合わせた。

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