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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
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玖之捌 予知夢

「予知夢……ですか……」

 驚きの籠もった私の発言に対して、志緒さんは「そんなにちゃんとしたものじゃないけどね」と少し影のある笑みを見せた。

 そこが気になりながら、何もわからなくては判断も出来ないので「ちゃんとしてない……ですか?」と口にして、志緒さんの反応を覗う。

 すると、志緒さんに変わって、那美さんが「簡単に言うとぉ、なんとなく、いつ頃『種』が芽吹くかわかる日があるみたいなのぉ」と教えてくれた。

「え、種ってあの種ですよね!? スゴイじゃないですか!」

 思わず声が大きくなってしまったせいか、志緒さんは表情を少し強張らせる。

「あ、ごめんなさい。興奮してしまって」

 咄嗟に謝ると、志緒さんはブンブンと左右に激しく首を振って「だ、大丈夫!」と言ってくれたのだが、その頭の動きの方が大丈夫に見えなかった。

「と、ともかく、志緒さんは『種』の……その、気配がわかるんですよね」

 私の問い掛けに志緒さんはオロオロとしながら「わかるって言ってもね。そんなはっきりしてなくてね」と時々上目遣いになりながら答えてくれる。

 私はなるほどと頷きつつ「はっきりしないって、どういう感じか詳しく聞いてもいいですか?」と尋ねてみた。

 すると志緒さんは「えっと……」と視線を左右に動かした後で、何か覚悟を決めるかのように大きく頷く。

 その後で私をしっかりと見た志緒さんは、ゆっくりと話し出した。

「朝起きた時に、なんとなく、今日だ……とか、明日だ……とかって感じで、わかるというか……」

 発言が後半に行くにつれて声が小さくなっているのは、自信のなさの表れだろう。

 このままだと話が終わってしまいそうだったので、私は「もしかして、それが朝起きた時に?」と尋ねてみた。

 すると、志緒さんは目を丸くして「え、な、なんでわかったの!?」と驚きの声を上げる。

 私としては大した推理ではなかったけど、妙に出来ると思われないように、ちゃんと理由を説明することにした。

「予知夢って聞いてたから……夢なら、朝かなって、単純な連想」

「そっか! でも単純じゃないよ、リンちゃん、スゴイ!」

 目をキラキラさせて絶賛してくれるのは嬉しいと言えば嬉しいのだけど、かなりくすぐったい。

 なので、早々に話題を切り替えることにした。

「私は志緒さんの予知夢の方が凄いと思いますよ。だって、わかるんでしょう?」

「それは……」

 私の返しにとm名取った表情を見せた志緒さんに代わって、那美さんが「今のところ100発100中なのぉ」と補足してくれる。

 確率は聞きたくても聞きにくかったことなので、正直助かるサポートだった。

「スゴイじゃないですか! そんなに当たるなら……」

 少し興奮気味に言ってしまった私を、志緒さんは普段聞かない程の大きな声で「待って!」とストップを掛けてくる。

「……志緒さん」

「まだ、その……わたしにも、よく、わかって、ないこと……だから……」

 辿々しく言葉を足していく志緒さんに、私は「その為に夢を記録するんですね?」と声を掛けた。

 私が先を見越した発言をしたからか、志緒さんは一瞬驚いた素振りを見せてから「うん」と小さく頷く。

「『種』の事がわかるなんて凄いことですけど、皆を期待させた後で出来ないってなったら、嫌ですもんね。ちゃんと仕組みを理解してから伝えたいって思いますよね」

 私の言葉に対して、志緒さんは「リンちゃん」と小さな声で私の名前を呼んだ。

 恐らく私の考えで合っていると思うんだけど、志緒さんにドキドキしながら「違った?」と尋ねる。

「ちが……わない」

 志緒さんの返事を聞いて、私はホッとしながら「それじゃあ、記憶の保存、そして、予知夢の実用化に向けて、一緒に実験して行きましょう」と告げた。

「は~~い」

「うん」

 私の言葉に、那美さんと志緒さんは頷きで応えてくれる。

 素直に嬉しいと思いながら私も頷きで返した。


「志緒さんの能力を確実なものにするために、夢を記録しようというのはわかりました」

 那美さんと志緒さんを順に見ながらそう告げた後で、私は思い浮かんだ一つの懸念を告げることにした。

「でも、夢って……その、記録し続けるとよくないって聞いたことがあります……記憶を保存できるようになったとして、そのこと自体が危険かも知れない……だから……」

 辞めた方が良いかもしれないと続けようとしたのを遮って、志緒さんが「その話なら、私も知ってる」と言う。

 それに対して、私が『それなら辞めよう』と提案する前に、志緒さんは「対策なら考えてあるの」と口にした。

「夢日記を付けるとおかしくなってしまうのは、夢の記憶が鮮明になるからみたいなの」

「うん……だから、夢を保存なんてしたら、鮮明になっちゃうんじゃないかって……」

 志緒さんに、私が懸念していることを伝える。

 すると、志緒さんは「うん。だからね、私は見ない」と言い切った。

「え?」

「なっちゃんやリンちゃんに、私の夢を見てもらったら、予知夢が信用できるものかどうかわかるし、私の夢の記憶も鮮明になったりしないでしょう?」

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