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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
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玖之漆 進展

 那美さんと志緒さんのベッドの間の空間に敷かれたカーペットの上に置かれた小さなテーブルを囲んで、私たちはそれぞれクッションの上に腰を下ろした。

 那美さんは猫の肉球をもしたクッション、志緒さんはデフォルメされたサメがモチーフのクッションに座っている。

 一応、ゲストの私には白い大福のようなデザインのクッションが貸し出された。

 なんとなく、二人のクッションとの違いに、忙しなく視線を動かしすぎたようで、志緒さんに「あ、リンちゃんも可愛いクッション欲しいよね?」と気を遣わせてしまう。

 私は慌てて「そんなことはないよ!」と伝えたが、那美さんはどこからとりだしたのか、写真の載った紙が挟まれたクリアファイルを取り出してきた。

「はい、リンちゃん」

「え?」

 差し出されたクリアファイルを受け取ると、那美さんが「クッションの注文シート。頼めば花ちゃんがすぐに注文してくれるよぉ」と教えてくれる。

「クッションの注文……」

 そう言われてクリアファイルに挟まれた紙に目をやれば、いろいろなデザインのクッションや抱き枕などが掲載されていた。

「それはクッションとか枕とか、もこもこなものの注文シートでぇ~もう一枚の方が毛布とかタオルケットとかシーツとか、寝具が選べるよぉ」

「そうなんだ」

 那美さんに頷きつつ渡された紙を見てみると、小心らしき品々の写真と名称商品番号が記載されている。

 が、そこにあるべきものがないことに気が付いた。

「あれ? 値段が書いてないけど……」

 私の疑問に対して答えてくれたのは志緒さんで「うん。だって支給品だし」と言い切る。

「そうなの!?」

 思わず声が大きくなってしまった私に、志緒さんはサメクッションを抱きしめながら「それでね。私のシャー君……このサメ君みたいに、オリジナルのは届くまでに一ヶ月くらいかかるから気をつけてね」と恥ずかしげに教えてくれた。

 そんな志緒さんの話に、私は固まる。

 那美さんは私が固まったことに首を傾げながら「どうかしたの、リンちゃん?」と尋ねてきた。

「いや……クッションが支給品なのがもう驚きなのに、オーダーメイドまで出来るなんて思ってなくて」

「あー、リンちゃんその辺の話聞いてない? クッションだけじゃなく、お洋服とか、文房具とかも、タダで注文できるのよぉ」

「そ、そうなんですね……」

 改めて、国の補助があるって凄いなぁと目が遠くなった。


 ギュッとサメのクッション『シャー君』を抱きしめた志緒さんが、上目遣いで遠慮がちに「そ、それで、何をするの?」と尋ねてきた。

 元々は私と那美さんで研究をしようと言うことでこの部屋にお邪魔させてもらっているので、志緒さんにはまだ状況が伝わっていない。

 それでも、何かを私たちがやるということは察しているんだなと思った。

「簡単に言うとぉ、私を助けてもらうのぉ」

 那美さんの言葉に、志緒さんは「助けてもらう?」と口にしつつ、私に視線を向ける。

 完全に那美さんからの情報提供を諦めたというのが視線だけで、わかってしまった。

「えーと、私の能力開発を手伝ってもらうことになって……」

「え、でも、助けるって」

 志緒さんの疑問の声に、私は「それは、上手く能力が開発できれば、那美さんの助けになるかも知れないって事で……」と記憶関連は触れずに返す。

 けど、実際に能力研究に入れば、志緒さんも目的を知ることになるわけで、一瞬お茶を濁しただけに過ぎない言葉だ。

 とはいえ、那美さんが志緒さんにどこまで話しているのかわからないし、どこまで話して良いと考えているかもわからないので、迂闊に話せなかったというのが大きい。

 私はこの先どうするのだろうと思いながら、那美さんに視線を向けた。


「リンちゃんと研究するのは『記憶を保存する機能』なのぉ」

 那美さんは、私が視線を向けた直後に、そう言って笑った。

「記憶……」

 少し驚いた表情を見せた志緒さんに、那美さんは「これで忘れ物を減らせるから、すっごく助かるわぁ」と言い加える。

 私はその那美さんの言葉に、これ以上は踏み込まないでねという意思を感じて、志緒さんがどう反応するのかに興味を引かれた。

「良いな、なっちゃん。私も保存してみたい」

 そう言いながら私に視線を向けた志緒さんに対して、那美さんは「でも、シーちゃん、記憶力良いから、必要ないんじゃなぁい?」と首を傾げる。

 対して志緒さんは「うーん、確かに私は覚えるのは苦手じゃないけど、でも、記録できるならしておきたいんだ」と苦笑した。

 記憶を残しておきたいというのは、花子さんも口にしたことなので、私は「そうなんですねー」と頷く。

 一方、那美さんは「もしかして」と何か思い当たることがあるようで、志緒さんをじっと見詰めた。

「うん」

 志緒参班馬見参に大きく一回頷くと、私に試験な表情で「私、夢を記録したいの」と言う。

「夢……って、寝ている時に見る……あの、ですか?」

 私の聞き返しに、志緒さんは「うん」と深く頷いて、那美さんが驚くような言葉を補足した。

「シーちゃんは、たまに見ることがあるのよぉ。予知夢」

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