表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第玖章 驚愕開発
227/814

玖之参 対策

「おや、気付いた」

 月子先生の言葉に、思わず「気付いたって何ですかっ!」と声を荒げてしまった。

「少し話題をズラして反応を楽しんでいた」

 悪びれもなく言い放つ月子先生の言葉に、より怒りが積み重ねられる。

「反応が良すぎる君にも多少なりと問題があると思うよ」

 悪びれもなく月子先生に「ソーデスネ」と不満を込めて言葉を返した。

 だが、逆効果だったらしく笑いながら「そういう所だよ」と笑われてしまった。


「それで、那美の件だが……危険じゃないなら、二人でも研究をしてみたらどうかと思う」

「……危険じゃなければ……」

 私が繰り返した言葉に頷いた月子先生は「そうだね……空を飛ぶとか、火を出したり、雷を出したりは危険だね」と例を挙げた。

 確かにそれはそうだと思う内容だけに、私は「なるほど」と頷く。

「後は、君の分身に、球魂を乗り移らせたりは、未だ許可できない」

 いずれは、実戦で使うとは言っても、未だ検証段階なので、そこも当然だと思った。

 実際、自分の体ではない身体に乗り移ったまま戻れなくなったり、私のように脳のキャパオーバーを起こしてしまったりと、危険はかなりある。

 確かにそこは月子先生や雪子学校長、花子さんがいない場所でやるのは自殺行為だ。

 そうなると、一つ、課題が浮き彫りなる。

「あの……そうなると、二人で研究って、何が出来るんでしょうか?」

 何もプランが思い浮かばず、ついそのまま月子先生に尋ねてしまったが、私の出来ることはほぼ禁止されているし、禁止されていないことは、変化だとか分身を出すとかで、私の特訓には良いかもしれないが、二人で研究には向かないと思うのだ。

「まさか、ストレートに聞いてくるとは思わなかったが……少しは考えようと思わなかったのかな?」

「……正直、二人で話し合って、何かを見出すのが良いとは思いますけど、危険度を二人では見誤ってしまうかも知れないので、それならば、指針というか、ここまでは大丈夫なラインを見極めておきたかったというか……」

 少し表現が曖昧になってしまったけど、二人で盛り上がってしまったら、今の私はついやってしまいかねないと危惧している。

 私自身が、元々押しに弱いところはあった上に、多少調子に乗りやすい性格なので、自分がいまいち信用できなかったし、この身体になってからその傾向が強くなっている感覚もあって、怖いのだ。

 もちろん、私一人がどうにかなるなら、それは自業自得で構わないけど、那美さんを巻き込むのは許容できない。

 ラインを見極めるためにも、いまいち信用のおけない自分の判断ではなく月子先生の意見を聞いておきたかった。


「君だけじゃなく、那美のために持ち割れると、流石にヒントくらいは出さざるを得ないね」

 少し間が空いただけに、どんな返しが来るかと思ったけど、月子先生の答えは了承だった。

 ホッとしつつ「教えてください。お願いします」と頭を下げる。

「……いいね。可愛い容姿を十二分に利用できているよ」

 月子先生の言葉は揶揄いを含んで聞こえるけど、ここで反応すると脱線してしまうので、くすぐったさを堪えて、続きの言葉を待った。

 すると、少し不満げな表情を見せつつ、月子先生はボソリと呟く。

「しかたない」

 引き出した言葉で勝利を確信しつつ、口元が緩まないように表情筋に力を入れて、更に待ちの態勢を貫いた。

 微かな溜め息の声が聞こえた後で、月子先生は「記憶を保存出来る機械を出してみるのがいいんじゃないかな? 研究は記録した記憶を再生できるかどうか……というのを最初の研究にすると良いだろう」とアイデアを提供してくれる。

「記憶を保存できる機械……」

 私は月子先生のアイデアを口にしながら、なるほどと納得した。

 機械の類いであれば、事故は起こりにくいし、記憶の保存であれば、本人に影響は出にくそうである。

 実際、私の出したプロジェクターは記憶のデータを投影しても、花子さんや舞花さんに影響はなさそうだった。

 それに花子さんが私のプロジェクターをベースに、記憶の保存に挑んでいるので、私たちの研究が成功しなくても大丈夫そうと言うのも挑む上でのハードルが高くなくて良い。

 加えて、これなら出来そうだという感触があった。

「あの、月子先生、ありがとうございます!」

 素直に感謝の言葉を伝えると、月子先生は「真っ直ぐお礼を言われると、揶揄(からか)う気も起きないね」と苦笑する。

 その発言に、割と真面目に「ずっと揶揄わないでいただけると助かるんですが」と言ってしまった。

 すると、月子先生は「あはははは」と笑い出す。

「何ですか、突然!?」

「そういう事を素直に言ってしまうから、君は可愛いんだよ」

「か、可愛いって」

 月子先生の指摘に思わず表情が強張った。

 そんな私に月子先生は「今のは君の外見じゃなくて、内面の話だからね」と言い放つ。

「うぇっ!?」

 思わず変な声が出てしまった私に対して、月子先生は笑いながら「良かったじゃないか、身も心も可愛いとか、最強の女子小学生を目指せるぞ! 見た目的には年を取らないしね」ととどめを刺しに来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ