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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第捌章 師弟混迷
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捌之拾 課題

 完全に月子教授に手玉に取られているとしか思えないものの、今更なので噛み付くのは辞めた。

 それに都合よく考えれば、私が尻込みしないようにと、月子教授が配慮してくれたとも受け取れる助言である。

 月子教授なりに気遣ってくれているのだと思うと、正直嬉しかった。

 ということで、月子教授は優しいなぁと思うことにしたのだが、それが表情にでていたのか、あるいは那美さんのように私の思考が読めるからなのかはわからないけど、苦虫をかみつぶしたような顔をする。

 その表情の出所が何であっても、私は勝ったような気持ちに浸れたので、それだけで十分に満足だった。


「では最初の課題として、狐の姿の分身と今の姿の分身を同時に出してみてください」

 月子教授の指示に対して、私は「何故同時に?」と課題の意図を尋ねた。

「単純に、似た移動時に出現させられるのか、それと同時に出現させるものが容姿の違うモノであった場合、それは可能なのかを確認するためですね」

「……なるほど」

 月子教授の説明を聞いて、ふと大学時代を思い出す。

 その時もいくつも月子教授から課題を出されたが、彼女のクセなのか、やり方なのか、常に課題は複数、最低でも三つは用意されていた。

 しかも難易度が上中下と少しずつ違っていて、差種類ならば、だいたい中、真ん中のものが出題される。

 そんな課題のルールを思いだした私は、ふと好奇心がうずいて、月子教授に質問を投げ掛けた。

「ちなみに、一つ上と、一つ下の課題はあるんですか?」

 私の問いに対して、月コキュ応需は微かに笑うと「もちろんありますよ」と返してくる。

「聞きますか?」

 ある意味想像通りの月子教授の問い掛けに対する私の答えは決まっていた。

「もちろん、聞いておきたいです」


「今回は実は三段階どころではなく、かなり多めに目標課題を設定していますから、心してください」

「そ、そうなんですね」

 月子教授の言葉を聞いて、思わず怯んでしまった私に対して「もう尻込みですか?」という容赦ない問い掛けが飛んでくる。

 素直に頷くのは嫌だし、かといって怯んだ以上否定も出来ないので、私は「だ、大丈夫です!」と、気持ちを整えたことを伝えた。

「ふむ」

 姉である雪子学校長に似た仕草で、私ののぞき込みながら頷いた月子教授は「では説明に入りましょう」と言う。

 反応から心の内を探られているのだろうと察した私は、なるべく無表情を心掛けることにした。

 そんな私の決意も読み取っているのか、いないのか、月子教授はフッと笑った後で、ピッと人差し指を一本だけ立てる。

 思わず伸ばされた指に私が視線を向けると、月子教授は「まず、一つ目の課題は、複数体の分身を出現させられるのかの確認です」と説明を始めた。

 話を聞いていると示すためにコクリと頷くと、月子教授は人差し指の横に中指を立てる。

「二つ目は複数を同時に出現させられるかの確認です」

 更に薬指も立てられた。

「三つ目は分身体は個々に別の容姿で出現させられるかの確認です」

 月子教授はそこまで口にすると、四本目の小指を立てることなく、手を降ろして、私をじっと見詰める。

「課題に三つの指針があることはわかりました」

 私が個々までの説明は理解したという意味でそう伝えると、月子教授は大きく頷いた。

 その上で再び口を開く。

「今回の課題設定には、実用出来るだけの素地があるかを判定するという目的を含んでいます」

「実用……」

「凛花さんの分身に球魂を宿らせて戦える場合、全員の危険度が大きく下がることになります……私としては採用できるなら採用したい……雪姉や花子も同じ意見です」

 じっと私を観て話す月子教授からは、なみなみならない真剣さを感じて、一切目を離すことが出来なかった。

 一方で、私の思いつきに対して、これほどまでに注目をしてくれているのが嬉しい。

 思いに応えたいという気持ちがどんどんと溢れてきた。

 そんな私に、月子教授は課題設定の裏側を説明し始める。

「まず、君の分身に球魂を宿らせることが立証されれば実用化したい。となると、最低でも6体、出来るなら10体は出せることが望ましい」

「10体……」

 月子教授は私の負担なども考えて、最低をメンバー分の6体と言ってくれているのだろうけど、実際の最低は10体で間違いないはずだ。

 実際に戦いに投入するなら、予備というか、いざという時の備えは必要だし、花子さんや雪子学校長など、私たち以外のメンバーの使用も考えると10体でも少ない。

 ただ、そこをクリアすれば投入しても良いという事だと思うので、まずは6体を目指し、安定して10体を達成しようと私は決意した。

「次に同時出現させられるかについてですが、実はこれはそれほど重要ではありません」

「それは何故ですか?」

「全員分の分身を出現させられるなら運用でフォローできるからです」

 素早い月子教授の返しに、私は戸惑いながらも「運用ですか?」と聞き返す。

 軽く頷きつつ月子教授は「全員で神世界に突入するのは現状のまま、君の分身に球魂を宿らせる順番を、まず接近戦を行うものからにしていけば、それだけでも危険度が大きく減りますからね」と説明してくれた。

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