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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第捌章 師弟混迷
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捌之陸 配役

「キャラクターは結構皆に当てはまってましたね!」

 珍しく興奮気味に話す志緒さんに触発されたのか、同じようなテンションで舞花さんが同意した。

「そうなんだっ! なんか皆に似てるなって思ってて、それでね、それで、あっちで銀色の髪のリンちゃんを見て、セレニィだって思ったの!」

 舞花さんの発言を聞いて、なるほどと私は心の中で頷く。

 ミルキィ・ウィッチは子供向けアニメというのもあって、キャラ毎のカラーが決まっていて、衣装も髪もその属性に近い色がメインに使われていた。

 土のアースリィは黄色、水のウェンディーは水色、火のフレアリィは赤と、エレメントをイメージしやすい配色になっている。

 主人公だからだろう風のシルフィーはピンクだ。

 基本は四人共がワンピースというか、バレエで使われるスカート付のレオタードのような衣装で、二重になったスカートの上が白、下がイメージカラーになっている。

 キャラによって少し形状は異なるけど、胸に大きなリボン、ブーツにグローブと白を基調として各キャラクターのイメージカラーがラインとして入っている共通性の高いデザインになっていた。

 後から加わる二人の衣装もデザインは大きく変わらないものの、サンディは金髪の髪に、虹の七色がスカートやラインとして使われている。

 そして、セレニィは紫のスカートに、黒と紺と紫のラインが配色されていて、髪の色が銀色なのだ。

 舞花さんが私とセレニィを結びつけたのもその部分が大きいのだろう。

 いや、むしろそれ以外に共通点がない気もするけど、とにかく、似ているっていう感覚が舞花さんを突き動かして、この上映会やコスプレ衣装作りにまで発展するんだから『好き』のパワーは本当にスゴイなと素直に思った。


「サンディはお姉ちゃん!」

「舞花はシルフィってことね」

 結花さんの返しに、舞花さんは「逆が良い?」と上目遣いで尋ねた。

 そんな舞花さんに対して、ウィンクを決めながら「ユイは舞花のお姉ちゃんなんだから、当然、一葉でしょ!」と言い切る。

 笑みの浮かんだ結花さんの断言に、舞花さんはホッと胸を撫で下ろしたところで、何かに気付いたらしくハッと顔を上げた。

「あ、皆ごめんね! 双子だからって、舞花達勝手に……」

 どうやら勝手に話を進めた……というか、配役したことを気にしているようだけど、私を含め、違和感がないというか、当然に感じる配役なので異論は全くない。

「二人にはあってるし、良いと思うよ」

「キャラにあってるってヤツだわぁ」

 志緒さんのキョトンとした表情と、那美さんの蕩けるような表情で放たれた言葉に、一瞬、固まった舞花さんは「そっか」と恥ずかしそうに表情を崩した。

「オレも……い、いいとおも、う」

 東雲先輩の発言が辿々しいのは、多分、衣装の方が気になっているからだと思う。

 アニメのキャラクターというのもあると思うけど、変身した姿のスカートがかなり短いのだ。

 膝上丈のスパッツが見える程なので、実際に身に付けたら相当短いと思う。

 更に、恐らく本人を含めてだけど、皆が東雲先輩の担当だと思っているフレイリィは火のエレメントと言うこともあって、一番肌の露出が多いのだ。

 キャラによっては肘まであるグローブをしているのに、フレイリィは手首の赤いブレスレットのみだし、足下は他のキャラがブーツなのに、ヒールのある赤いパンプスで、手首とお揃いの赤いアンクレットがあるのみ、肩もノースリーブで、肩口に炎を模した赤い飾りがあるだけなので、腕も足もほぼ丸出しなのである。

 露出具合は女の子用のスクール水着とほぼ変わらないので、東雲先輩には辛いだろうなと同情を禁じ得なかった。

 私の方はまあ、諦めの境地というのもあるけど、花子さんを含め、みんなといろいろあったせいか、衣装への抵抗はないので、慣れれば大丈夫とアドバイスをしたいところだけど、中身が林田京一だということを隠しているので、効果があるとは思えない。

 というか、受け取り方によっては、煽っているように見えてしまっても、おかしくなかった。

 そんなわけで、同情の目を向けるしかないのだが、私の視線に気付いた東雲先輩が「心配入らない」と少し力のない声で、引きつった笑みを浮かべる。

 東雲先輩の私への言葉は、自分に対して心配しなくてもいいという意図だったと思うのだけど、舞花さんはこれを逆に解釈したみたいだ。

 ギュッと私の手を掴んで「リンちゃんを見て、セレニィだと思ったんだもん。絶対に合うし、絶対可愛いよ!」と真剣な目で訴えてくれる。

「そうだよ、リンちゃんにははまり役だと思う!」

 志緒さんが空いていた舞花さんが握るのと反対の手を握りながら、そう力強く言ってくれた。

 嬉しいような、悲しいような複雑な感情になりながらも、心配してくれたことに感謝して「ふたりともありがとう」と伝えると、二人とも照れたように笑う。

 とても微笑ましいものの、居心地の悪さというか、気恥ずかしさがあったので、私はすぐに話題を変えることを試みた。

「舞花さんのシルフィも、結花さんのサンディも良い感じだけど、志緒さんも間違いなくアースリィですよね」

 私の発言に、志緒さんが食い気味で「そ、そうかな」と尋ねてくる。

「三つ編みも同じっていうのもあるけど、何よりも、志緒さんは本が好きだから!」

 私の理由付けに、志緒さんは顔を赤くして俯いてしまった。

 思わず、何か不味いことを言ってしまったのか焦った私の耳に返事が届く。

 志緒さんの熱の籠もった「うん」という嬉しそうな声に、私はやらかしていなかったと安堵した。

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