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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第捌章 師弟混迷
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捌之壱 目指すは

 雪子学校長は結局翌日には目を覚ました。

 なので、林田先生が不在になったのは『学校の用事で急にお使いに行ったから』ということに決まる。

 これまでも教師陣が急遽学校を離れることはあることだったので、割とすんなり受け入れられた。

 ただ、緊急といえど、雪子学校長がこれまで学校を離れることはなかったため、月子教授は皆に疑問を抱かれないように入れ替わることにしたらしい。

 そんな騒動の原因になった、私と『穢れ』との突発的な接触については、雪子学校長達も想定外だったので、当然の素対策が求められることになった。

 結果、月子教授が私の飛翔についての検分、花子さんが私への『穢れ』対策の技術伝授、雪子学校長が『結界』に私が与えた影響の確認を行うことに決まる。

 報収集や検証はこれから随時行われていくことになるのだが、現状で、月子教授は今回の原因に関する仮説を立てていた。


 予想外の飛翔を見せた主原因は『誘惑』対策として貸与されている『火行の数珠』の影響ではないかというのが、月子教授の推測だった。

 私がこの数珠を付けているのは、金行に属する『誘惑』の能力を打ち消すというか、封じ込めるためで、五行相克における『火剋金』という考えに則っている。

 要するに、金行の『誘惑』の弱点属性である『火行』があれば、能力が漏れ出ることはないということなのだが、私の身に付けている数珠は、本来、封印を目的で作られたわけではないのだ。

 単純に『火行』の強化を行う装身具である。

 それがどう飛翔に影響するのかと、月子教授に数珠を指摘された時には思ったが、理由を聞くと思わずなるほどと思ってしまった。

 何しろ『火行』を象徴する聖獣は『朱雀』であり、この『火行』に属する生物は『羽根』や『翼』を持つものである。

 当然、私の翼が強化されてもおかしくないというわけだ。

 というわけで、後日改めて数珠を外した状態でのテストをすることになったのだが、そもそも『誘惑』を防ぐ目的があるので、皆がいる状態では試せないし、夜にプールは危ないので、いつ試すかは決まっていない。

 ただ、私を含め、花子さんや雪子学校長も、月子教授の推測は概ね正しいだろうと考えていた。

 むしろ、そうじゃない場合は新たな仮説を立てなくてはいけないし、検証も必要になるので、どちらかといえば、そうであって欲しいという方が正しいかも知れない。

 現状では、空を飛ぶ必要性もないので、このまま封印かも知れないと思っていたら、月子教授に「床が軋む音が怖いからって翼を出さないようにね」と揶揄われた。

 言い返す方法が事態が悪化すると考えた私は、恥ずかしさを堪えて黙って受け入れる。

 反応がなくて興味を失ったのか、離れていった月子教授を見送って、小さくガッツポーズをしたところを花子さんに見られたのは誤算だった。

 何しろ、花子さんはとんでもない仕組みを考案していたのである。

 私が出現させた『イメージ投影機』と化したプロジェクターで、自分の見た光景を映し出して、その映像を録画することで、デジタルデータにしてしまうという荒技だ。

 その事実を知った私は思わず『投影機』を消したのだが、それで問題を大きくしてしまう。

 なぜなら、目で見たことをデジタルデータに変えるという花子さん考案のシステムは、月子教授の様な潜入捜査をする人間にとって垂涎もののシステムだった。

 資料にしても、事件現場にしても、見るだけで良いのだから、機器を発見されて潜入が露見する可能性がなくなる。

 命懸けで役目を果たしている人のためにも頼むと言われて拒否できるわけもなく、再度出現させることとなってしまった。

 結果、消えたらそれで終わりだと思っていた『イメージ投影機』が、常時活用できるものとなってしまう。

 伴って、神世界への完全立ち入り禁止が言い渡されて、皆と肩を並べるという状況から、またも引き剥がされる結果となってしまった。

 この決定に、以前の私なら落ち込んでいたかも知れないが、今の私は違う。

 出来ることに全力を傾ければ良いのだ。

 そもそも、皆と肩を並べて命を張ることが正しいわけじゃない。

 私を含めて誰一人も犠牲になることなく『禍の種』を祓えば良いだけの話だ。

 どんな状況でも対応可能な能力を習得して、成長させて皆を護る。

 そん為には自分の能力をもっとしっかりと把握して、使いこなして、更に発展させなければと私は改めて誓った。


「リンちゃん、なんかスゴイ気合が入ってるね」

 朝顔を合わせたところで、志緒さんに驚いた顔と共にそう言われてしまった。

「そ、そうかな?」

 あまり自覚はなかったので、少し恥ずかしい。

 そんなことを思っていると、急に背後から舞花さんに飛びつかれた。

「リンちゃん! そんなに楽しみにしててくれたの!?」

 嬉しそうに尋ねられて、私はすぐに舞花さんの意図するものを思い出す。

「作品自体も気になっていますが、それよりも、皆で鑑賞するのはワクワクしますね」

「だよね、だよね!」

 前に回り込んできた舞花さんは私の手を取って飛び跳ねた。

 そう、今日は舞花さんと結花さん主催のアニメ鑑賞会である。

 私や志緒さん、東雲先輩は朝食を済ませたら、舞花さんの案内で会場に向かうことになっていた。

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