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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第漆章 天使降臨
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漆之参拾 結論

「も、もしかして、月子教授は、この緋馬織が()()()()()()だと思ってるんですか?」

 推論の先に月子教授が何を考えたのか、私なりの予測を元に問い掛けた。

 対して、月子教授は「どこまでが、意図されたものかはわからないが、間違いなく、人の手が加わっている節は感じるね」と頷く。

「まあ、わからない部分も多いし、古い記録は口伝なんてのもざらだからね、誤認しているかも知れないが、少なくとも、君たちに強いてしまっている『禍の種』の駆除は、物理的なお祓いだと、私は考えているよ」

「……物理的」

 私の呟きに、月子教授はポンと手を叩いて見せた。

「え?」

 意図がわからず驚きの声を上げると、月子教授は笑って「神世界での戦いだから、純粋な物理ではないね」と言う。

 あまりに真面目な顔で言うので、つい吹き出しそうになった私は「それ、重要ですか?」と切り返した。

「言ったろう? 些細なことでも、何か心に引っかかることがあると、気を取られてより悪い状況に繋がるかも知れない。だから、その場で即解決が最善手だ」

 平気な顔でそう断言する月子教授に、言葉を返すことが出来ず私は苦笑を浮かべる。

 そんな私の頭をわしゃわしゃと撫でながら、月子教授は「雪姉は大丈夫だ」と囁いた。

 思わず顔を上げようとする私の頭を押さえつけて、月子教授は「君は心配しすぎだ。優しすぎる」と続ける。

「雪姉の眠りは深いが、寝ているだけでしっかりと回復しているし、考えようによっては、起きて動き回ってる時より命の危険は少ないとも言える……心配するなとまでは言わないが、不在のここを護るためにも、落ち込んでいる暇も悩んでいる暇もないぞ」

 最後にポンポンと私の頭を叩いた月子教授は、さっさと教室に向かって歩き出してしまった。

 いろいろと知らなかったことを知った結果、私は結局、何もわかっていないことを深く認識する。

 けど、月子教授がやるべきことを示してくれたのもあって、私は迷わずに済みそうだ。

 悩んでも悔やんでも雪子学校長のように時間を巻き戻すことは出来ない。

 緋馬織の仕組みも大きする上に、謎も多すぎてぎて把握できそうもないのだ。

 ならば、私に出来ることは皆を護るために、自分の能力を把握して、修練を積むことだけである。

 要するに、私のするべきことは何一つ変わっていないのだ。

 完全に月子教授にコントロールされている気がしなくもないが、それでいいと思う。

 弟子は師匠に教えられて、学びを深めるのだと、最後に都合の良いことを考えながら雪子学校長の姿をした月子教授を追い掛けた。


「雪ちゃん、リンちゃん、遅いよ!」

 舞花さんが不満げな顔で教室に戻った私たちを出迎えてくれた。

 ぷくっと頬を膨らませた舞花さんの顔に、私は苦笑しつつ「ちょっと、雪子学校長に、気になることを説明して貰ったんだけど、思ったより時間が掛かっちゃって」と返す。

 私が返す間、那美さんから観察するような視線が飛んできていたが、多少情報の隠蔽はしていても、ウソは言っていないのでそれ以上の反応をされることはなかった。

 私が那美さんの反応に意識を取られている間に近づいてきた舞花さんが上目遣いで質問をしてくる。

「リンちゃん、気になることって?」

 舞花さんのその問い掛けに誰よりも早く反応したのは、結花さんだった。

「ちょっと、舞花、ぷらいばしー」

「あ、そうか」

 言い慣れてない感じで指摘した結花さんと舞花さんのやりとりが、あまりにも微笑しい。

 緩んだ顔を見せないように表情を引き締めながら「そんなに気にしなくても良いですよ」と告げた。

「リンちゃん、あんまり甘やかしちゃ駄目よ」

 即座に結花さんにツッコまれてしまったが、私は「能力に関わることだから」と問題ない理由を伝える。

「まあ、それなら」

 結花さんがそう言って頷いた次の瞬間には、舞花さんが「で、どんなお話ししたの?」と顔を近づけてきた。

 その満面の笑みを苦笑で受け止めつつ、私は会話の内容からウソにならないように、頭の中で編集する。

「簡単に言うと、どこまで飛んでも大丈夫か……についてかな……」

 敢えて『穢れ』の話はしなかった。

 皆が知っているかどうかわからないし、()()()()()()()()からである。

 私にさっき説明してくれたのも『穢れ』に接触してしまったのが原因だ。

 多分、雪子学校長は段階的に教える予定だったと思う。

 素考えると、皆にも同じように伝える段階を見極めているかも知れないので、伝えないことにした。

 まあ、説明してくれた以上、私の判断で伝えても良いと月子教授は考えているかもしれないけど、単純に不安を煽る内容なので、対処法を学ぶか、言わなければいけない状況になるまでは、私は言うつもりはない。

 そんなことを考えていると、教壇に立った雪子学校長に扮した月子教授が「さて、諸君」と皆に呼びかけた。

 月子教授の呼びかけに反応して、皆が自分の席について教壇に視線を向ける。

 それを頷きつつ確認した月子教授は「では、少し遅くなってしまったが、授業を始めるとしよう」と笑みを浮かべた。

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