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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第漆章 天使降臨
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漆之拾玖 天使モード

「ほら、やっぱり、舞花の言った通りだったでしょ!」

 鼻高々で胸を張る舞花さんに、私は返す言葉を見つけることが出来なかった。

 何しろ、見間違いか寝ぼけていたか夢だと思い込んでいた舞花さんの目撃したという主張が正しくて、違うと主張してきた私の方が間違っていたのである。

 私自身も今自分の目で目撃したワケで、ここで違うと言い張り続けられるわけもなかった。

 そんな私に林田先生の顔で、月子教授はサラリととんでもないことを言放つ。

「では、次は空を飛んでみて貰えますか?」

「へっ?」

 月子教授の一定売ることがわからなかったわけじゃ無く、何故このタイミングでという意味の声だったが、説明するまでも無く意図は完璧に理解されていた。

「その翼が空を飛ぶための機能を有しているか、それともペンギンやダチョウのように、そこまでの機能が無いのか、確かめておかないと危険です」

 真面目な月子教授の意見に、私は思わず「そ、そうでしょうか!?」と返してしまう。

 そんな私に対して、月子教授は落ち着いた口調で「そうですよ」と断言して間を開けた後で理由を口にした。

「便宜上、その翼の生えた状態を『天使モード』と呼称しますが、これまで観察させて貰った情報から推測するに、コントロールが出来ているとは言いがたい状態です」

「そ、それはまあ」

 月子教授の言葉に頷いた私としては、会話に参加していない皆が『天使モード』と口々に呟いてる方が気になるのだけど、説明の重要さがわかるだけに、話を聞かなければならないという葛藤でやきもきする。

「もし、凛花さんが意図せず屋外で『天使モード』を発動してしまった場合、どこまで飛んでしまえるのかは知っておかなければなりません。もちろん、高度の調整が自分で出来るかなどの検証も必要です。もし墜落してしまったら、命に関わりますからね」

 月子教授の目により強い光が籠もった。

 それだけで、心の底から心配してくれているのがわかる。

 応えなければいけないと判断した私は、解け異な事は考えずに「どうしたらいいですか?」と尋ねた。


「それでは、僕と東雲くんは、外で待機していますので、何かあったら呼んでください」

 にこやかにそう告げて月子教授は、東雲先輩と共に屋内へ消えていった。

 月子教授が実験場所として提案したのは、水泳の授業用のプールである。

 プールならば多少高さが出ても水の中に落下することで他の場所よりは安全という判断だ。

 この実験に使われることになったプールは、屋外にも拘わらず清掃が行き届いていて、綺麗な水で満たされている。

 授業は早くて6月なので、まだ5月にもなっていないこの時期としてはかなり異例な綺麗さだ。

 多分、私のように急遽能力が発現した場合の実験などに用いるためだと思う。

 そんなプールから月子教授と東雲先輩が離れたのは、単純に二人が遠慮したからだ。

 今の私は制服を着ているので、当然、下はスカートなわけで、そのまま翼で空を飛んだら中が見えてしまうと、月子教授に指摘されたのである。

 実質月子教授は今の見た目はともかく女性だし、東雲先輩も『神世界』では女性なワケだから、特に気にする必要は無いと思ったのだけど、意外にも花子さんが月子教授の配慮を褒めて、そのままの流れて二人がプールを離れることになった。

 ちなみに、制服から体育用の体操服に着替える案も出したのだけど、時間が空くと翼が消える可能性があるという月子教授の意見で、見送りになっている。

 というわけで、私は靴下と上履きを脱いで裸足になった。

 濡れても大丈夫なようにと思っての行動だが、この場ではこれ以上脱げそうなモノがないので、結局裸足になっただけ……それでもこれから実験に挑むという気分にはなる。

「凛花さん、裸足の感触を聞いてもいいですか?」

 タブレットを構えながら花子さんに聞かれて、私はこれまでの感触を伝えることにした。

「まず、ここまでの感触は大きくは変わらないです」

 翼が生えた状態で階段を上り下りするのはそれなりにシュールだったけど、プールの間には階段があるので仕方が無い。

 一応出来たかも知れないけど、飛んでいくことは禁止されたし、それに逆らうつもりも無かった。

 そんなわけで、ここまで歩いてきたけど、感触としては足の裏に堅いグミ状の何かがある状態が続いている。

 プールは屋外とはいえ、渡り廊下が続いているので靴の履き替えはしなかったので、靴を脱ぐのはここが初めてだ。

「靴下でも素足でも堅いグミの感触は変わらないですけど……より足に密着しているかなって感じがします」

 私の発言をメモしている花子さんの動きを見ながら更に感じたことを言葉にする。

「温度としては、裸足だからかも知れませんけど、少し冷たい気がします」

 花子さんは「なるほど」と頷きながら入力を終えると、顔を上げて私を見た。

「では、次の実験をしましょう」

「次の実験ですか?」

「お姉ちゃん」

 花子さんが雪子学校長を呼ぶと「準備は出来てるぞ」という声が後ろから飛んでくる。

 視線を向けると、結花さんと舞花さん、志緒さんと那美さんという組み合わせで、一つずつ水の入ったバケツを並べておく姿が目に入った。

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