表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第漆章 天使降臨
184/814

漆之拾肆 指摘

「夢じゃ無いよ! 舞花、ちゃんと見たもん!」

 私の判断に対して、舞花さんはすぐに抗議の声を上げた。

 舞花さんの発言をウソだと言っているみたいで、気が引けるとはいえ、正すべき所は正さないといけないので、私は間違いを指摘していくことにする。

「良いですか、舞花さん。私は昨日舞花さんの球魂とあった時、ワンピースでは無くて、白シャツに黒のスパッツでした!」

 私の言葉に、舞花さんは目を瞬かせた。

「足も素足では無く、ソックスもはいてましたし、何よりバレーシューズでした!」

 理路整然とした説明が功を奏したのか、皆が聞く体制を取ってくれているのか、誰からも疑問の声は上がってこない。

「そもそも、顔が私とは思えない程、美化されていますし、一番重要なところですが、私は翼をはやせません!!」

 締めの言葉を少し強めにしたことで、場を完全に黙らせてしまった。

 正論の強さに、加減をしっかり付けなければと反省に入りかけたところで、舞花さんが口を開く。

「服は勘違いかも知れないけど、翼は生えてたよ」

 パチパチと目を瞬かせる舞花さんに、私は「いいにくいですが、舞花さんの夢の中の出来事ですから……」と返した直後、今日ほとんど声を発していない月子教授扮する林田先生が口を開いた。

「凛花さんは、昨日、舞花さんの球魂と出会っているんですから、夢とは限りませんよね」

「え?」

「さっき自分で言ってましたよ。はっきりと『昨日舞花さんの球魂と会った時』と」

 月子教授の言葉に、志緒さんが「確かに、その時、着ていたのはワンピースじゃ無いと言って……た」と頷く。

 すると、頷きがその場にいる皆にどんどん伝播して広がっていった。

 そんな中で月子教授が真面目な顔で、話に流れを付けてしまう。

「となると、夢では無く、舞花さんは凛花さんに出会っていたのかも知れません。その時、背に生える翼が強く意識に残ったせいで衣服が現実と書き換えられて記憶された可能性があるのでは無いですか?」

 ゆっくりとして響きの良い月子教授の話し方に、その場の全員が飲まれた。

 月子教授も、いつものように悪戯を仕込んでいる表情では無く、自分の考えが的を射ていたら面白いと考えていそうな子供のような笑みを浮かべている。

 当然、月子教授の言葉にウソも悪意もないので、那美さんも反応しなかった。


「リンちゃん、羽根はやせるの?」

 もの凄くストレートな質問をぶつけてきたのは志緒さんだった。

 私はそれにチャイしてブンブンと左右に頭を振って「で、できないよ!」と否定する。

 対して、舞花さんが「でも、舞花見た!」と少し不機嫌そうに言い切った。

「どっちも、本心のようですけど……」

 顔に手を当てた困り顔の那美さんが、助けを求めたのて雪子学校長に視線を向ける。

 雪子学校長は、一度「ふむ」と言いつつ頷くと、私を見た。

「はっきり言うと、卯木くんがウソをついているとは思っていない……が、無意識に、そういう能力を発動させている可能性があると思っている」

 単純にやったか、やっていないかの話なら、やっていないで揺るがない。

 だけど、雪子学校長が口にしたように『無意識』だとしたらわからないとしか言えなかった。

「球魂が無意識に身体の外に出てしまうことはあるし、その時の記憶は曖昧なので、夢だと錯覚することは多い……が、遭遇相手である卯木くんに出会った認識があるのなら出会いは確実だ。であれば、舞花くんが目撃した天使の姿には、何かしらの元ネタがあると考えた方が良い。卯木くんはまだ『神格姿』を獲得したばかりで、能力が把握し切れていない。その未知の能力が形を取ったと考えた方が状況に即しているし、もし、未知の能力を発動しているのなら、把握をした方が良い……卯木君の安全のためにだ」

 真っ直ぐに私を見詰めたまま、雪子学校長は視線を外すこと無く言い切る。

 その迫力に飲まれて、言葉を発することが出来なくなってしまった私に代わって、結花さんが質問してくれた。

「雪ちゃん先生。リンちゃんの安全の為って、どういうこと?」

 雪子学校長は結花さんの質問に対して「簡単な話だ」と返した後で、詳細を語る。

「先ほど球魂が無意識に……という話をしたところだが、もしも卯木くんの翼が無意識に出現してしまうモノで、勝手に宙に体が浮いたとしよう。その時、急に能力が解除されたら?」

「け、怪我しちゃう……」

 震えながら呟いた舞花さんの言葉に、雪子学校長は「怪我なら良いが……高いところから落ちるというのはとても危険だ」と結末までは口にせず危険性を強調した。

 私としても、そんな目には遭いたくないので、どうしたモノかと思いながら雪子学校長に視線を向ける。

 すると雪子学校長は軽く頷いてから、方策を示してくれた。

「当面は誰かが卯木くんと行動を共にするようにするとして、だ。卯木くん視点で、昨日の出来事を確認してみるのが良いだろうね」

「な、なるほど」

 私は雪子学校長の考えに大きく頷く。

 別視点を加えることで、状況をより正確に掴むことは、現状では最適な行動だなと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ