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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第漆章 天使降臨
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漆之拾参 御姿

「あれが今回使う投影機です」

 教室に入ってすぐ、花子さんは教室の後方を向いて、そこに設置された机の上に置かれた箱を示した。

 教室前面のスクリーンに映像を投影するのに、邪魔にならないように教室中央に広めの通路を開けて弧を描く机がが設置されているので、よく見える。

 机に置かれた箱は白一色で、教室前方に向く部分に多く目の丸い穴が空いているので、そこからレンズが覗いていた。

 こういう場面では率先して行動を起こす舞花さんに変わって、結花さんが花子さんに質問をする。

「花ちゃん、近づいてもいい?」

「ええ、もちろん」

 花子さんの承諾を得た結花さんは、舞花さんの手を引いて、教室置くの箱へと駆け寄っていった。

 それに続くように、那美さん、志緒さんの順で箱へと向かっていく。

 東雲先輩は動きを合わせてくれるつもりらしく、教室前方から動かずに私を見ているので、気遣いに感謝して軽くお辞儀をしてから、移動する前に花子さんに質問をすることにした。

「ねぇ、花子さん。私、寝たけど……」

 そう切り出すと、花子さんは私の意を汲んで肩に手を置いて言葉を遮った上で「大丈夫ですよ」

と大きく頷いて、皆が集まっている箱に視線を向ける。

 花子さんの口にした『大丈夫』がプロジェクターが消えてないという意味で間違いなさそうだ。

 そうなると、私の意識が途切れても消えないモノを出現させられるようになったと言うことになる。

「えっと……」

 東雲先輩が近くにいるので、ストレートに質問を言葉にして良いのか、考えていると花子さんの方から説明をしてくれた。

「あの投影機は実験機なので、複数の人に触れて貰って、記録を取りたいと技術者が言っているんですよ」

 チラリと今は林田先生としてこの場にいる月子教授に花子さんは向ける。

 花子さんの言う『技術者』は月子教授と言うことで間違いなさそうだ。

「というわけで早速使って貰いましょう」

 花子さんはそう言うと教室後方へと歩き出す。

 その後に、私、東雲先輩、雪子学校長、林田先生の順で続いた。


 後方で多少余裕があるとはいっても、前方には通路の広さしかなく、後方からはただの箱でしか無い投影機の様子を見てみようとすると、密集が発生するのは当然だった。

 舞花さん、結花さん、那美さんの三人がピッタリと並んで、箱の丸い穴から中の様子を覗って、そのやや後ろから志緒さんがソワソワしながら様子を覗っている。

 私たち後発組は、そんな四人を迂回して投影機の後ろに陣取った。

「それじゃあ、最初は舞花さんからで良いですか?」

 花子さんの問い掛けに、投影機の観察に集中していた舞花さんはピッと背筋を伸ばしてから頷く。

「では、舞花さんここに来てください」

 手招きされた舞花さんは、素早く花子さんの横に立った。

「あ、凛花さんはアチラに」

 私を名指しした花子さんは、投影機の前方の椅子を示す。

 投影機を見ないようにということだと察した私は「わかりました」と返して、皆の横を抜けて教室前面に向かって通路右側の席に腰を下ろした。

 私が席に着くと、結花さんが通路を挟んだ反対側の席に、那美さんが私のすぐ右横の席に、志緒さんが私の一つ前の席に陣取る。

 更にそのの目先輩は、結花さんの前、通路を挟んだ志緒さんの横に座った。

 これで、舞花さんを除いた生徒側のメンバーは全員席に着いたことになる。

 その様子を確認した花子さんが「皆席に着いたみたいですし、始めましょう」と口にして舞花さんを伴って私たちから距離を取った。


 投影機操作のレクチャーが「それじゃあ、私たちが座ったら始めてくださいね」という花子さんの言葉で終わったことがわかった。

 次いで、花子さんが私の後ろ、雪子学校長は通路を挟んだ反対、結花さんの後ろ、林田先生は雪子学校長の隣という配置で席に着く。

 この場の仕切りは花子さんと決まっていたらしく、皆の着席を確認し、手にしたリモコンで証明を薄暗く焼成してから「舞花さん、いつでもどうぞ」と声を掛けた。

 それからややあって、教室前方のスクリーンに映像が映し出され始める。

 最初は白一色で、何が映っているのかわからない状態だったが、そこに薄らと人物らしきシルエットが浮かび始めた。

 と、同時に背景にも色や造形が入り始め、白い人影と教室らしき背景が映り始める。

 段々と人影も色が入り、陰影が強まり、段々とその姿が私に近づいてきた様な気がしていたのだけど、まったくもって気のせいだった。

 なぜなら画面中央部に映る人物は、髪の長さこそ私と同じだけど、服は白くて裾の大きく広がったワンピースだし、背中には文字通り白く大きな天使の翼が生えている。

 さらに、近世の宮廷画家が描いた貴族令嬢の肖像画のように顔立ちがとても整っていて、間違っても私に似ているとは言えない美麗な少女だ。

 実際の私は練習着のシャツとスパッツの組み合わせだったし、靴下もバレーシューズも履いていたので、間違ってもスクリーンに映し出された章j庫のように裸足では無い。

 何よりも翼も生やしていなければ、宙に浮いてもいないのだ。

 花子さんの実演からすると、舞花さんの記憶を元に映像は出力されている。

「舞花さんは、夢を見ていたみたいですね」

 私は映し出された天使の姿を見ながら、そう判断した。

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