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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第漆章 天使降臨
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漆之漆 発見までの経緯

 私の出現させたプロジェクターは、まったく画像や映像の受信方法を考慮していなかったせいで、通常の方法ではうんともすんともいわなかった。

 そこからは、花子さんがいろいろ吟味することになり、私は自分の出現させたプロジェクターから隔離されることとなる。

 理由としては、花子さんの確認作業で、私が仕組みや事実を理解してしまうと、付与されている特殊技能が消えてしまうかも知れないという月子教授の判断だ。

 流石に、そんな簡単に謎機能が付与されるとは思えないが、可能性がゼロでは無い以上、配慮すべきだといおう月子教授の言葉に反対する程でもないので、大人しく受け入れる。

 そんなわけで、別室に移動した私、月子教授、雪子学校長は新たな実験に挑むこととなった。


「次なる実験は、同一器具を用途に合わせて出現させられるかどうかの実験だ」

「……というと?」

 雪子学校長の意図するところがわからず首を傾げると、月子教授が「これだよ」といいながら私の前に四種類のはさみを並べた。

「これは一般的なはさみだね。この大きいはさみは布などを切るのに使う裁ち切りばさみ。この極小のモノは爪切り用のはさみ、そして、こちらのペンチに近い形状のモノは金属を切断出来るはさみだね」

 目の前に並べられた大小のはさみの用途を聞いてるうちに、同じ『はさみ』を用途に合わせて出現させられるのかを試そうとしているのだと理解する。

 同じ名称の道具でも、用途が違えば、大きさも形も違ってくるのは当然で、出現させる道具が用途に合わせられるのかという点は、私もとても気になるところだ。

 早速とばかりに、はさみを出現させようと、意識を集中させ始めたところで、花子さんが「大変ですっ!」と声を張り上げながら飛び込んでくる。

「は、花子さん!?」

「どうかしたのかね?」

 花子さんの慌てた様子に、私と雪子学校長はすぐに声を上げた。

 が、月子教授は「その様子だと、とんでもない機能が付いていたようだね」と確信があるような口ぶりで花子さんに声を掛ける。

 対して花子さんは「そうなんです! これは本当にスゴイ機能だと思います! お姉ちゃん達も、凛花さんも一度戻ってくれますか!?」と表情を輝かせた。


 花子さんに呼ばれて戻った特訓室には、先ほど、お掃除掃除機などの商品情報を映し出されたスクリーンの正面に、黒い暗幕を掛けられた机が設置されていた。

「あの、花子さん……それは……」

 私が暗幕に包まれた机を指さすと、花子さんは「ああ、コードなどの接続状況を凛花さんに見せないためです」と断言する。

「私に……」

 何故見せないかといえば、私が知識を得ないようにするためだろうと予測を立てたタイミングで、月子教授が口を開いた。

「君が真実を知ってしまうとね。面白い機能が損なわれる可能性があるだろう? 君は無知のままが一番価値があるということだよ、卯木凛花()()()

「それは、明確に挑発してますよね?」

 ちゃん付けから、完全に揶揄っていると判断した私は、月子教授を睨み付ける。

 すると、月子教授は「可愛い教え子と戯れたかっただけだよ」とわた……林田京一の顔で言い放ってきた。

 ゾクゾクと背筋がザワつく嫌悪感を覚えて、私はさっさと話題を変えることにする。

「花子さん!」

「は、はい!?」

「そのスゴイ機能というのについて説明をして貰っても良いですか?」

 強めのお願いに対して、花子さんは一瞬キョトンとした表情を浮かべてから、私の要望を理解したらしく目を輝かせた。

「そうですね、早速説明しますね、お姉ちゃん達も良いですか?」

 私に大きく頷いた後で、花子さんは雪子学校長、月子教授と順番に視線を巡らせる。

 二人が頷きで応えたのを確認した花子さんは「では、スクリーンとこのプロジェクターが視界に入るように移動してください」と説明を開始するに当たっての位置取りを示した。


「結論からいいますと、この子……このプロジェクターには、従来の方式での画像や映像を伝達は出来ませんでした」

 花子さんの断言で、自分がまたやらかしたという事実を私は衝撃と共に受け止めることになった。

「ちなみに、従来の方法は、説明してしまうと、折角のこの子……このプロジェクターのスペシャルな機能が損なわれてしまうかも知れないので、割愛しますね!」

 ウキウキと声を弾ませる花子さんに、月子教授は「賢明な判断だね」と大きく頷いて同意する。

 一方、雪子学校長は苦笑を浮かべて「もうこの子でいいんじゃ無いか、プロジェクターのことだとわかるから」と花子さんに伝えた。

「それじゃあ、これからこの子って呼んじゃいますね!」

 雪子学校長の言葉をすぐに受け入れた花子さんは、嬉しそうに暗幕越しに私の出現させたプロジェクターを撫でた。

「で、なんですが、画像や映像をこの子が投射出来ないかというと、そういうわけでは無いんですよ!」

 映像を映し出す機会なのだから、それを伝達する仕組みはあって当然なのに、考えもしなかった自分が恥ずかしい。

 結局花子さんに試行錯誤させることになってしまっているので、彼女の時間も奪ってしまったわけだ。

 それでも嬉しそうにしてくれているのがありがたくもあり心苦しくもある。

「これはスゴイ機能ですよ、凛花さん!」

 そう言った花子さんの言葉に私は苦笑するしか無かった。

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