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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第漆章 天使降臨
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漆之壱 自動化

 月子教授からある程度の状況を教わったことで、精神操作系能力についての特訓は一時取りやめとなった。

 まず懸念されていた私の『誘惑』が、雪子教授から受け取った火行の力が籠もった赤い数珠の効力で、十分押さえ込めると判断された事が大きい。

 加えて、私と月子教授の精神操作能力の違うという点も大きかった。

 月子教授は精神操作能力の第一人者であるので、私の能力開発に関しても指導することはできるが、能力の種類の違い故に効率が良いとは言えない。

 それよりも『神世界』でも、こちらでも発展の可能性が高い私の『分身』能力を高めた方がいいと、()の人たちが判断したそうだ。

 結果、私の能力開発のコーチ役は雪子学校長にもどり、月子教授は再びここを離れることとなっている。

 理由としては単純に精神操作系以外の能力開発は、この緋馬織の責任者であり、能力全般の知識が豊富な雪子学校長の方が得意という点が一つ、もう一つは対外活動が出来る月子教授は緋馬織の外に置いておきたいという上の人の判断が大きいようだ。

 ちなみに月子教授がここを離れると言うことは、自動的に林田京一もこの学校を離れることになる。

 カバーストーリーとしては、学校に戻れて浮かれた林田京一が、調子に乗った挙げ句骨折した足を庇って転倒し、反対の足も骨折、病院送りという話を月子教授は用意していた。

 学校から離れるためには仕方が無いとはいえ、あまりにも情けないストーリーなので、どうにかしたいのだけど、その為には分身か変化を今よりももっと強化しなければならない。

 というわけで、上の人たちの判断にも合致している『分身』の強化が直近の目標兼課題となった。


 分身を自在に出現させるのはある程度出来るようになっていた私に、出現させるように指示したのは『扇風機』だった。

 スマホを出現させるのに比べれば、仕組みが単純なだけに出現させるのはそんなに難しくは無い。

 床に接地する基部にダイヤルやらボタンを出現させ、細く長めの首のさきに円形で柵状の覆いと、その内側に三枚の羽の付いたプロペラが付いた扇風機を出現させることに成功した。

「どうですか、雪子学校長」

 出来栄えに少し自信のあった私は、少し得意げに雪子学校長に尋ねる。

 すると雪子学校長は「ふむ」と言いながら、基部に出現したボタンを押した。

 弱、中、強、切と、順番にボタンを押す度に、扇風機が送り出す風の勢いは変化して、最後に停止する。

 さらにボタンを数回、順番通りだけで無く、逆順やランダムに押した後で、雪子学校長は「なるほど」と大きく頷いた。

 それからわたしをみて「ところで、電源は?」と尋ねてくる。

 言われて私は、扇風機から伸びる黒い電源コードを視線で辿っていって、その作でプラグがコンセントに刺さるわけでも無く床に転がっていることに気が付いた。

「……繋がって、ません……ね」

 思わず出てしまった乾いた笑いに、雪子学校長はお手上げてばかりに溜め息を吐き出して首を左右に振る。

 充電式の扇風機みたいなモノが探せばあるのかも知れないが、私が出現させたのはそう言ったオプションの無い、実にシンプルな形状をしていた。

 そもそもイメージしたのが一般家庭用の電源プラグから電力を得るタイプの一般的な『扇風機』なのだから、充電ユニットのようなモノは最初から取り付けられていない。

 つまりはエネルギー源が無いのに、一般家庭用の扇風機と遜色の無い動きをしていた。

 全部、私の能力で出現させたモノなので、不思議な力で動いているというのが真実であり、結論なのだが、雪子学校長は「こういう常識の枠、現代の科学知識の枠を越えた行動をしないようにして欲しい」とこちらの目を真っ直ぐに見て言う。

 自信があったわけでは無いが、私も騒動を起こしたくないので、深く大きく頷いた。


「扇風機は花子に調べて貰うとして、卯木くんには次の課題に映って貰おうか」

 雪子学校長の言葉に、私は「わかりました」と同意を示した。

 そんな私に、頷いた雪子学校長は「次は機械式掃除機だ」と次を示す。

「機械式掃除機です……か?」

「そう、自動運転で障害物を避けながら、部屋中を掃除するアレだ」

 雪子学校長の指導なので、当然従うのが筋なのだが、私としては疑問を感じる部分だったので、思って尋ねることにした。

「えっと、なんで、そんなモノを出現させるんですか?」

「ん?」

「えっと、その掃除機……」

 私は雪子学校長の反応を探りながら、慎重に続く言葉を選ぶ。

 が、その答えは思いの外あっさりと示された。

「『自動化』を再現出来るかを確認したくてね」

「……自動化……ですか?」

 私の言葉に軽く頷いた雪子学校長は「君がいち早く林田京一のアレを出現させたいのはわかっているからな」と笑む。

「ある程度自動化され、自律している機械を出現させることが出来れば、君の分身体にも、その応用で君が操作しなくてもある程度の自律行動を撮らせられるのでは無いかと思ってね」

 私の要望を汲んだ雪子学校長の考えに、私は心の底から感動した。

 行動や態度でバレバレだったかも知れないけど、それでも、私の要望を汲んでくれて、指導に盛り込んでくれる雪子学校長に「ありがとうございます!」と感謝を伝えて、気合を入れ直す。

「自動化のための実験、いきまーす!」

 私はそう宣言して、円形のお掃除ロボットを出現させた。

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