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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第伍章 検証流転
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伍之拾玖 提案

「そんなに謝られたら、拗ねてる私が子供みたいだよ」

 はぁと溜め息を零す志緒さんに、私は「そんなこと無いよ」と首振って否定した。

「今のは私の考えが浅かった……志緒さんが一生懸命何度も何度も挑戦して話しかけてくれ……」

「ちょっと待って!!!」

「へ?」

 勢いよく止められて、思わず目が点になる。

「な、何度もって、気付いてたの!?」

 志緒さんにそう迫られて、私は自分のミスに気付き「あっ」と声を漏らしてしまった。

 そこから視線を逸らしても既に遅い。

「リンちゃん!」

「な、内容はわからないけど……何か私に言いたいのかな……程度で……ね?」

 探り探りのローペースな私の発言に対して、志緒さんが顔を真っ赤にするまでの時間は僅かだった。

 しかも、羞恥心が限界を超えてしまったのか、志緒さんはそのままプルプルと震えだしてしまう。

 流石にこれはマズイと思った私は、必死にフォローに入った。

「か、確証があったわけじゃないからね! 話しかけてくれたから、やっぱりアレはそういう事だったのかって、後追いでわかっただけだからね!」

 言葉を続けようとする私に、那美さんが「はい、そこまで!」とストップを掛ける。

「那美さん……」

 止めた理由を聞こうとする私に、那美さんは「これ以上は逆効果」と断言した。

 那美さんの言葉で、自分の気持ちを伝えたい一心で前のめりになっていたことに、今更ながらに気付く。

 相変わらず自分をコントロール出来ていないことに、私は大きく肩を落とした。


 三時間目を挟んだお陰で、多少落ち着けた私は、改めて志緒さんに謝罪することにした。

「なんか、いろいろとごめんなさい」

 私の謝罪に志緒さんは「リンちゃん、もう謝らなくて良いから、この話題を話すのはよそう?」と返される。

 申し訳ない気持ちが拭えず、もう一度謝罪の言葉を言いそうになったものの、どうにか踏み止まった。

 すると、東雲先輩が「志緒、オレも……」と口を開き掛けたところで、那美さんがそのお腹に拳をたたき込む。

「えっ!?」

 予想していなかった那美さんの強烈な行動に私は言葉を失った。

 そんな私の目の前で、拳をたたき込まれたお腹を抑える東雲先輩に、那美さんは「まーちゃん、混ぜ返さないんだよ?」と笑っているのに迫力を感じる声で囁きかける。

「す、すまない」

 一方的に攻撃を受けたのに、東雲先輩は那美さんに謝るとすごすごと席に戻っていった。

 そんな東雲先輩を見ていると、視界を遮るように那美さんがとっても怖い笑顔で割り入ってくる。

 思わず声が出そうになるのを口を押さえて堪えた私に、那美さんは「リンちゃんは未だ慣れてないし、女の子だから見逃してあげるね」と口にした那美さんは笑みを深くした。


 那美さんの介入で、改めて仕切り直しとなり、私は志緒さんの話を聞くことになった。

「志緒さんが、私にイージスの話を切り出してくれたのは、私が皆を護る盾になるって言ったからだよね?」

 私なりの予測に対して、志緒さんは「そう……かな」と頷く。

「あらゆる邪悪・災厄を払う魔除けの能力を持つ盾か……目指す形があると、すぐには無理でもいつか出せる気がするよ」

 イージスの盾は無理でも、それに近いモノを出現させられたら、私の宣言も形になるんじゃ無いかと思えて、俄然やる気が出てきた。

 どう習得しようかという所まで意識を向けていた私に、志緒さんが「あ、あの違うの!」と否定の言葉を放り込んでくる。

「え? 違う?」

 何が違うのかわからなくて聞き返した私に、志緒さんは大きく頷いた。

「イージスの盾を目標にしたらどうかって事じゃ無いの?」

「そうだけど、それだけじゃないの!」

 志緒さんの返しを聞いて、なるほどと納得がいく。

「なにか、アイデアがあるんだね?」

「……アイデアって程じゃ無いけどね、えっと、イージスの盾って、神話のお話によって、盾だけじゃ無くて、肩当てという防具だったり、胸当てだったり、マントみたいなモノだったりするのね」

 そこまで話した志緒さんは覗うような表情で、私に視線を向けてきたので、聞いているよという意味を込めて「うん」と頷いた。

 私の頷きに、表情を明るくした志緒さんは続きを口にする。

「元々、山羊の皮を使った防具を『アイギス』って言ってたから、それの混同とかもあるかも知れないの」

「うん」

「それでね!」

 志緒さんの声に力がこもり、目の輝きが増した。

 いよいよ本題だと察した私は「うん!」と強めの相槌を打つ。

「なっちゃんやマイちゃん、ユイちゃんも、私も……まーちゃんは、ちょっとわからないけど……」

 本題に入ると思っていたのに、皆の名前が並んで、しかも東雲先輩だけ疑問符付きだったことに、志緒さんの話が何所に向かっているかわからず、つい返事が「う、うん?」と歯切れの悪いものになった。

 けど、志緒さんにとってはおかしな部分は無い上に、勢いに乗っているのもあって、私の反応を気にすること無く、話は次の段落に進む。

「リンちゃんに出してもらうお洋服、イージスにならないかな?」

 キラキラに目を輝かせた志緒さんにそう尋ねられた私は、その言葉があまりにも不意打ち過ぎて目を何度も瞬かせることとなった。

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