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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第肆章 異界突入
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肆之弐拾玖 歓迎会で

「では、新たな仲間の加入に!」

 雪子学校長の音頭で、私の歓迎会が始まった。

 既に小学校への歓迎会はして貰っているので、今回のは『神世界を戦う仲間としての』歓迎会らしい。

 皆で祝って盛り上がるのは賛成だし積極的に協力したいところだが、主役が私で、しかも連日となると、少し気持ちの上で抵抗があった。

「リンちゃん、あっちでもよろしくね!」

「ちゃんと護ってあげるから、安心してていいわよ」

 乾杯に使ったジュース入りのカップを手に言葉を書けてくれた舞花さん、結花さんに、私は「ありがとう。よろしくお願いします」と返す。

 もちろん、私の方が守るつもりだけど、それを言って結花さんの気持ちに水を差す必要も無いので、そこは言葉にはしなかった。

「任せてよ、リンちゃん!」

「新人に優しくするのは先輩の勤めだものね」

 舞花さんと結花さんの言葉に、微笑ましさを感じて頷いていると、ふと那美さんと視線が重なる。

 直後、フッと笑った那美さんの反応に、私の考えを全て見透かされたような気がして、恥ずかしくなってしまった。

 そのタイミングで、舞花さんが「あ、リンちゃん顔が赤いよ」と指摘してくる。

「えっ!?」

 反射的に頬に手を当ててしまったせいか、それを見た結花さんにニヤニヤされてしまった。

「私たちも今までお姫様ポジションだったし、新人のリンちゃんの番になったってだけだからね。安心して護られて頂戴!」

 立場的に後輩が出来て嬉しいのもわかるし、私を安心させようとしてくれるのもわかるのだけど『お姫様』扱いは流石に耐えられない。

 私は羞恥心に呑まれた頭を無理矢理動かして「ど、ドレスの二人の方が、お姫様じゃ無いかと思うんです!」と切り返した。

「え、でも、リンちゃんのドレスに合ってたし、銀髪だし、どう考えてもリンちゃんの方が……」

 何を言ってるのと言わんばかりの真顔で、舞花さんに返されてしまったことで、私は更なる精神的ダメージを負う。

 それでも、抗いたくて私は「でも、私制服なので!」と訴えるが、結花さんに平然と「ドレス姿になれば良いじゃない」と返されてしまった。

 実際、実演してしまったばかりなので、出来ないとも言えず、返す言葉も思い付かない。

 そんな追い詰められた状況だというのに、この上那美さんまでもが小悪魔的な笑みを浮かべて表情で参戦してきた。

「マイちゃんとユイちゃんのドレスは、戦うことも意識してて簡略化されてるし、リンちゃん用にもっと姫っぽいデザインのドレスを考えてあげるわよ~」

「なっ那美さん!?」

 いつもの調子で放り込まれた爆弾発言は、瞬時に双子に影響を及ぼす。

「はい、なっちゃん! 舞花も考えたいです!」

「ユイも考えるわ」

 参加表明をする双子に、那美さんは「もちろん、大歓迎よ」と私を置き去りにして頷いてしまった。

「はいはーい。花ちゃんも参加したいです」

 ここでこれまで傍観態勢だった花子さんまでもが、聞き慣れない『花ちゃん』という一人称で参戦してくる。

 流石にこれを目の当たりにした私は、もう止められないと察した。

 それを示すように、こちらを覗うような様子で「あのぉ」と志緒さんが声を掛けてくる。

 辞めてと言えば、志緒さんは辞めてくれると思うけど、チラチラとうつむきと上目遣いを繰り返す志緒さんの気持ちが、どちらに向いているかなど一目瞭然だった。

 私の心の安寧のために辞めて貰っても、肩を落とす志緒さんの姿で結構罪悪感を味わうなと察した私は、笑顔の仮面を顔に貼り付ける。

「志緒さんも考えてくれますか?」

 もの凄い勢いで縦方向に頭を振る志緒さんに、私が書ける言葉は「お願いします」しか無かった。


「流石に人気者だね。卯木くん」

「ニヤニヤしながらそういうこと言わないで貰って良いですか?」

「どうにもできなかったからといって、私に当たらないように」

 雪子学校長の返しに、私はそれ以上言葉を返すことが出来なかった。

 何しろ流れを止められなかったのも、雪子学校長に八つ当たりしたのもその通りである。

 悔しいが黙るしか無かった。

 そんな私を変わらずニヤニヤとしながら見ていた雪子学校長が、急に表情を引き締める。

 何か重要なことを言うのだと察した私は、雪子学校長に体の正面を向けた。

「今後、君はこちらに待機し、アチラには分身を送る形で『種』に対処して欲しい」

「な、何でですか!? 皆が命懸けで頑張ってるのに、私だって!」

 思わず頭に血が上ってしまった私は、気付けばそう言いながら、雪子学校長に迫る。

 そんなつかみかかってしまいそうな勢いの私を止めたのは東雲先輩だった。

「待て、凛花」

 かたん感じる力強くて大きな東雲先輩の手に、私の勢いは止まる。

 が、私を止めた時点で、東雲先輩も雪子学校長と同じ意見なのでは無いかという気持ちが心をよぎり、ツンと鼻の奥が痛くなった。

 東雲先輩が私を見ながら「冷静に聞いて欲しい」と口にしたが、私の心はざわざわとざわめき、素直に聞く体勢はとれない。

 そんな私に東雲先輩は、落ち着いた口調で「同じ事を俺が言われたら、何で自分だけと思うだろうから、凛花の気持ちはそれなりにわかると思う」と言ってくれた。

「東雲先輩」

 名前を呼んだ時、自分でも自分の気持ちがどうなっているかわからないくらい頭は混乱していたが、不思議と気持ちの方は落ち着いているのを感じる。

 そのお陰か、先ほどよりも聞く態勢が整った気がした。

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