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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第肆章 異界突入
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肆之弐拾 変化

「東雲先輩、花子さん、聞いてください!」

 話したいと思ったからか、私の言葉は鳴き声に変わること無く、ちゃんと言葉として発声することが出来た。

 が、私の喜びの感情は、より険しくなった花子さんの言葉に遮られてしまう。

「凛花さん!」

「は、はいっ!?」

 もの凄い剣幕で花子さんに名前を呼ばれた私は、正直、説明しようという意識を大きく削がれてしまった。

 この体は分身で、未だ本体はこの世界に入ってないから大丈夫で、心配をしてくれて嬉しい。

 伝えたい言葉は頭の中に出そろっているのに、折角人型になれたというのに、言葉をまるで出せなくなっていた。

 そんな私の耳に、花子さんの次なる言葉が届く。

「服! 服を着てませんっ!」

 花子さんにそう言われて、地に足が着いた感覚で人型になれたと理解していたけど、実際に目にしては居なかったなと視線を落とせば、確かに裸だった。

 気圧される程の花子さんの剣幕が、服を着ていないことが原因だとわかって、私は安堵してしまう。

 正直、この場に着たことを起こっているのかと思っていたので、違うと言うだけで気持ちが軽くなった。

「凛花さん、少しは慌ててください!」

 花子さんの言葉に、確かに人型なら服を着た方が良いなと、ようやく思考が回り始める。

 とはいえ、ここに居るメンバーは既にお風呂を一緒にした面々なので、今更という気持ちで顔を上げると、東雲先輩とバッチリ目が合ってしまった。

 それだけなら特に何にも感じなかったかも知れないのに、東雲先輩は私と目が合うなり、体ごとこちらに背を向けたのである。

 直後、全身から強烈な熱が発した。

 思考が混乱に陥り、分身の体でも発熱するんだなぁなんて、余計な思考が頭を支配する。

 次の行動を組み立てられず呆然とする私の体が揺すられた。

「リン、服を出せないの?」

 かなり深刻な表情で結花さんにそう尋ねられて、私は言葉のままに服を出すことにする。

 体の一部が解けて、形を変え、再び体の表面に張り付く感覚が全身の大部分で発した。

 恐らく私のイメージに合わせて、分身の体を構成するエネルギーのようなモノが服に変化して再び体に張り付いているんだろうと感じ、それを確かめるために視線を向けると想像通りの変化が起こっている。

 腕が光り、紐状の帯と化した光が、再び腕に巻き付いて真っ白いブラウスへと姿を変えた。

 それで変化が終わりというわけでは無く、別の光の帯がその上から巻き付いて紺色のブレザーへと変化していく。

 視線を落とせば、脚には変化は無く、代わりに足首付近、それから腰からお尻に掛けては光に包まれていた。

 光は靴下に、革靴、吊りスカートへと形を変えると、光は霧散し、全身を包む制服が残る。

 視線を向けるのが遅かったので、目では確認出来なかったが、肌から感じる感覚からして、下着やスパッツも再現されているようだ。

 ただ、何か違和感がある。

 その正体を掴むために背中に手を回すと、もふもふとした存在に手が触れた。

「あっ」

 手に触れたそれが尻尾だと考えた私は慌てて頭に手を当てる。

 当然のようにそこには狐耳の感触があって、目で確認しようと手に取った髪は銀色に光っていた。


「リンちゃん! 仲間にゃっ!!」

 声と供に何かが上から私の方へ落ちてきた。

 反応する間もなく、背後から細長いモノが首の左右から前に飛び出してきくる。

 それがどうやら人の腕らしいと認識した時には、私の首に巻き付く形となり、更に回転し始めた。

 驚くどころか、反応することすら出来ずに固まっていると、私の視界に顔らしきモノが入り込んでくる。

 キラキラと輝く緑色の瞳には、人とは明らかに違う縦長の瞳孔が見えた。

 更に耳の位置も人の顔の横では無く、私と同じく頭の上にあり、白い毛皮に覆われ三角形をしている。

 ただ、他の顔のパーツは人間と変わらないので、仮装という印象が強く感じられた。

 当然ながら、元の人物との変化はそれほど大きくないので、それが誰かはすぐに想像がつく。

「志緒さんです……よね?」

「そうにゃ~~」

 嬉しそうに笑みを浮かべた志緒さんは、普段の堅い印象とは違う砕けた感じがして、妙に可愛らしかった。

 特に視界の端に見える細い二本の白い尻尾が揺れる姿は、感情をそのまま反映しているのか、どこか楽しげに揺れて見える。

「……って、二本?」

 私は二本の尻尾に驚いて声を上げると、志緒さんは「尻尾のことかニャ?」と首を傾げた。

「そ、そうです」

 志緒さんのと意に頷くと、志緒さんは「ふっふっふ」と笑いだす。

 普段の雰囲気からは想像出来ないノリの良さで、私から腕を放しくるりと一回転した志緒さんは、腰に手を当てて胸を張った。

「なぜなら、私が猫又だからにゃ! 猫又だから尻尾が二本あるにゃ!!」

 とてもとても誇らしげな姿に、私は「なるほど」と頷く。

 むしろそれしか出来なかったのだが、志緒さんが嬉しそうなので、敢えてそれ以上は触れないことにした。

 直後、後ろから「リンちゃん!」という声と供に衝撃が腰に走る。

 視線を向ければ舞花さんが抱き付いていてこちらに視線を向けていた。

「えーと……」

 どう対処したら良いのかと思考を巡らせるより早く舞花さんは「リンちゃん」と真剣な顔で私の名前を呼ぶ。

「は、はい」

 思わず緊張ののった声で返事をしてしまった私に対して、舞花さんは想定外の言葉を口にした。

「尻尾触って良い?」

「へ?」


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