表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/37

5.緑埜航平「僕には場違いなお店」

「えぇ!? 飲みって、こういう店なんですか!」


 青砥さんが、こんなたぐいの店に行くイメージはなかった。

 入口はそんなに派手な感じでもなかったけど、店内は僕には場違いな雰囲気や。


「キャバクラは初めてか?」

「失敬な! 要はメイドカフェ的なことでしょ!」

「いや、俺、そっちは知らないから」


「いらっしゃいませ。青砥さん、ご無沙汰じゃないですか」


 中に入ったらすぐ、黒服のボーイさんが話しかけて来た。

 どうやら青砥さんの行きつけの店らしい。


「ええ、なかなか暇がなくてね。桃花ももかいる?」

「いますよ。少々お待ちくださいね」


 黒服さんは奥へ行った。


「桃花さんって、誰っすか。青砥さんの推しメンですか?」

「ま、まあな」


「青砥さーん! 久々じゃーん!」


 声のする方を見て、びっくりした。

 ピンクのヒラヒラの衣装で、手を振りながらこっちへ来る女が、知ってる顔やったからや。


「く、胡桃沢!」


 胡桃沢はいつもの着ぐるみとは違う、ザ・キャバ嬢っていう格好や。


「おお! ミドくんも来てくれたんだ!」

「お、お前……何してんねん!!」

「何って、バイトだけど? そして、アタシは桃花だけど?」


 胡桃沢はそう言いながら胸を寄せて、僕の方に胸の谷間を強調してきたけど、胡桃沢ごときに興奮するわけがない。


「緑埜、鼻血拭けよ」


 出てたらしい。


 僕と青砥さんは、黒服さんと胡桃沢、ちゃう、桃花に連れられて席に着いた。

 桃花は、僕と青砥さんの間に座った。


 テレビドラマで観るようなほどのキラキラした雰囲気はないけど、店の華やかな装いに気おくれしてしまう。


「なんか、緊張して……あんまり、居心地のええもんやないですね」


 たぶん、また目と鼻の孔が膨らんでやろうなぁと思いながら、僕は、桃花に注がれたビールを喉に通した。


「なになに? アタシに緊張してんの? 美し過ぎ??」

「んなわけあるか!」

「まあ、すぐに慣れるさ」


 青砥さんはそない言うけど、キャバクラに慣れるのも、あんまり褒められた話やない。

 ハマってもたら、金がいくらあっても足りへんからな。


「ところでお前、公務員やのにバイトしてええんかい」


 僕は勝ち誇った顔で訊いた。


 確か、国家公務員法かなんかで、副業はしたらあかんって決まってるはずや。知らんけど。


「お前、会社に黙っといてほしかったら、僕に生意気な口は利くな!」

 そない言うたら胡桃沢は

「ええっ! お願い! 黙ってて! なんでも言うこと聞くから!」


 って言うはずや!


「缶コーヒー買うてこい。かねはお前持ちや!」

 で、胡桃沢は僕に敬礼して、

「はい! かしこまりました!」


 天国や!


 そう思たのに、胡桃沢からは予想とはちゃう答えが返ってきた。


「いやいや、国公法に副業はダメなんて書いてないし」

「えっ!? そうなん?」


 胡桃沢は、なんか難しい言葉で喋るから、ようわからんかったけど、要は、「信用を損なわない、守秘義務を守る」これを守っといたら、公務員の副業に問題はないらしい。


 せっかく、こいつの弱みを握れたと思ったのに、即、打ち砕かれた。


 けど、そこで、すぐに「弱みにぎにぎ大作戦2」を思いついた。


「けど、赤羽さんが知ったら、どない思うやろなー」


 再び、勝ち誇った顔で言うた。


 法令は遵守じゅんしゅしてても、さすがに、自分の恋人にバレたくはないやろ。

 完全に僕の勝ちや!


「赤羽さんに黙っといてほしかったら、僕にも膝枕しろ!」

「膝枕以外にも、もっと楽しいことしてあげるから、お願い! 黙ってて!」

「わかった。ほな、とりあえず服脱げ!」

 で、胡桃沢は僕に敬礼して、

「はい! かしこまりました!」


 こうなるはずや!

 が、また胡桃沢からは、不思議な返答が来た。


「颯さん知ってるのかな? で、知ってたらまずいの?」

「え?? じ、自分の彼女がこんな店で働いてること知ったら、赤羽さん、ブチ切れるやろなー」


 その言葉を聞いて、胡桃沢はのどちんこが見えるくらいに口を開いて笑い出した。

 青砥さんまで、なんか、気まずそうに苦笑いしてる。


「な、なにが可笑おかしいねん!」

「赤羽さんと結華は、別に付き合ってるわけじゃないぞ」


 笑って喋られへん胡桃沢の代わりに、青砥さんが答えた。

 つ、付き合ってもないのに、膝枕なんかするんか……世間のヤツらはどんだけリア充くるってるんや。


「あーぁ、ミドくんウケるー」


 やっと笑いが収まってきた胡桃沢は、涙を拭きながら立ち上がった。


「今日からアタシの友達が店に入ってるから、ちょっと連れてくるよ」


 まだ、涙流してる。

 胡桃沢は奥に行こうとしたのに、僕の心を読んだんか? わざわざ振り返って、


「そんなに膝枕してほしいんだったら、きのこさんに頼んでおいてあげるよ」


 そう言うたあと、店の奥に行った。


「あんなに太い腿で膝枕されたら、首折れるわ!」

「緑埜、結華に彼氏はいないらしいから、お前にもチャンスがないわけじゃないぞ」


 青砥さんが耳打ちをするように言うた。


「なに言うてんすか……、あんなヤツに付き合ってもらうようになったら終わりでしょ」


 正直、胡桃沢にええとこがあるとしたら、顔だけや。

 それ以外、どこもええトコあらへん。

 まあ、いて言うなら、スタイルがええトコと、肌がキレイなトコと、実家が金持ちなトコと……

 要は、胡桃沢の悪いトコは性格だけや。


「まあ、今日は奢るから、機嫌なおせよ」

「ありがたいけど、他の店が良かったっすわ……」


 そんな話をしてたら、胡桃沢が戻ってきた。


「連れて来たよー」


 胡桃沢の少し後ろにいる女の子を見て、僕は口に含んだビールを噴き出した。

 その女の子が、あまりにも不細工やったから、って言うわけやない。

 その逆や。


 美しい……


 噴き出したビールが霧になって、店内の照明が乱反射するから、キラキラ輝いて、彼女の美しさを更に引き立ててる。


 天使や……


「緑埜っ! 今までに見たことがないくらい、目と鼻の孔が膨らんでるぞ!」

やっとヒロインを登場させることができました!

もっと早く出すつもりだったのに……遅くなってすみません。


これからも、頑張って書いていくのでヨロシクです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ