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月の声が聴きたくて ~恋心下暗し~  作者: 沢鴨弓摩
第三章

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第十七話 心を温める新手が迫る

「こんなやり方も考えてみたんだけど」


「いや、そもそもこの作業場に問題が有り過ぎる!」


「ええ!? それを言うの?」


 多駆郎宅。

 この日も相変わらずミーティングが行われていた。

 多駆郎が根本的な問題点を言い出したところだ。


「試作品しか作らないからドラフトで十分だと思ってやってきたけども」


 浜砂の帰宅時間は過ぎていた。

 最近は連日である。

 遅いパターンでも午後七時に終了のはず。

 それを超えるようになってからは夕飯も二人で食べている。


「局排が吸引すれば部屋の埃を吸ってしまうんだよ」


 食べ終わった後の一息。

 浜砂自慢のお茶を飲みながら話していた。

 すると突然思い出したように多駆郎が立ち上がる。

 そして力説し出したのだ。


「それ、今更よ」


「う……」


「初めて来た時、これでやっているのねって驚いたもの」


「単純な模型を作るのが主な作業だったんだよ」


 多駆郎は椅子に座り直した。


「その事、今となっては私も知っているじゃない」


 両肘をついて両手でカップを持つスタイル。

 浜砂は終始落ち着きを維持している。

 一方の多駆郎は初めの頃からすると感情を表に出すようになった。

 その様子を見ながら浜砂は楽しそうにしている。


「落ち着かないと、いいアイデアが浮かばないよ?」


「ふむ。ちょっとイライラしているな」


「とりあえずお茶飲んで」


 言われるままに、多駆郎はお茶を飲む。

 まだ一口も飲んでいなかった。


「ふう」


「どう? 落ち着くでしょ」


「うん。これじゃあ学業にも……そもそも学生になあ」


「はいはい。学生さんにやらせる仕事じゃないわよね。もう耳にタコよ」


「あ……ごめん。またイライラした」


「少しさ、仕事の方はお休みしてみたら? たぶん、沼に入り込んだのよ」


 対面している二人。

 浜砂はその位置を崩して一つ隣に座った。

 そして、多駆郎のこめかみから後ろへ向かって軽く撫でる。


「落ち着いて。毎日お邪魔して仕事ぶりを見ていたら、随分無理していたから」


 そのまま撫で続ける。

 多駆郎はこれまでにそんなことをされたことが無い。

 その所為なのか、ただじっとしている。


「休んで調子を取り戻すのも仕事の内よ。所の方には私からお願いしておくから」


 撫でられたまま、ちらりと浜砂の方を見る多駆郎。

 普段の彼なら止めさせそうなことをされている。

 しかし、止めようとはしない。


「……そうしようかな」


「よし、決まりね! 二~三日休みにしましょう」


 そのまま撫では続く。


「それじゃ、今日はこれで帰るわね。すっかり遅くなっちゃった」


「ごめん。最近遅くなってばかりだったね」


「構わないわよ。帰っても何するわけでもないし」


「一人暮らし?」


「そうだけど。何か都合が悪い?」


「家族と住んでいたりしたら申し訳ないと思ってさ」


 立ち上がって鞄を持ち、帰り支度を始めながら会話をする。


「優しいね。一人だから大丈夫よ。もし何かあればいつでも連絡ちょうだい」


「そんな風にはしないけど」


「ほら、優しい。そんな人が困っていたらいつでも駆けつけるわよってこと」


「はあ……」


 靴を履き、ドアを開ける。


「それじゃ、また明日」


「お疲れさまでした」


「お疲れ様。でもそれは九割瀬田君に向けてだけどね」


「道まで送るよ」


「いいから。休みを提案した私が送らせたら罰が当たっちゃう」


「分かったよ。お休み」


「はい。お休み」


 浜砂は手を振り暗い道へと歩いてゆく。

 二人の間はさらに新しい空気へと変わっていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 送らせたらが遅らせたらになってますよー [一言] うーん...このふたりの話は急接近しすぎな気がする...本当はゆっくり何だろうけど話が出るのは飛ばし飛ばしだから...
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