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月の声が聴きたくて ~恋心下暗し~  作者: 沢鴨弓摩
第三章

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第三話 入り込む影と忍び寄る影

「着地点を教えて貰えないと私、フォローしようが無いのだけど」


 二杯目の紅茶を飲みながらまだくつろいでいる。


「着地点……それって何を作るのかってことでしょ?」


 二口程すました顔で飲んでから浜砂は答える。


「分かっていて黙っているんでしょ? 私、なんで来ているのかしら」


 両肘をついてカップを持ったまま、多駆郎から目線をそらす。


「そう言われても……その辺の文句は所の方にお願いします」


「だって、所の人に聞いても何にも教えてくれないし」


「参ったな。禁則事項は教えられないから」


「はいはい。私は信用ありませんよ。それでどう手伝えと言うの?」


「オレはそんなこと無いですから。ただ約束は守らないと」


 目線を多駆郎に戻す浜砂。

 少し明るい表情に変わる。


「あら、信用してくれているの? そういうことは早く言ってください」


「わざわざ言う事でもないでしょ。こういう話になったから……ですよ」


「可愛いね」


「なんで!?」


 クスクスと笑いながら残りの一口を飲み干した。

 何故だか満足気な顔をしている。


「いいの。私が楽しければ」


「それ一番困るやつですよ」


「はい、それで何をやるの?」


「ああ、スルーですか……えっと、じゃあ」


 お互い噛み合わない雰囲気だったのが嘘のよう。

 今ではすっかり砕けた調子で話すようになった。

 早貴以外の女性相手に軽いノリで話すのは初めてではないだろうか。

 もしかすると、早貴よりも軽い瞬間があるかもしれない。

 多駆郎はそんな新鮮な感覚を知らないうちに楽しんでいるようで。

 なかなか外れなかったロックが外れて仕事を進めるようになっていることで伺える。

 そのままうっすらと考えていたアイデアを話し始めていた。


 ◇


 日向町駅の西側。

 線路と並行して流れている一級河川、宮乃川。

 踏切を渡ると日向橋。

 その橋の横から河原に降りられる。

 河原は遊歩道が敷かれており、所々にベンチが設置されている。

 夕日になりつつあるこの場所に、幼馴染女子が二人。


「なんかさ、あの時を思い出すね」


「わあああああっ! 言わないで」


「何で? アタシ、時々思い出しているよ」


「そうなの? もお、恥ずかしいんだけど」


「ふ~ん、恥ずかしいことなんだ。そうなんだ」


 手を繋いで水際を歩く二人。

 千代が早貴に告白した時と同じような状況になっている。


「意地悪しないで。早貴さあ、最近安心してマウント取るよね」


「マウント……そういうつもりは無いよ。アタシを好きだって事は安心している」


「それは安心して。早貴はどうなのよ?」


「それは安心して」


「真似しないの。」


「可愛いから真似したくなるの」


「もお」


「ほら可愛い」


 久しぶりに二人の時間を取ろうという流れになった。

 そして二人が好きなこの場所で話をしている。

 しっかり二時間程はまったりとしていた。


「そうだ。早貴、あの人とは……」


「もう、まだ気にしていたの? 何もないよ」


「ならいいんだけど。ほんとに気を付けてよ」


「はいはい。心配してくれるのは嬉しいけど、し過ぎちゃだめだよ?」


「……うん」


 そんなやりとりを日向橋の上から眺めている人影がある。


「やっぱりそういう関係なんだろうねえ。見たこと無かったが、あるんだな」


 手すりにもたれながら呟いている。

 最近、ここまで二人をチェックするのは生徒の中でもこの男子だけだろう。

 メモ帳を手にしている貝塚だ。

 二人の話ははっきりと聞こえている。

 そういう位置取りが上手いからマークを任されているのだが。


「五代は佐戸倉から何か聞いているのは確かだな。要チェックレベルを上げるか」


 メモ帳が修正される。


「仕事を増やすなよな。一人ひとりバラバラなんだからよう」


 いよいよ貝塚もスイッチを入れ始める。

 いつもお読みいただきありがとうございます!

 楽しんでもらえていますか?

 ブクマと評価をよろしくお願いします。

 燃料にさせていただき、完結へ走ります!

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