第二十四話 私情入力による協力要請
「浜砂さんに教えていなかったんすか?」
貝塚が本部との連絡中。
木ノ崎の付き人でありつつも……。
『情報は最小限でいい。私情を挟み難い環境が重要だ』
「……確かにそうっすね。与えられた事のみ考えてりゃ問題は無い」
携帯を持ちながら数回頷いている。
「こっちは相手の動きがのんびり過ぎるんで、情報入手も遅くなりそうっす」
時々携帯の画面を横腹で拭きながら続ける。
「同じ学校ってことで二人のマークはし易いっすから。本部のフォローさえあればマークするのは問題無いっす」
双方の報告が終わる。
携帯の画面を拭きながらポケットへと入れた。
「暑いな。連絡が面倒だけど、探るのは面白いんよね」
貝塚は不敵な笑みを浮かべながら日向町から離れていった。
◇
エアコンが快適な温度に調節した部屋。
浜砂はシャワー後の身体を冷ましていた。
バスローブ姿でソファーに横たわる。
頭に巻いたバスタオルを枕代わりにしながら。
目は閉じずに壁を見つめている。
考え事に合わせて動くのか、時折テーブル、家具、照明と目線を変える。
そしておもむろに身体を起こして携帯を掴んだ。
「こんばんは。今大丈夫?」
『珍しいな、久しぶりっすね』
「合ったり話したりする立場では無いですからね」
電話の相手は木ノ崎のようだ。
木ノ崎はトップの子息で浜砂は諜報員。
勿論二人共良く知ってはいる。
しかし、木ノ崎から浜砂に連絡をすることはまず無い。
ましてや浜砂から木ノ崎に連絡を取るなど、有り得ない立場。
浜砂が連絡を取るのはほぼ本部のみだ。
『電話をよこしたってことは余程の事があるんだよな』
「それほどでも無いんですけど、亮太君も本部から依頼されているらしいと聞いてね」
『ああ、まあ、一つあるな』
「その件と私の案件が繋がっているようなの」
『そうなのか?』
「ええ。早貴という子がターゲットなんでしょ?」
『……そうだ』
「その子と瀬田の息子が幼馴染でね。私は息子がターゲットだから早貴という子の情報が入るのよ」
『そうだったのか。幼馴染の話は聞いていなかったな。今回の件をあの子は知っているのか?』
「それが、何も知らないらしいの。普通の女子高生が知るような話でもないし、息子が話すことでも無いわ」
『確かに。知ったところで何かできるわけでもないからな。……そいつと、その、息子と付き合っているのか?』
その言葉を聞いて、浜砂は少し口角を上げた。
「気になるの?」
『いや~、実は気に入っちまってさ。普通に付き合いたいと思ってよ』
「ふふふ、そういうことね。亮太君がその気になるなんて珍しいわね」
『自分でも驚いている。その気になれる子もいるもんだと』
「息子は付き合っていないって言っていたわ。だけど、家の中にはその子のと思われる物が当たり前のようにあったわ」
『ふ~ん。よくわかんねえけど、こっちを向けさせればいいだけだ』
「あなたらしいわね。私もね、息子の方が気になり始めていて」
『そっちの方が珍しいじゃねえか。』
「そうね。それで提案なんだけど、お互いの案件成立と私的目標の達成に向けて、協力するっていうのはどうかしら」
『協力ねえ。俺は事が思う通りに運べば問題は無いから、なんでもいい』
「本部は早貴って子が私たちの案件で被っていることは内緒だったらしいのよ。でも結果的に目的が同じだと思うのよね。なら本部には内緒の形になるけど、お互いに引き離せば良くない?」
『本部の言う通りばかりってのは好きじゃねえから、そういうのは好きだな。……よし、ノったよその話』
多駆郎と早貴の引き離し。
木ノ崎と浜砂の私情が挟まれた事で結ばれた協力関係。
これが上手く行けば本部の要望も叶う。
浜砂は多駆郎本人と彼の持っている情報を得る。
木ノ崎は早貴を振り向かせ、彼女にする。
見た目は変わらないが、案件達成に向けた気の持ちようが変わった。
言葉にすることで暗示にかかる。
「こんな気持ちで案件に臨むことになるなんてね」
浜砂は多駆郎に対する淡い想いをはっきりさせた。
スイッチの入った木ノ崎と浜砂。
二人の本気が発動する時が来たようだ。
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