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月の声が聴きたくて ~恋心下暗し~  作者: 沢鴨弓摩
第二章

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第十七話 心の熱を感じる仲

 綾から早貴にまつわる話を聞いた千代。

 登校から昼休みまでいつも通りを装っていた。

 顔を見る度に一瞬ビクっと動く。

 どうやら話しかけそうになってしまうようだ。

 それを我慢してなんとか昼休み。

 この日は綾も気になるのか、四人一緒に休みを過ごす。

 久しぶりに四人揃っているために、他生徒からの目線が集まる。


「やっぱり苦手だなあ」


「なら隠れていればいいのに」


 綾の呟きに奏が突っ込んだ。


「ふ~ん。奏は嬉しくないんだ。そうなんだ」


「なんです? 綾らしくないモードですね」


「だってさ、奏が私の事を要らない子みたいに言うんだもん」


「そんなこと言っていません! 綾がいないと……いやです」


 他の二人は黙って眺めている。

 もちろん他の生徒も。

 綾はそれでも不貞腐れたまま。


「ほんとかなあ。部活があると一緒に帰れないから忘れかけているとかさ」


 奏の左腕が綾の右腕に振り降ろされた。


「いったぁい! 何!?」


「綾を忘れるとか、ありえない……。ありえないから!」


 ガクっと首をうな垂れ、降り降ろした腕をゆっくりと膝上に戻す。


「奏?」


 名前を呼ばれてゆっくりと顔を見せる。

 目を潤ませていた。


「やだ、泣いているの!? ごめん、ああどうしよ」


 慌てる綾は立ち上がり、奏の頭を抱えた。


「ごめん、ほんとごめん。泣くなんて思わなかった」


 とにかく精一杯奏の頭を撫で、謝りたおす綾。

 この二人に口出しは無用と分かっている早貴と千代。

 あえて黙って見ていた。

 この先は元に戻るだろうと思ったのか、早貴が席を立つ。

 千代は過剰に反応してしまう。


「どこ行くの?」


「え? あん、お花摘みだよ」


「あたしも行く!」


「そう? それじゃ行こっか」


 これは綾から聞いた話が起因しているのが容易にわかる行動だ。

 奏を撫でながら千代に目で問う。

 千代は片手を低く上げて答えた。

 綾は心配そうに見送っていた。



 ◇



 程なくして、早貴と千代は教室へ戻った。

 奏を心配する話をしながら。

 その奏は元の状態に戻っており、綾も普通に座っていた。

 それを見てホッとする二人。


「奏、元気は戻った?」


 早貴が尋ねる。

 コクリと頷いて笑顔を返してきた。


「久しぶりに一緒のお昼だから喜び過ぎていたのかもしれません」


 涙を拭いたと思われるハンカチをポケットに仕舞う。


「私もちょっと奏に甘えたくなったからさ。やり過ぎたかも」


 舌をちらっと出して見せた。


「仲いいもんね。できるだけ一緒にいたいよね。わかる~」


 早貴の腕に肩を付けてそんなことを言う千代。

 その様子を見て、綾は見送った時の心配を払拭できたようだ。


「そちらも仲がいいよね。見ているとこっちが嬉しくなるんだよなあ」


 ちらっと千代を見ながら早貴が答える。


「そうなの? 千代とは長いからね。特に壁は無いし、気楽なのが伝わるのかな」


 千代と綾は目が合った。

 早貴の言葉を聞いて互いに通じるものがあったのだろう。



 ◇



 下校の時間。

 同じような授業に部活も無い毎日。

 登校から下校までがあっという間。

 早く卒業したいと思う者もいる。

 しかし大半がこのままの毎日が続けばと思っているのではないか。

 まったりと過ぎて行く時間。

 仰向けで力を抜き、水面に浮かんでいるように。

 そんな中でどうしてもはっきりとさせたい気持ちを持っている女子が一人。

 スクールバスの中で千代はとうとう自ら切り出した。


「早貴……」


「どうしたの? 今日はなんだかいつもと違うよね」


「違った?」


「うん、違う。近寄り方に違和感があったんだよ。悪いわけじゃないけど」


 シートの背もたれに頭をトンと当てる。


「あのね、ちょっと確認したいことがある」


「何よ」


「ほんとは早貴から話してもらいたかったんだけどさ、我慢できなくて」


 人差し指を顎に当て、何のことなのかを探っているような仕草をする。


「もしかしてだけど、喧嘩の原因絡み?」


「そう」


「はあ。どこから伝わっているのやら」


 呆れ顔の早貴。

 しかし、相手は千代。

 どうやら千代の期待に応えるようだ。


「木ノ崎君のこと、かな?」


「うん」


「千代が気にすることと言ったら、それだよね」


 早貴も背もたれに頭を当てる。


「学校で会っていたこと?」


「それ」


「一緒に映画を観に行ってきたからね、その辺のことと、足の事を心配してくれていたからもう大丈夫ってことを話していました」


 背もたれに頭を付けたまま千代を見る。


「こういうのも言った方がいいの?」


「できたら、なんでも聞きたい」


「さては、アタシのファンだな」


「ファンどころじゃないこと知っているでしょ」


「照れますね。アタシも千代は特別だから一緒だね」


 照れ隠しをするように千代は話を本線に戻した。


「それでさ、付き合うとかあるの?」


 そう言いながら頭を横に向け、目を合わせた千代。

 おでこを付けて早貴が答えた。


「まだ大して会ってもいないから話しもしていないし」


 ひたいがくっついたまま話は続く。


「電話は? 会わなくても話せるよ」


 鼻の頭を付けて早貴は返す。


「怪我した時に様子を聞かれたのと、映画へ行く時の連絡ぐらいだよ」


「――教えてくれてありがと」


 と言いつつも肩を軽く掴んで何か言いたそうだ。

 それを早貴は感じ取ったのか、自ら聞いてみる。


「まだ何か聞きたい?」


「あの人にはね、気を付けて欲しいの」


 心配そうに早貴を見つめる千代。


「不安にさせてごめんね。アタシはそんな顔させたくないんだ」


 肩を掴んでいる千代の手に自分の手を重ねる。


「まだあの人が良い悪いなんてわからないけど気を付けるから、安心して」


 その言葉を聞いた千代は、軽く唇を重ねてそのまま顔を離脱させる。


「わかった。早貴が嫌な思いをするのは許せないから。あたしの勘は当たるし」


「そうだった。千代の言うことって当たるもんね」


 千代の頬を頭を撫でる代わりに人差し指でなぞる。


「木ノ崎君と何かあったときは、教えるようにするからさ。それならアタシも間違える前に止まれるもんね」


 早貴は千代の気持ちをしっかりと受け取った。

 以前喧嘩をした時の感覚を思い出したのかもしれない。

 千代との間に溝は作りたくないはずだ。

 それは千代にも言えるのだが。

 今回はお互いに納得のいく形で話が出来たようで、普段通りにバスを降りていった。


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