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月の声が聴きたくて ~恋心下暗し~  作者: 沢鴨弓摩
第二章

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第十五話 広がる影

 今回も早めに助手の仕事が終わってしまった浜砂。

 帰宅途中でスーパーに寄り、簡単な夕食分を買って自宅へ帰る。

 市街地にあるマンションの一室。

 買ったものを食卓に置き、鍵や時計、バッグなどを所定の場所に戻す。

 携帯電話はバッグから取り出し、リビングのソファーに座る。

 一息つく間もなく携帯電話を操作し耳にあてた。

 この一連の流れが帰宅後の動き。


「そろそろ何か言われそうだけど、終了報告はしないとね」


 外出先では緊急でないかぎり連絡はしない。

 どこで誰に聞かれるかわからないからだ。


「もしもし、今日も自炊です」


 終了報告。

 毎回課されたミッションが終了する度にすべきこと。


「はい。アンテナについて情報があります」


 今日は多駆郎が屋上を案内してくれた。

 その際に例のアンテナ群を紹介されたのだ。

 また、屋上に上がったことで敷地内を見渡すこともできた。


「離れの屋上にあるアンテナは、空からの電波を受信するだけとのことです」


 多駆郎は趣味の話になったことで、早貴の時と同じように詳しく教えた。

 浜砂はある程度分かりはするが、深く話されれば分かりかねる。

 しかし、彼女自身が分からなくても関係ない

 伝える相手、すなわち彼女に指示を出している者に伝われば良い。


「中央付近にある大きなアンテナも同じく電波受信用とのこと」


 説明を続ける。


「何の電波かですか? 星からの電波、という話でしたが」


 話していた時の多駆郎を思い出したようで、軽い笑みを浮かべる。


「私が分かる内容では無くて。その電波を受信することが趣味ということで……」


 余程詳しく話をされたのだろう。

 笑みのまま続ける。


「妨害されていることに相当な不満を漏らしていました。趣味を邪魔されていると」


 彼の話に熱が入っていたことがわかる。

 幼少の頃から始めている趣味だ。

 一番邪魔されたくないことである。


「研究には関係ないようですので、妨害が続くと警戒が強化されるだけかと」


 浜砂の見解を伝える。

 笑みを浮かべてしまうような話だったのだ。

 妨害する必要が無いという考えに至るのは自然なことであろう。


「はい。では解除ということで。また続けて調査します」



 ◇



 早貴は自室にて多駆郎に連絡をするところ。

 携帯電話からはコールが聞こえている。


『はい、瀬田です』


「アタシだよぉ、こんばんは。早貴を忘れた?」


 携帯電話の画面に名前が出ていたはずだが、どうやら確認せずに出たようだ。


『ああ、こんばんは』


「もう何よ! 他人行儀になるほど久しぶりじゃないでしょ?」


 携帯を持っていない手を腰にやり、胸を張って話している。

 顔は笑みを浮かべているが。

 全て多駆郎に見えているわけでもないが、誰しもがやってしまうこと。


『そうだね、ごめん。でも、久しぶりなのは確かだよ』


「寂しかった?」


『最近は――――』


 多駆郎は浜砂が助手として毎日訪ねて来ていることについて話した。


「へぇ。そ、そうなんだ。じゃあアタシが行かなくても困っていないんだね」


『いや、そういうことじゃないよ。それに早貴ちゃんはお手伝いではないんだし』


 早貴は、腰に当てた手を口に持って行き、笑い出した。


「ははは。タクが慌てていると面白い。冗談よ。でもさ、質問に答えていないよ?」


『寂しくは、少しあるかも』


 その言葉を聞いた早貴の表情が変わる。

 面白さにより作られる笑みから、やんわりとした笑みへと。


「そっか。アタシもだよ。いつまでも続けていたいことが続かないのって、寂しいね」


 話に少しの間が空く。

 その間を消すように早貴が続けた。


「いつもね、タクの所へ行きたいなって思うんだ。でも我慢しなきゃって」


『うん』


「タクが一人きりじゃないのは安心したよ。アタシもね、味方が増えたんだよ」


『そうなの?』


 早貴はこれまでの木ノ崎との事を伝えた。


「だからね、アタシはもっと心強くなっているよ」


 多駆郎からの反応が鈍くなる。


「タク、寝てないよね? アタシ話し過ぎた?」


『いや、ちゃんと聞いているよ。味方が増えたのは良かったね』


「でしょ? あ、そうそう。お母さんからも聞かれたんだけど、今はどんな感じなの?」


 早貴の質問によって多駆郎は伝えなければならないことを思い出した。


『そういえば近況報告していなかったね』


「もう、しっかりしてよ。こっちはずっと心配しているし、落ち着かないんだから」


 携帯を持ったまま二度ほど頷く多駆郎。

 ごもっとも、とでも言う様に。


『ついさっき機材の確認をしてみたら、どうも妨害電波が解除されたみたいなんだ』


「ほんと!? 良かったじゃない! それじゃあ解決したってことなの?」


『いやいや、全然原因が分かっていないから解決とは言えないな』


「残念。どうして解除されたんだろうね」


『解除されたのが分かっただけだからまだなんとも。またされる可能性もある』


「そうだね。ああもう、なかなかすっきりさせてもらえないね」


『ごめんよ。オレも何一つ解決できていないから悔しくて』


 多駆郎の気持ちを感じたのだろうか。

 早貴は天井を見上げてから床へと目線を下ろす。


「タクは何も悪くないよ。アタシもごめん。タクが一番大変なのに」


『ありがとう。また研究所の人とも話をして調査を急ぐから』


「無理はしないでね。アタシからも連絡するようにするから。これからはもっと連絡し合おうね」


『了解』


 幼馴染の二人。

 毎日のように二人だけの時間、二人だけの空間を共有していた。

 それが途切れているのだから、寂しさを感じないわけがない。

 だが、二人共その寂しさを的確な言葉に表すことができずにいる。

 お互いがそれぞれの不透明感を拭えない気持ちを通話に感じながら会話が終わった。


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