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不純性交遊したい親友ポジの話

「きょっす!懐!元気してたか?」


「おい恭弥。昨日のあのメールは何だよ一体、嫌味か?」


朝一番に俺に声掛けたのは真田サナダ 恭弥キョウヤ

ラブコメ主人公の親友ポジを自称する若干野性味が強い男だった。

第一ボタンはデフォルトで外しており、目は猛禽類を思わせる黄色味を帯びた黒目、耳にはお洒落にイヤホンを突っ込み首にはチョーカーを付けている。

染髪、ワックスの使用、パーマ等でなければ基本的に校則上セーフだがやはり都会的な雰囲気が突出していて場違いな感じが否めない。


夏風が恭弥に向かって吹けば男子にしては長めの黒髪がフワリと揺れてさぞかし様になるのだろう。


「いや、お前、おにゃのこの心を抉った訳じゃん?罪悪感感じるだろ?で、泣くと予想した。どうだ?当たりか!」


大当たりだよ馬鹿。


そうそう、この真田恭弥という人間は主人公の親友ポジを自称しているがこの主人公ポジが何故か俺なのだ。

その上、出会いも最悪だった。


…あれは高一の冬だった。

俺は新しく捕まえた女の子に無理難題を吹っかけられていた。

時を同じくして捕まえた女の子に無理難題を吹っかけられていた男ーそう。

真田某だ。

新しく捕まえた女の子は顔の良い男を侍らせて自分が価値がある人間だと盲信したい勘違い女子だった。

で、そんな女の子に二人も魚が釣れたのだ。

罪を償った気になりたい狂人と。

取り敢えず性行為がしたい下衆だった。

名前を伏せないなら、俺と真田だ。

最初は女の子の二股とは気付かなかったが分かった瞬間真田とは殴り合いの喧嘩になった。


その時の女の子が『私のために争わないで〜』と素で言ったのが原因で互いに冷静になり、何回か境遇を語ったり度々会うようになり今に至る。

真田曰く。


『知ってるか?ハーレムが出来たらその内の一人以外全員空くんだぜ?だったら傷心に漬け込んで不純性交遊出来るじゃん!』

と、クソ良い笑顔で語ってたから一発ぶん殴った。


この性犯罪者め!!


がー、俺は真田の下衆さを何よりも信頼しているし真田は俺の自己中っぷりを何よりも信頼している。

故にうまれたよく分からないラブコメ同盟。

俺に平穏や安穏は来ないと知った。


「で、新しい彼女は霧島さん?」


「霧島?誰だそれ?」


真田は露骨に顔を顰めた。


「文芸部のメガネちゃんだよ、ホラ、胸にサラシ巻いて胸囲詐称してそうなあの子」


「お前本当に下衆いな」


「お褒めに預かり至極恐悦」


文芸部の鬼畜女か。

霧島某。…マイクテストしそうなイメージがあるのは俺だけではないはず。


「いや、アレは絶壁だ。無乳でもない。マイナスの気を発する虚乳だ」


「マイナスイオン発生器だなんて嬉しいじゃない」


…。

聞いてはいけない類の声がした。


「おはよう御崎君。良い朝ね?」


「お、おはよう霧島さん…」


真田…驚いてるからって首から上をカタカタと言わせないでくれ。何となく不愉快だ。


「き、霧島さん。怖いから怖いから。具体的にはスタ⚫︎ド発現するレベルで気が高まっちゃってるから。素人目にみても分かる気の高まりは流石に止そう…」


「あら、戦犯が何か言ってるけど。先ずは謝罪が先じゃない?焼き土下座を所望するわ」


焼き土下座!

まさか日常生活で聞く事になるとは!


「で、でも流石にアツアツの鉄板とか流石にないっしょ?」


真田が弱気にも言う。

俺にはその意図が明確に分かる。


「そんなものーあるわよ」


フラグ立てだ。

コイツ楽しんでやがる。

が、怒りの矛先がそちらに向かないと思ったら大間違いだ!!


「うっ、立ちくらみが…」


ラブコメ主人公の所業を教え込んでやるよ、ばーか。


俺は大袈裟に体をよろけさせ半ばタックルの姿勢で真田に倒れこむ。

当然位置的にドミノ倒しの要領でー。


「あ、本当に虚乳やんけ」


真田の手が霧島さんの胸に触れた。

その上で、言ってしまった。


「あら、死に急ぎたいのならそうと言えば良いじゃない。恥ずかしがり屋なのね」


「え、ちょ、おま…懐?テメ、ゆるさな…」


「先ずは私に許しを乞いなさいな。下衆」


おお、実にスカッとする光景だ。

真田の頬に教室用のシューズがグリグリと押し当てられている。

精神に余程刺さるのだろう。南無三。


そうしていると、霧島さんはクルリとこちらを向き耳元で言った。


『楽しめてるの?』と。


冷や水を頭からぶち撒けられた気分になった。

…その返答は決まってる。

楽しめてない。

俺は多分楽しんでる。けど、俺を遠くで俯瞰してる俺もきっといる。

きっとこういう奴は酔えないんだろうな。

異常なハイテンションを俯瞰した俺は許さない。

感情を必要以上に押し出す行為を許容しないのだろう。


真田がハッとした表情になりながら俺の顔を覗き見る。

真田には真田の事情があり、俺には俺の事情がある。

俺はそれを知っている。

だから互いに一線を超えない。


「ん?どうした?もしかして俺も巻き込まれる流れなのか?」


「ええ。あなたも戦犯だもの」


この後滅茶苦茶グリグリされた。


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