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彼が嘘を愛する話

あの後意外にも七峰…sevenはあっさりと引き下がり俺は帰宅路についていた。


帰りに買い食いするとかは青春っぽいと思うが残念、金が無い。

コンビニで買うのはスナック菓子では無くサラダミックス一択だ。


コンビニの袋を片手に今夜の献立を考える。取り敢えず米は欲しい。あと味噌汁も、サラダミックスは買ったからサラダは確定としてメインは何があったっけ。

魚は捌くまで時間がかかるし、やっぱり肉か。…最近魚を食べてないな。


偶に死んだ魚みたいな目になると真田は言ってたが、DHAはないようだ。


「取り敢えずはメシ、で風呂掃除と」


家の鍵は空いていた。帰ってきているようだ。


「酒臭い…」


玄関から漂う酒の匂い。


「また飲んだんだね」


リビングのソファーに倒れ込むように泥酔しているのが俺の母親。


「ぷはは…今からご飯作るから待ってて」


返ってきたのは呻き声。

エプロンに着替えて、俺は嘘と誇張した真実を吐き出す。


「今日は先輩と会ったんだ。変わり者だけど面白い先輩なんだ」


「……」


「真田が先輩に会った時なんて顔真っ赤にしててね。あれは傑作だったよ」


「……」


「部活も楽しいし、僕は元気にやってるよ」


「……」


「……。父さんもだから、多分元気だよ」


「……そう」


会話が途切れる。

トントントンと包丁がまな板を叩く音がする。


俺は…僕は嘘なんて嫌いだ。

けど、嘘が無ければ生きられない。


だから嘘を愛するフリをした。

色々な人を傷付けた。色々な人に傷付けられた。


それが堪らなく嫌だった。


「はい、出来たよ。しっかり食べて栄養つけないと」


母さんは料理に手を付けない。

今夜は酢豚にした。ほら、酢はバテを予防したりする効果があるとか無いとか。


「頂きます」


まるで人形と生活してるみたいだ。

無心でメシをかっこむと手を合わせ流し台に戻し、洗い物をする。


母さんは最近夜は何も食べない。

廃棄するのも勿体無いし朝食や弁当にしている。

今日はバイトが無かったから母さんの深酒は回避出来たがバイトしないと生活が厳しい。


家は一軒家ではあるが父が死んだ際に保険で全額返済にはなっているがそれにしろ金は幾らあっても足りない。

だから僕は守銭奴。卑しい奴だ。


そのまま眠ってしまった母にタオルケットをかけて自室に籠る。


「サイコチック…か」


そうなるのも当然だ。

だって僕は…俺は破綻してるのだから。

嘘を愛して母さんに尽くす『僕』が居て、学校で普通に生活する『俺』が居る。


僕と俺が乖離する度に支離滅裂な思考が生まれる。

だからサイコチックになるのも頷ける。


「『鏡面感染性Alice』…どうにかモノにしなくちゃ…」


こうして今日も夜が明ける。

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