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終わりが見えません。
ここはノエルの家。ミラに訳もわからず子爵家の馬車に乗せられ気付いたら公爵家に着き、客間に通され、今現在ふっかふっかなソファーに座っていた。
(さすが公爵家ね。どこもかしこも立派。このシャンデリアどんだけ豪華なのよ。うちにはない隅々まで手入れされた広い庭。さっきからメイドが入れ替わり立ち代わり。これは、あるわね。)
「ねぇ、ミラ。きっとあるわよ!」
「えっ?何?」
「何って禁断のこ「マリアちょっと黙って!」」
「ミラ?あなた最近変よ?なんか怒りっぽくなったし。全然連絡くれないと思ったら急に出掛けましょうなんて。今日は新刊が発行される日なのよ。本当なら今頃二人で読みふけってるじゃないのよ。どうしちゃったの?しかもここってボーデン公爵家よね。いつ知り合いになったの?ねぇ?こないだのお茶会?ここのノエル様っておいくつだったかしら?もしかして?ねぇ?そうなの?やっぱり。」
「何?」ミラは黙らせるのを諦めて答えた。
「まさかあなたが禁断の恋に目覚めるなんてね。ふふっ。大丈夫よ。私に任せて。」
「何言ってるのよ。」
「大丈夫。任せなさいって。沢山読んだ成果が今になって発揮されるのね。ミラの気持ちは分かってるから。」
「マリア、余計な」
その時扉が開かれ、ノエルが入ってきた。
「お待たせしたかな。」
「いいえ。本日はお招きありがとうございます。お言葉に甘え友人を連れて参りました。」ミラはマリアに余計な事するな、言うな、考えるなと言わなかった事を後悔するのはもう少しあと。
「いいんだよ。初めまして。私はボーデン公爵家ノエルです。」爽やかスマイルの裏で(これがカイルの・・だめ、今思い出したら笑えるから、にやけるなっオレ!)頑張っていた。
「ローリエ男爵家長女マリアと申します。お初にお目にかかります。本日はお招きありがとうございます。」一方マリアは(これがねぇ、、ジェーソンよりも爵位も顔も上かぁ、これじゃ勝ち目ないわね。ミラはきっと二股ってやつをしているのね)などと失礼極まりない事を思っていた。
「私の事はノエルと呼んでくれていいから。お茶のお代わりはいかがかな?」(マリアねぇ。一応挨拶くらいは出来るか。見た目も悪くない。でもあのマリアと名前は同じでも中身はとんでもないみたいだけど)
和やかに過ぎていったノエルのお宅訪問も終わりに近づいてくるとマリアの悪い癖が出る。
「あの、ノエル様。一つお聞きしてよろしいでしょうか。」
「ええ。どうぞ。」
「本日招いて頂いてとても楽しかったのですが、なぜ私まで呼んで頂けたのでしょうか。」
「この間のお茶の席でミラ嬢と親しくさせていただきまして、そこで互いの友人の話になったんですよ。その時にマリア嬢の名前が出ましてね。とても興味深い話を聞いて一度会ってみたいと無理にお願いしてしまったんです。急なお誘いですみませんでした。」
「そうだったんですね。」(興味深い話って何?誘われたって?私、ミラに連れてこられただけなんですけど。でもあれね、二人きりで会うのはミラに変に意識させるからってオマケとして連れてこられたのね。)ここから妄想が暴走する。
「私全然気にしませんわ。でもノエル様の興味深い話とはあれですものね。(ミラの事よね)何もおっしゃらなくても分かっておりますわ。(二人きりにしろって事ね。でも大丈夫かしら)さて私お庭でも見させて頂いてよろしいでしょうか?先ほどから気になっていたんですわ。(おもに逢い引き中のカップルがいないか)」
「では案内しよう。」
「いえ、結構ですわ。(貴方が付いてきたら見れるもんも見れないでしょうが、しかもミラと二人になれないのよ。)私、花が大好きですの。(見るのは花じゃないけど)見ていると時間を忘れてしまうくらいに。(カモン、禁断の恋)ですから私のことは構わず、ノエル様はミラと積もる話(告白とかしちゃうの???)もあるでしょうからこちらにいらしてくださいな。私はいつでもミラと会えますから。(後で何があったか聞かなくちゃ!部屋の前で聞き耳たてるのはマズイかしら)」
「マリア、折角ノエル様が案内してくださるのだから」
「ミラ、いいのよ。本当に私の事は気にしないで。分かってる、ジェーソンには言わないわ。私って口硬いんだから。でも何かされそうになったら大声出すのよ。じゃぁ頑張って。」小声でささやくそして極めつけのウインク。
完全に誤解している。いや、妄想が突き抜けたところまでいってしまった。マリアはもう戻ってこない。
ノエルはマリアに圧倒されたのか、メイドの一人にマリアを庭へ案内するよう告げた。収穫があったのだろう。軽く二時間は戻ってこなかった。その間ミラは拷問の様な時間を過ごすことになる。
「・・・本当に変わってるね・・プッ」
「・・・すみません」