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マリアさんは一体いつになったら出てくるのでしょうか

     ~王宮 翡翠の庭の隅~


 「本当に見つかるんだろうな。ここまでやって見つからないってことないだろうな。」カイルが言う。

 「大丈夫だって。招待状出した所は全員出席だろ?ドレスも一緒だし、絶対みつかるって。」ノエルはにやけた顔を隠しもせず言う。

 (カイルの探してる例の彼女ってどんな娘なんだろう。やべっ面白すぎる。子爵以上の令嬢だからちゃんとした教育は受けてると思うんだけど、、、ぷっ、やばっ、思い出したら笑いが、、。)


 「そろそろ集まる時間か?初めからいる必要はないだろ。とりあえずここから様子みようぜ」二人は翡翠の庭近くの医務室から様子を見ることにした。トーラスには医務室の一部を借りる事を事前に承諾してもらっていた。まさか女を探すためとは言っていないが。


 庭には結構な人が集まり出した。(オレンジオレンジオレンジオレンジのドレスの女は、、、いた!って五人もいるじゃないか!)

 「おい、ノエル、五人もいるんだが。」

 「うーん。まぁ仕方ないだろ。予想の範囲内。後は近くで髪色の確認だな。おっ、王妃様が来たからそろそろ始まるな。」

 「五人のうちの誰かがあの女かよ。絶対に突き止めるからな。」とカイルが気合いをいれたところでお茶会が始まった。



 お茶会が始まって30分が過ぎた頃、巨大な猫を被り、誰もが惚れるであろう王子スマイルを顔面に貼り付けてブロンドの髪をふんわり揺らしながらカイルがノエルとローレンを連れ現れた。

 「皆様楽しんでいらっしゃいますか。第一王子のカイルです。先日は執務が忙しく、折角集まって頂いた美しいご令嬢の皆様と過ごす事が出来ずとても残念でした。ですが今日は一人一人と話し、楽しい時間を過ごせたらと思っております。今日は宜しくお願いしますね。」最後にやわらかな眼差しを令嬢達に向け微笑む。これで落ちない令嬢はいない。いないのだが、あの女ならどうだろうか?落ちない女を探したほうがいいのだろうか?とりあえずオレンジの女だ。


 オレンジの女ばかり気にしていては王妃に気付かれてしまう。よし、とりあえずノエルだな。

 「ノエル、次はどうする?」

 「特定の令嬢ばかり話せないからな。こちらから行こう。」


 カイルが庭に現れてから一時間経っただろう頃、オレンジのドレスの女五人とは直接話したのだがいまいちピンとこなかった。五人とも令嬢らしくきちんと教育されているようで、カイルを罵った女がこの中にいるとは思えなかった。五人の中でダークブロンドの髪色を持つ女は二人。一人は侯爵令嬢のルーチェ、もう一人は子爵令嬢のミラだったが、やはり決め手にかけた。カイルは捨て身の作戦に出た。二人の前でこう言った。


 「先日の事なのですが、面白い話があるのですよ。聞いていただけますか?」

 「「ええ!もちろんですわ!」」

 別にミラは聞きたくもなかったが心証は大事だ。

 (ここには両親も来ているのだから王子に睨まれて子爵家とりつぶしなんて事になったら大変だわ、王子には全然興味ないけれど)そんな気持ちでいた。


 「先日庭園内で具合の悪そうな令嬢がいたのですが、声を掛けても答えてはくれないのです。心配になって再度声を掛けてみたのですがやはり答えてはくれませんでした。」

 「まぁ、カイル様が声を掛けられてのに何も答えないなんて!」とルーチェはぶりっこしながらプンプンと怒り出した。

 一方ミラはどこかで聞いた話だなぁと首をひねっていた。

 「ルーチェ嬢そんなに怒らないでください。貴方には可愛い笑顔が良く似合うから。」とカイルが王子スマイルを出すと、ルーチェはカイルに近付き頬を染め目を潤ませあざとい笑顔を見せる。

 ミラの気持ちは(二人で勝手にやってくれ。)である。しかし、さっきのカイルの話が気になるので聞いてみた。

 「カイル様、具合の悪そうな令嬢はその後どうされたのですか?」二人の世界に入って来るなと言わんばかりに、ミラはルーチェに睨まれた。

 「はい。その後そんなに具合が悪いのならば医務室へとお連れしようと肩に触れたところで、急に何か話出し、立ち上がりそして私に向き合い大きく足を」

 のところでミラはやってしまった。

 「あぁ!」と大きな声が出た。

 ニヤリとするカイルと目が合う。これはまずいかもしれない。とぼけるのはもう無理だ。とりあえず逃げなくては。

 「お話中申し訳ありません。気分が悪くなってしまいましたの。席を外させて頂いても宜しいでしょうか。どうぞカイル様はルーチェ様とお話をお続けくださいませ。」

 「それは大変だ。ミラ嬢医務室へ」

 「それには及びません。両親の元へまいりますのでご心配なく」

 「では子爵殿のいる場所までお送りしよう。」

 「えっ?いや、あの、それはどうでしょうか、ルーチェ様もいらっしゃいますし、カイル様はルーチェ様と」

 「ルーチェ嬢、すまないがミラ嬢を子爵殿の元へ連れて行ってもいいだろうか。具合の悪い女性をほっておくことは私にはできないよ。もちろんすぐにルーチェ嬢の元へ帰ってくるよ。」

 「ええ、殿下。いつまでもお待ちしておりますわ。」

使えないルーチェ様、そこは、殿下行かないでとすがるとこでしょうが!


 (これは一体何の罰でしょうか。前に殿下、後ろにノエル様って逃げられないじゃないの。神様助けて。)

 「あの、両親の元へ連れて行って頂けるはずでは、、」

 「ごめんね。少し君に聞きたい事があってさ。大丈夫何も怖い事はないから。」

 「ここはどこでしょうか。」

 「ここは王宮の医務室だよ。ケガをしたり、病気になった人がここに来るんだ。そういえば、最近私もここのお世話になったんだよね。」

 「ヒッ!」顔が怖い!王子スマイルはどこいった!?

 「君も具合が悪いんだったね。しばらくここで休むといいよ。あ、そうだ!良くなるまで帰さないからね。」と言ったカイルの目が完全に捕食者のそれだった。

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