17
「あら?どこへ行くの?」
四人の動きが一斉にとまる。
「、、、母上」
カイルの呟きでハッとし
カイルを除く三人は王妃に対して臣下の礼をとる。
「まぁまぁそんなことしないでちょうだい。私達いずれ家族になるんですもの。それに私は家族の友人も大切にするわ。それよりお待たせしてごめんなさいね。」
と言ってミラとマリアの手をとり立ち上がらせる。ミラとマリアは王妃に対する緊張感から家族のくだりは聞こえてない。
(今家族になると聞こえた気がするのは気のせいだろうか、いや絶対聞こえた。なぜこの二人から選ばねばならないのだ)とカイルは手を繋ぎあう三人を遠い目で見ていた。
「あなたがミラね、あなたがマリアね!二人ともとても可愛らしいわね。で?カイル。」
「母上。で?とは?」
もう!と言いながらカイルに耳打ちする。
「だからどちらがうちのお嫁さんになってくれるのかしら?二人は友達同士なんだからきちんと誠意をもたなきゃダメよ。どちらかを側室になんて考えたら私が許さないわ。」
「・・・」
(やっぱり暴走している。父上の言った通りだ。とりあえず誤解を解かねば!)
「あの!母上これには誤解があったようですが、この二人とはなんの関係もありません!」の「母上これ」あたりからバッサリ無視された。
さぁさぁ座ってちょうだいとキャシーはミラとマリアの二人だけに席を勧める。
「紅茶は気に入ってくれたかしら?そうそうあなた達の事を聞かせてくれる?カイルとの出会いとかね。それでカイルのことはどう思っているの?もしカイルが嫌な態度をとったとしても自分の気持ちに素直になれないだけなのよ。そんな時は許してあげてね。」
勝手な事をいう母親にどうしても納得出来ずに口を挟む
「母上!いい加減にしてください!そんな妄想ばかりしているから父上が苦労するのです‼」
「フリックがなんですの?苦労なんてさせた覚えなくてよ。妄想ってなんの事かしら?本当に最近のあなたおかしいのではなくて?やはり恋煩いって人をおかしくさせるのかしら?」
「いい加減にして下さい!二人は連れていきますからね!」
「そんな、、今会ったばかりなのよ!お願い、もう少しお話させて。こんな機会滅多にないじゃないの。若い方たちと気軽に交流を持つことも出来ないし。一人のお茶は味気ないのよ。このカップのお茶を飲む間だけでいいのよ。ねぇカイル。」
あまりに必死な様子の王妃の姿をみて可哀想になり分かりましたと言いそうになった時
「それにあなたのお嫁さんとこんな時間を持ってみたかったのよ。ふふっ。」
「「えっ」」
今度の言葉はミラとマリアにきちんと届いた。
空気と化していたノエルが言い合いを始めた王妃とカイルを無視し、ミラとマリアへ自分のほうへ来るよう手招きする。それに気付いた二人はノエルと共に無事に琥珀の間から抜け出す事に成功した。
「とりあえずここで待っていてくれるかな?子爵と男爵を呼んでくるから。話はその後で。」とノエルは去っていった。
新しい客間へ通された二人は王妃の言ったお嫁さんについて考えていた。
ミラは、(まさか私がカイルの婚約者候補に上がっているのだろうか?いやないだろう。王宮の茶会へマリアを侵入させたことや大声を上げてマリアを叱ったりするところを見られている。相当幻滅しているだろう。それに自分にはジェーソンがいる。ではマリア?ないない。絶対にないと言いきれる。なぜ王妃様は勘違いしているんだろう?)
一方マリアは、(お嫁さん?ミラの事かしら。王族と子爵家の婚姻は少し後ろ楯が弱いかしらね。でも愛の力で殿下が頑張ればいいのよ。本だと男爵家のほうがあり得るんじゃないかしら。やっぱり身分差があると殿下に想いを寄せる爵位が上の貴族令嬢から嫌みを言われたりいじめられたりするのよね。そんな事があって心が折れそうになるのだけれど愛する殿下を信じてヒロインは耐えるのよ!そして最後は愛の力で結ばれるハッピーエンド!まぁ私だったら嫌みもいじめもゴメンだけどね。それよりちらっとみた騎士様素敵だったわ。あの方も恋をなさってるのかしら。あの方に似合う恋のシチュエーションは、)マリアはどこまでもマリアだった。
「いひゃい、はにゃしへ」
ニヤニヤしているマリアの両頬をつまんで伸ばすミラ。
「その締まりのない顔いい加減やめなさい。」
しばらくするとブライアンとアントニオがノエルに連れられてやって来た。
「今日のところはこのまま帰っていいとの事です。今日王宮で話したこと、見たこと、聞いたこと一切口外することなく今後臣下としてより一層の努めを果たすようにとの言葉を殿下よりいただいております。では、失礼いたします。」とノエルは下がっていった。
今回の謁見は事務官によって土下座~謝罪~謝罪内容~令嬢がいない事でのカイルとノエルの逃走?~ノエルのみ戻る~子爵・男爵帰宅というながれで仕上がった報告書はルイスへと渡り最終的にルイスからフリックへと渡る。
「「あっ!口止め忘れた、、、。」」
カイルもノエルも脇が甘かった。




