表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

第12幕

 やがて事務所を開設して5年が経過した。ギリギリの経営で、私の事務所はなんとか荒波を乗り越えていた。今なら以前テレビでやっていたボンビーガールとか言う番組に出演してもいいのかもしれない。まぁ、無論しないが。



 そんなことをあれこれ考えていると、1本の電話が事務所にかかってきた。



「もしもし。お電話ありがとうございます。『新宿なんでも探偵事務所』です」

「あの、求人を見てお電話したのですけど……」

「え? 求人? そんなの出していないですけど?」

「あ、いや、なんていうか、そちらの探偵事務所で働きたい! ……って、思って」

「あのね、ウチはね、あなたを雇うようなお金ないですよ? どこの求人見たの?」

「わ、忘れました。でも、お願いします! 面接だけでも、どうかお願いします!」

「もう……」



 事務所開設以来、初の入社希望の電話であった。好青年をイメージしてしまうような男性の声だったが、如何にも考える頭がなさそうな会話能力を感じられた。もちろん採用する気など毛頭ない。でも、興味本位で面接を実施することにした。



 面接当日。急遽、示談の手伝いの仕事に入っていた為に、私は相当な遅刻をしてしまった。古いビルの3階に構えている事務所に向けて、大急ぎで走った。案の定、褐色肌の外人らしき青年が就職活動の格好をして、事務所の玄関前に立っていた。そしてその時に、私は思わず心に浮かんだ声を漏らした……



「琉偉君?」

「あ! あ~やっぱり雪姉ちゃんだ! 雪姉ちゃん!!」



 大人になった琉偉君は私に抱きついてきた。私は何が何だかわからなくなった。



「ねぇ……これはどういうこと? 貴方は面接に来たの?」

「ううん……雪姉ちゃんに会えたのならそれでいい! 茜さんの言った通りだ!」

「茜!?」

「うん。中にいるよ。凄いね。やっぱり彼女は魔女だった!」

「どうして琉偉君が茜を? いや、え、あれ? あれ? あれれ?」



 瞳に浮かんだ涙で視界が歪んだ。私が事務所に入ると、そこには椅子に座った彼女がいた。茜だ。



「お~す! 久しぶり!」



 目を擦って確認する。やはり間違いなく彼女だ。格好はピンクのシャツに赤のネクタイ。そしてリクルートスーツを何故か着ている。髪はポニーテールだが、昔よりもより紅さが濃くなっていた。何より彼女は美人になっていた。私が立ちつくしているうちに彼女は微笑んで、ゆっくりと近づいた。そして私を抱き締めて、頭をそっと撫でた。その感触が、これが現実であることを感じさせてくれた。こんなに嬉しいことがあるのだろうか。私はしばらく涙で言葉を失った。



「聞きたいことがありすぎる……」

「だろうね。いいよ。後でゆっくり話してあげるから」

「どうして、どうして琉偉君と?」

「貴女を探すという目的が一緒だったから。貴女ときたら、探偵になって雲隠れしたりするもの。それで困っていたら、“噴火の記憶”が彼にあるって分かってね」

「それで……」

「彼も貴女を探して全国津々浦々探し回っていたそうよ。雪のこと好きなのね~」

「そう……それで、あなたはこれまでどこに行っていたの?」

「爺ジを富士山のてっぺんに連れて行った。それからそこで10年間隠居したよ」

「そうだったの……」

「ねぇ、雪。お願いしてもいいかな?」

「何を?」

「これからずっとここにいてもいい?」

「うん! いいよ! もうどこにもいかないで!」

「ふふふ。あそこで柏木君が羨ましそうにこっちを見ているよ?」

「え? あ! こら! これは違う! もうっ!」

「おお~やったねぇ! 柏木君、どうやら私たち内定貰えたみたいだぞ~♪」

「本当! やったぁ! 今日からオレも名探偵だ!」

「まったく。もう……」



 どうやらこれから賑やかな日常が始まりそうだ。いい意味でも。悪い意味でも。



「さてね。蒼井先生、さっそく私たちの出番はあるのですかな?」

「今は依頼が少ないからね。じっくり考えよう。それと私を呼ぶのは雪でいいよ」

「えへへ。そりゃそうか!」

「ねぇ、茜。一つ言ってもいい?」

「うん。何?」





「茜! 大好き! 愛しているよ❤」





∀・)最後までご愛読いただき誠にありがとうございました。次回作あれば、また茜たちとお会いしましょう♪♪♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かったです。読む手が止まらず一気読みしました。 女の子二人の友情がとても素敵だし、キャラがすごく立っていて。茜さんの描き方など本当にお上手で、こういうふうに描けるのがうらやましい…
[一言] この作品、好きです。 日常の中にさりげなく紛れ込んでいる魔女の存在、お互いがお互いを必要としている女子同士の友情、謎の組織との戦い……! 茜と雪の名前もこだわりがあって、いいですね(´ω`*…
[良い点] 前々からこちらのシリーズ、気になっていたのですが、ようやくひとつ拝読できました。 茜と雪の友情が素敵でした。 二人がお風呂に行って、悪戯魔法で楽しむところが印象に残りました。 「これが私た…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ