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第1話「東の国より、ひかる・イズル?」伍

「あ・庵野丈」

 マリンがクールに呟く。

庵野と呼ばれたマッシュルームカットに眼鏡の背の低い少年は、下を向いたまま震えてい る。

足元には、鞄と、弓道の弓と、矢の入った筒が落ちていた。

「なあ、あいつ、ひょっとして巨乳ちゃんの事好きなんじゃね?」

 ユーゴがイズルを羽交い絞めにしたまま呟いた。

イズルは黙って見ている。

庵野は、イズルに向かい一歩、また一歩前進し、口を開いた。

「宝路、お前。許さん」

「は?あ、いや、庵野君?これは誤解なんだって……」

 イズルは愛想笑いで応対したが、庵野はまるで聞いていない。

「あー、こりゃ一部始終見てたね。『僕の天使を汚しやがって』とか言ったりして」

 マリンが、淡々と話す。

 庵野は堪え切れなくなったように絶叫した。

「ひかるさんは、僕の、僕のッ、僕のぉぉおおおッ! 貴様、僕の天使を汚しやがってー!」

「案の上〜!」

 イズル・ユーゴ・マリンの声が合唱のように響く。

「しかも、あーんなコトやこーんなコトもしたなんて、宝路、許さん、覚悟!」

 庵野は、あっという間に弓に弦を張り、次々と矢を放ってきた。

矢が雨のように降りそそぐ。

「ギャー!」

 ユーゴはとっさにイズルを開放して逃げ出した。

イズルも矢の雨の中を逃げる。

「うあああ〜!ユーゴ、逃げるなんてズルいぞ! シャレになってないって、何で僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだー!」

 イズルの絶叫が、学校前にこだました。

逃げるイズル。

矢は変わらず降り注ぐ。

そして、その中の一本の矢がイズルの頬をかすめ、その白く透明な肌に、赤い血が滲んだ。

 イズルが、そっと頬に手を当てると、指先が紅に触れたように染まっていた。

イズルは、その手を見ると、握り締め、下を向き、震えて呟き出した。

「今日は朝から」

 イズルは顔を上げ、庵野に近づいた。

「やばい、これは」

 マリンが、呟く。

「イズルがキレる、押さえろ!庵野が危ない!」

 ユーゴがそう言って走り出すと、マリンも一緒に走り出した。

「何なんだよー!」

 イズルは人が変わったように叫ぶと庵野の持っていた弓を取り上げ、真っ二つに折った。

「ギャー!ぐ・グラスファイバーの弓がぁぁあああ!」

庵野は予想外の出来事にあたふたしている。

「イズルー、やめろー!」

 駆けつけたユーゴとマリンがイズルを押さえた。

「うるせぇぇぇえええ!」

 イズルは、ユーゴとマリンを跳ね除け、ユーゴとマリンは、豪快にぽーんと飛んでいった。イズルは再び庵野を見た。

「おい、庵野、お前わかってんだろうな?」

 イズルは、目が据わっている。もはや別人だ。

「あ、いや、僕、どうかしてたよ、カッとなってさ。た・宝路、悪かっ……」

 庵野は、混乱しながらイズルに謝罪したが、イズルは無言で庵野の胸ぐらを掴んだ。

「ギャー!許してー!」

 庵野が絶叫したその時。

「おやめなさい!」

 華やかな、だが、威厳に溢れる声が響いた。

 まわりの野次馬が、何かに一線を引くように、次々と道を空ける。その中から、一人の少女が現われた。

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