第2話「大昔でバースディを……」九
──もうダメだ!
イズルは、覚悟し、瞳を閉じた。
──ごめん、ひかる、会長。
スパーン!
突然響く乾いた音。おそるおそる顔を上げて見ると、女がどこから持ってきたのか、ハリセンのような物で、男の頭を気持ち良い位豪快に叩いていた。
男は、頭からズレたターバンと、眼鏡を直しながら頭を押さえる。
「痛た……何をするんです、純麗!」
「何をするも何も、このコ達、怪我してるじゃないかィ」
「でも、私達の掟では、部外者は無条件抹殺と」
「でも、怪我してるだろ?」
「だから、掟が!」
「アタシは、このコらを助けるよ」
「エ? 皆に何て言われるか! この前だって……」
「ゴチャゴチャうるさい男だねェ。助けるったら助けるんだよ!」
「でも!」
突然、純麗と呼ばれた女が、危ない目つきになり、男の胸ぐらを掴む。
「アンタ、団長のアタシの言う事が、聞けないってのかィ?」
「そっ! そんな事ありませんけどぉ〜」
男は精一杯の愛想笑いを浮かべた。
「じゃ、助けるのは賛成だね?」
「いや、でもそれは……」
「もう一回だけ聞くよ。さ・ん・せ・い! だよな?」
「はい」
突然の出来事に、呆気に取られるイズルと庵野。純麗は、男を解放すると、こちらに近づいてきた。
「やあ、アタシは、純麗。五源商団の団長やってるんだ。で、この長髪眼鏡は、アタシのいとこの迦亮」
「僕は、イズルです」
「何だかワケありって感じだねェ。アタシで良かったら、話てごらん」
「あの、僕の友達がさらわれたんです! 助けて下さい……」
イズルは、立ち上がったが、急激な目まいに襲われ、そのまま目の前が真っ暗になり、意識を失った。




