表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

第2話「大昔でバースディを……」拾

「……宝路、大丈夫か」

「何も出来なかった……!」

「悔しいけど、い、今は仕方ないよ。それより、止血しなきゃ」

 庵野は、イズルの上着を開けようとした。

「いや、大丈夫。触らないで」

 とっさに庵野の手を払う。

「だ、大丈夫なわけないだろ」

「それより庵野は大丈夫?」

「う、うん」

「良かった」

 更に急激な目まいが襲い、イズルは座り込んだ。

「た、宝路!」

 庵野の声が、辺りに響く。すると、木々の奥から、草をかき分け何かが近づく音がした。

「庵野、しっ」

 イズルが庵野の口を押さえる。辺りが静まり返ると、人の声が聞こえた。

「いた?」

「いえ、見当たりませんね」

 女と男の声。明らかに何かを捜している会話だった。

「さっきの総馬の話だと、この町の人は、よそ者は殺すとか言ってたんだ」

 イズルの言葉に庵野は、思わず息を飲む。

「向こうを捜してみましょうか」

 男の声が響くと、足音が遠ざかった。

「行ったみたいだ」

 イズルは庵野の顔から手を放した。緊張から解放されると、腕が激しく痛みだし、息も上がってきた。

──痛い。

 意識が遠くなる。

「うわあああああ!」

 突然、庵野が後ろを向いて叫んだ。その叫びで、また意識が少し戻り、後ろを向くと、そこに、いつの間にか、眼鏡をかけた長髪の男が立っていた。

 その右手には、研ぎ澄まされた剣が握られている。

「おや……そのいでたちは、異国の方で? こんな夜更けに、我が五源商団に何の用でしょう?」

 やわらかな口調とは裏腹に、男の目が鋭く光る。

「僕達は……」

 一か八か、イズルが助けを求めてみようとした、その時。

「亮!」

 気の強そうな、派手で、豊満な身体の女も現れた。

「客人のようです」

「ふーん、果敢にもウチに来るなんて。珍しい事もあるもんだねェ」

「貴方達に恨みはありません。しかし、我が五源の掟──よそ者は、ただちに消えてもらいます」

 男は、剣を振り上げる。

「お願いです! 聞いて下さい!」

 イズルの叫び声もむなしく、剣は振り下ろされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ