第1話「東の国より、ひかる・イズル?」拾弐
イズルちゃん……
宝路くん……
帰る所なんて、ない……
母さん……
宝路、帰りに理科準備室に来るように……
わたくしのお父様が指揮する学校で……
貴様、僕の天使を……
ひかるの事、お嫁さんに……
お前は、小夜子と、他の男の間に生まれた子供……
ただ白い光に包まれていた。
だが、その光の奥にははっきりと、朝からの出来事が見えた。
小夜子、目を覚ましてくれ……
おめでとうございます、女の子ですよ……
もしかして、お腹の中の子供は……
小夜子、幸せになってくれ……
仕方ないの、親が決めた婚約だから……
私も、ずっと小夜子を想っていた……
宝路も僕と小夜子の事、応援してくれるんだね……
お前と小夜子はお似合いだよ……
──これは、父さんと、母さん、それに……!
どんどん意識が遠くなる。
やがて光は心地の良い暖かさで、包み、眠りにつくように意識を奪った。
──痛い。
体を這う鈍痛で目を覚ます。
地面に凹凸を感じ、ゆっくり瞳を開いたが、射すような太陽の光に思わず閉じる。
呼吸をすると、熱が喉の潤いをどんどん奪っていった。
「みんな……?」
ひかる、結花乃、庵野がまわりに倒れている。
揺り起こすと反応があったので、少し安心した。
冷静になって、辺りを見渡すと、土が剥き出しの地面が延々とどこまでも続き、遮られる事のない日光が照らしつけている。
今さっきまでいた学校も、まわりに建っていたはずのビルも、何もない、ひたすらの荒野。
一面ベージュ色の大地。鋼色だったはずの空は、青く、どこまでも高くつきぬけていた。
「い、一体ここはどこなんだ……?」
【第一話 終】




