第12話 使い魔になれ
というわけで、新たなケモ耳です。
※残酷な描写があります。
俺は今、城門前まで来ている。
ここでかなりテンパっていたのはいい思い出だ。
あれから、冒険者ギルドを出た後、俺は調教師ギルド向かった。
先にこちらに来ておくべきとも考えたが、別にいいかという結論に至ったのだ。
冒険者ギルドの方が近かったみたいだし。
その調教師ギルドだが、わりとこじんまりした建物だった。
中に入ってみるとここでも、いや、冒険者ギルドの時よりもビックリした視線を向けられた。
確かにここの人たちは、使い魔というか魔物については人一倍詳しい。
そんなところにまだ若い(見た目だけ)少年が、フォレストウルフを連れてきたら、ビックリもするだろう。
そういうわけで、じろじろ見られる視線を不快に思いながら、受付で登録した。
受付には、リサさんのような立派なケモ耳を持ってる人は居なかった。ショボン。
冒険者ギルドで同じことやったので、今度はカードを見ながら必要事項を書いていった。
冒険者ギルドの時とは違って、スキルは書く欄がなかったが。
冒険者のルールとはランク以外の項目は殆ど一緒だった。
ただランクについては、調教師ギルドはほぼ格差はないらしい。
ギルドとしての役割は簡単な仕事を斡旋したり、新たな発見があった時に知らせるくらいの役割しか持っていない弱小ギルドなんだそうだ。
斯して、今に至る。
まあ、何も波乱とかなかったわけだが。
城門で警備の人が今もお仕事に勤しんでいる。
俺も今からお世話になりに行こう。なんかこの言い方、悪いことをしたみたいだ。
「すみません。外に出たいのですが」
「ああ、この前の。身分証は提示できるか?」
「その節はどうも。これで大丈夫ですか?」
そう言って、エドモンさんから借りているナップサックから冒険者のギルドカードをだす。
エドモンさんには他にも冒険というか、探索に必要そうなものを貸して貰っている。
「冒険者になったのか。
まあ、そんな魔物を連れてるんだ。当たり前か。
よし通っていいぞ。
どういう縁かは知らないが、フランク殿にお世話になっているのだ。
失敗して、死なないように気をつけろ」
「はい、精進します。では、行ってきます」
城門を出る。
辺りは草原、少し行ったら森、そして山みたいな感じに広がっている。
薬草は何処にでもある植物らしい。
今日はそんなに深く森や山にに入るつもりもないので、ゆっくり探索していこう。
森の周囲まで来た。近場の薬草は、全て採られているのか、全然見つからなかった。
ギルドに回るのに意外に時間がかかってしまった。
朝早くに家を出たのにもう日はもう真上辺りだ。
そろそろ昼食にしようと、ウルを侍らせて木陰で休む。
安定のエドモンさんが用意してくれた弁当を食う。水筒も渡されそうになったが、水の生活魔法で何とでもなるのでコップだけ貰ってきた。俺もうエドモンさん無しでは生きてけないかも。
ウルをモフりながら飯を食う。なんて至高。
ウルの分もあったのでちゃんとあげたが、俺の魔力でお腹一杯らしい。
でも無理やり食わせた。だって魔力だけって栄養価取れてるか心配だし。
昼飯も終わったので、探索を再開した。
薬草の探索は最初の一枚がとても時間がかかった。
草という草に鑑定しまくりそうしてようやく一枚目を見つけることが出来た。
薬草
傷薬になる草。
ポーションの材料にもなる。
鑑定してみると、こうなっていた。
ほー、ポーションも作れるのか。作る気はないが、いいことを知った。
ゲームとか小説とかでは、抜き方一つで品質が変わることなんかが起こるが、どうなんだろう。
一応、丁寧に抜いてみた。
薬草
傷薬になる草。
ポーションの材料にもなる。
品質:最高級
おお。丁寧に抜いたのが良かったのか、最高級だ。
次に見つけたときは、普通に抜いてみよう。
「ウル、この草と同じ匂いのものを探してくれ。できるか?」
「ワゥッ!」
誰に言っている。そう聞こえた。
そこから薬草を見つけるのは、早かった。
なんたってウルの鼻がなのだから。
見つけるたびに、頭を撫ぜてやる。
顔は平然を保とうとしているが、尻尾が右往左往している。
喜んでいるのがバレバレだ。
そうして薬草を数十枚集めた時、前方から微かな音が聞こえた。
なぜ、ウルの危機察知があるのに、と思ったがウルは今薬草探しに集中して危機察知が疎かになっていたのだろう。
ウルを責めることは出来ない、責めるつもりもないが。
二つのことを同時にやることは難しい。
どうする。このまま逃げるには近すぎる。
敵は俺たちに気づいてこっちに来ているのだろう。
ならば、迎え撃とう。こっちにはウルがいるし、俺にも秘策がある。
今にして思っても、たまに可哀想なことをしたと思ってしまう俺はこの弱肉強食の世界では異端なのだろう。
そして、前方の音が足音だということに気がついた時は木に隠れてそいつらを待ち構えた。
近づいてきたのは、犬の形をした人型生物だった。
すぐに一番先頭にいる魔物に《解析鑑定》を使用した。
名前:―――
種族:コボルト
レベル:18
HP:119/125
MP:80/80
筋力:41
俊敏:52
耐久:20
魔力:11
運 :7
スキル:威嚇 剣術
他のコボルトにも《解析鑑定》をかけたが、こいつが一番強かった。
《偽装》が効いている。俺達の居場所を掴んでいない。
ウルにはもうどうするか言ってある。
奇襲だ。まあ、このまま攻めるのだが。
さあ、やろう。
ウルに合図を出した。
待ってましたと飛び出すウル。
一瞬だ。一瞬で片が付いた。
ウルが飛び出して、ボスの喉元を食いちぎったかと思ったら、次の瞬間には近くにいた2体がウルの爪によって三枚に下ろされた。
その後も、12体のコボルトを圧倒した。
その間、俺はポカンと見ていることしか出来なかった。
仕方ない、ウルが強すぎたのだ。そう思おう。
確か、コボルトも常時依頼になっていたはずだ。
コボルドの証明部位は右の親指。
淡々と短剣で切り取っていくとあるものに気づいた。
死体だ。唯の死体じゃない。
子供の死体だ。
ウルが皆殺しにした中にいたんだろう。全く気がつかなかった。
心がさーっと冷えていくのが分かる。
今になって、自分が行ったことについて冷静に考えることが出来た。
この世界では当たり前のことなんだろうが、異世界出身の俺には堪える。
俺はさっきまでの作業を無心で行う。
子供の指は流石に切り落とせなかった。
そうしていると、1匹だけ温かい子供のコボルトがいた。
ウルとの戦闘で、蹴飛ばされたりして気絶したのだろう。
気絶しているが、魔物だ。殺さなければならない。
いや、待てよ。殺さなくても、テイムすればいいのでは?
だが、こいつは俺のことを恨んでいるのではないか?
恨んでいるならば、こいつは俺を殺そうとするだろう。
その場合は、ウルがいる。あの圧倒的な速さなら、何とでもなるだろう。
「ウル、俺はこいつをテイムする。もしこいつが俺を殺そうとしたら、なんとかしてくれ」
「ワゥ!」
俺は、子供コボルドを揺すって起こす。
起こしたとたん、コボルトは何が何だか分からずに泣いた。
願わくば、こいつが自分で生きれるようになるまでは俺の使い魔になることを祈って。
「お前、俺の使い魔になれ」
コボルトは俺をやっと認識し、恐怖に震えた。
「お前を立派に育ててやる。
都合がいいのは分かっている、だがお前の仲間を殺した罪滅ぼしをしたい。
俺の使い魔になってくれ」
コボルトは、瞳に涙を溜めていたが、しっかりと頷いてくれた。
今回みたいなことは、もうこれっきりにするつもりだ。
覚悟もなく、コボルト達を殺してしまったからこういうことになったのだ。
それに何度も同じことをしていては、俺が養えなくなってしまう。
これで、俺の使い魔は2体になった。
ウルとコト、一匹はまだまだ弱いし、これからだがこいつは死なせない。
まずは、魔力食わせまくってのレベルアップだ。
俺達は、コボルト達の死体を一箇所に集めて燃やした。
それを見届けて、また眠ってしまったコトを抱えてイズミルまで戻った。