表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
8/37

第七節


 色々考えて、一つ名案が浮かんだ。

 解析対象として「成長に必要な経験点」を指定したらどうだろう。

 これなら全ての問題を解決できる!

 そうと決まれば【解析】だ。と思ったらまた「2」の魔力を持ってかれた。


 【能力】の成長に必要な経験点は、【能力】の実数値の合計に成長させたい【能力】の実数値をかけた値となる。

 【技能】の成長に必要な経験点は、成長させたい【技能】の等級の二乗に二百をかけた値となる。


 結局二つの対象を解析したことになるんだな。

 まあ計算式が異なるようだから仕方がない、か?


 例えば、今の俺の【能力】の実数値の合計は「24」だ。【魔力】を成長させるとして、「5」をかけるから必要経験点は百二十点か。

 掛け算だから数値が大きくなると一気に必要経験点が増えるな。

 そして【技能】の方は一級の二乗に二百をかけるから二百点。仮に二級になったら八百点か。差が激しいな。

 あれ、新しく【技能】とるとしたら、零の二条の二百倍で零? そんな訳ないよな。となると新規習得も別計算?

 また解析が要るのか。深刻な魔力不足だな。


 とりあえず技能の新規習得は置いておいて、魔力を増やす方法だ。

 総合等級は意識的に上げる必要がない気がするし、【魔力】を三級にすると仮定する。

 実数値を「6」にするためにまず百二十点、「7」にして三級にするためには…百五十点か。合わせて二百七十点。

 魔力が三級になった場合は…最大魔力量「20」に回復量「12」か。一気に上がったような気もするが、一日辺りの解析回数が四回増えただけと考えると微妙だな。

 まあ、今の俺はゲームスタート直後の状態だ。これでも十分な成果だろう。

 更に【耐久】を三級にしたら、回復量が「15」になるのか。そのために必要な経験点は…二百九十二点。経験点が足りない。

 魔力を三級にした残りの経験点で【魔術】を二級にすれば魔力量は大幅に増えるが、回復量は変わらないから一日に使える魔力は変わらない。


 これは経験値のやりくりが大変だな。

 なんて思ったところで、これは贅沢な悩みだと思い直す。

 そもそも普通は成長に必要な経験点どころか、【能力】や【技能】の実数値すら知らないんだから悩むことすらできないんだよな。

 むしろ他の人はどういう風に経験点を使ってるんだろうか。

 魔物を狩った時の獲得経験点も調べないとな。


 色々考えていたら疲れてきたので、散歩がてら宿から出て買い物に行くことにした。

 まともな見た目の服や今後の生活に必要な雑貨を買わないと。


 そんなこんなで大通りを歩きながら露店を見て回る。

 どうやらこの世界だと、きちんと店舗を構えているのは大型商店や高級店に分類されるらしい。

 つまり一般市民が手にするような安いもののほとんどは露店で売っているということだ。

 実際おばさんから教わった店もほとんどは露店だった。


 さて、何はともあれまずは服だな。

 この世界じゃ「服屋」って分類じゃ話が通じ辛いらしい。おばさんの話だと「古着屋」と「仕立て屋」に分かれていて、それぞれ名前通りだそうだ。

 新品の服で既製品なんていうものがまず無くて、新品の服は仕立て屋で体のサイズを測って仕立てる、高級品なのだそうだ。そして新品の服なんて貴族や大商人なんかの金持ちが作るくらいだとさ。

 古着屋は読んで字の如くだが、服の質の幅はすさまじく広いらしい。古着には貴族なんかが仕立てさせたが飽きて売り払ったものから、着古して擦り切れボロボロになったものまで様々なものがあるそうなのだ。

 また、古着とはいえ修行中の職人が作った質の低い服や素人が自分で縫ったものが古着屋に売られることもあるため、実質的に新品のものもあるという。

 俺としては特別綺麗な服を着たい訳じゃないから、適当な服を買えばいいだろう。


 露店巡り(見て回っているだけ)をしているとお目当ての古着屋を見つけた。

 露店と言っても、地面に布か何かを敷いて商品を並べているとか、そういうのではない。外観は、俺の感覚で言えば屋台や出店のそれだ。また商店街とかにある八百屋や魚屋のような、建物の一階が外に開けていてそこで物を売っているような店もある(これも露店に分類されるらしい)。

 この古着屋は後者の造りで、そのためか品数が多い。

 露店には俺の他にも何人かの客がいるようだ。店の人はその相手をしている。

 俺はそれに紛れるようにして古着が置いてある籠や棚を見て回り、手に取って見る。

 なるほど、確かに質には差があるようだ。これ雑巾か? なんてものもあれば、染み一つない綺麗なものもある。

 仕切りの奥には更にいくつかの服がハンガーか何かにかけてあった。おそらくあれが良い服なのだろうな。当然そういう服は高いだろうが。

 しばらく色々見て回っていたら、他のお客の相手が済んだのか店の人がこちらに来た。

 俺は元々、買い物は店員に邪魔されず自由にするのが好みなのだがこの世界ではそうも言っていられない。

 なぜなら、値札がないからだ。

 そう、「定価」というものがないのだ。

 当然相場の値段というものはあるだろうが、結局は売り手の匙加減と交渉次第。つまりは駆け引きだ。

 こっちの人は買い物する時に一々駆け引きすることになるのか。それは地味に疲れる気がする。

 どの道始めから気分転換程度のつもりだったし、せっかくだから異世界情緒を楽しむか。


「お好みの商品は見つかりましたか?」


 と店の人が話しかけてきた。その口調は、なんというか一発で商人だと分かるものだ。

 説明し辛いのだが、ただ聞いているのではなく、色々含んでいる上にこちらを値踏みしているような、そんな声音だったのだ。

 商人さんは人間のようで、特殊な外見ではない。薄い茶色の髪にアゴヒゲを生やした普通のおじさんだ。

 ただし、その眼は正直少し怖い。


「ええ、いくつか気に入ったものがありまして」


 と答え、目を付けていた服を取って見せる。

 見た目で説明するなら、それは黒の長袖シャツと焦げ茶色の長ズボンである。幸いなことに、同じようなものがもう一セット見つかったので、そちらも手に取り見せる。

 これらの服は雑多にまとめられている古着の中では質がいいほうだ。その手触りや丈夫そうな作り、何より色がいい。


「これなんですが」


 と商人さんに問うと、こう、嫌そうな困ったような変な顔をされた。

 あれ、こういうのってポーカーフェイスが基本とかじゃないのか? それとも演技?

 と思っていたら、商人さんはハッとしてアゴヒゲを撫でながら返事をしてくれた。


「いえ、失礼を。しかしそれをお選びになるとは中々お目が高い。その服は服職人見習いが作ったものでして、確かな作りのものとなっております」


 おお、やはりこちらの世界でもセールストークはあるんだな。聞き取りにくさを感じさせない程度の早口という、地味に高度そうな話しぶりだ。


「ただ、見た目が地味なところだけが残念でして。その分お安くさせていただきます」


 地味なのは残念なのか?

 俺なんかは暗い色が、特に黒が好きだ。

 とはいえ全身黒尽くめってのも変だから、他の色のズボンを選んだだけだ。

 しかし、こっちじゃそういう趣味の人は少ないのか? 単純にそういう風潮なのだろうか。

 安く売ってくれるというのなら大歓迎だが、今の俺は相場を知らないから本当に安くなっているのかどうかは分からんな。


「そうですね、四つで神聖銅貨二枚といたしましょう。いかがですか?」


 神聖銅貨二枚は、ストルオス銅貨二百枚か。値段としては悪くないんじゃないかと思う。

 ただ、ひたすら数えるのが面倒だ。


「すみません、神聖銅貨の手持ちがなくて。ストルオス銅貨でも大丈夫ですかね?」


「ええ、もちろん構いませんとも」


 一瞬の逡巡も挟まずに返された。枚数を数えるのが嫌じゃないのだろうか。というか交渉らしい交渉してないな。

 と思ったら、商人さんが奥の誰かを呼ぶ。あれ、またこのパターン?

 出てきたのは割と小さい男の子だった。この子に数えさせるのか?

 商人さんは俺を仕切りの部分にあるテーブルまで連れて行き、そこに銅貨を置くようにと言われた。

 まあ、台や道具も使わずに二百枚も間違わず数えられる訳ないもんな。渡されても持てないし。

 俺は言われた通り銅貨の枚数を数え始める。今回は半ば外でもあるので十枚積みを二十セットだ。

 そうして数えている様を、奥から出てきていた男の子がジーッと見ている。彼は確認役兼監視役なのかな。

 こちらとしては誤魔化すつもりもないし、むしろ一生懸命な様は微笑ましいほどだから問題はない。

 しばらくして二百枚を数え終え、銅貨をテーブルに置いたまま商品を受け取り宿に戻る。

 いわゆる試着スペースなどないため、着替えるには宿の部屋に戻るしかないのだ。


 宿までの道中を、道行く人の服装を見ながら行く。

 改めて見ると、黒い服を着た人がほとんどいなかった。茶色い服を着ている人は少し居たが、どう見てもお金を持ってない感じの薄汚れた人ばかりだ。

 暗色は圧倒的不人気、ということだろうか。

 黒の良さが分からんとは、かわいそうに。

 対してお金を持ってそうな人はまず明るい色の服を着ている。

 やはりそういう風潮なのだろう。


 部屋に戻り、ちゃちゃっと着替える。

 元の服は予備として売らずに持っておくか。


 着替え終わった俺は再び宿を出る。一々面倒だが仕方がない。

 次に欲しいのは靴だ。

 今履いているのは劣化足袋とでも言えばいいのか、布製なのだ。

 ぴったり張り付いてこない靴下のままで地面を歩いているような、そんな感じ。

 このままじゃ何かの拍子に足を怪我しそうだし、靴は必須だろう。


 と俺は思うのだが、道行く人の中には裸足の人すらいる。

 もちろんそういう人は例外なく貧乏そうであり、見ていてとても寒そうだ。

 しかし見える限りだと、特にお金に困ってなさそうな人でも履いているものが質素な人は多い。

 これもそういう文化、なのか?


 人間観察じみたことをしながらもお目当ての店に辿り着いた。

 そこは露店の靴屋である。正確には露店の靴屋がいくつか並んだ場所か。

 服と同じように、靴も基本は仕立てか古着(古履き?)だ。

 しかし靴は服と違って、購入時にある程度サイズ直しがされるそうなのだ。

 こっちの靴はほとんどが紐でくくって結ぶ形式だから、サイズ直しがしやすいのだろう。多分。

 ちなみにこっちの露店は様々だ。

 道に麻布か何かを敷いて売っている者もいれば、先ほどの古着屋のように八百屋形式で…なんか雰囲気がないな、半露店形式で売っている者もいる。

 古着屋で少し時間をとったので、こちらはさっくり買いたいと思う。

 そのためにも品数の多い半露店の店に入った。

 ざっと見て回った感じ、何かの革で作った靴が良さそうだったので店の人を呼んで交渉を始める(と言っていいほど高尚なものでもない)。


 最終的にコボルトとかいう魔物の革で作った靴を買った。

 なんとお値段神聖銅貨三枚。

 ストルオス銅貨で三百枚だ。

 靴って高いのな。

 支払いにストルオス銀貨を出したら、おつりは神聖銅貨二枚だった。またストルオス銅貨がじゃらじゃら増えるのかと戦々恐々だった俺は商人さんの粋な計らいに感謝した。

 これで外見はさほど問題ない感じになっただろう。代わりに銀貨一枚分使ったが、これは必要経費だ。

 しかし他にも色々買わねばならない。

 確かに銀貨二枚で一ヶ月持たないな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ