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RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
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第三十六節


 指揮官さんが忙しそうに指示を出すのを眺めながら、俺はその場で棒立ちのまましばらく待機した。

 別にわざわざ口を挿んで急かすことでもないと思うし。


 指揮官さんと話している内容に聞き耳を立てていると、何となくだが状況が分かってきた。

 まず、あの「衝撃」の原因は不明で、「衝撃」と今回の魔物凶暴化(と呼ばれていた)との関連性は不明だが状況から考えて何らかの関係があるとみて調査中。

 戦闘時の様子から考えて魔物に高い知性が宿ったなどという可能性は無いと思われる。

 現在の基本戦略は門の前に防衛線を敷いて魔物を街に入れないことを最優先。

 今の所は空を飛ぶ魔物の接近は確認されていない。

 他の街の状況の確認と救援要請のため何人かは早馬で既に出立している。

 街中から物資を集めているお蔭で今の所は余裕がある、が、この状態が続くとジリ貧。

 街の住人にはできるだけ家に篭るように指示している。


 ここに居るだけでかなりの情報が入ってきた。

 しかし、あの「衝撃」があったのが昼で、今は日が暮れ始めて少しした頃だ。だというのに状況への対処が粗方済んでいることを考えると、衛兵さんたちの対応はかなり早い。

 これはこの街の衛兵さんたちの優秀さや練度を表すのだろうな。

 個人的には中世西洋な衛兵さんなんて権力と武力に胡坐をかいて横暴で怠惰な感じだとばかり思っていたのだが、この世界だとそうでもないのか、はたまたこの街ならではなのか。


 そんなことを考えている間に、どうやら俺の番が来たようだ。

 まあ、報告やら伝令やらが途切れただけだけど。


 指揮官さんは俺の方に向き直り、若干考えた後口を開いた。


「君はそこの門を出て、戦線を維持している者たちの後ろから魔物の群れを優先して魔術で攻撃。魔力が尽きたらすぐに戻り私に帰還報告をするように」


 近くにある門を指差し、少し早口に指示された。


「分かりました」


 俺がそう返事をすると、指揮官さんは一つ頷き俺から視線を外す。

 扱いが雑な代わりに簡潔で面倒がないな。

 普通なら手続きやら許可やらテンプレートな対応なんかが必要なんだろうけど。


 とりあえず指示された通り、まずは門へ向かう。

 いつもは全開きとまではいかないまでも、かなり開いている門が、今では武装している人が横に並んで二人、またはあまり大きくない馬車一台が通れるくらいしか開いていない。

 いざと言う時にはすぐに閉めて籠城(籠街?)するためだろう。


 あれ、ならなんで初めから門を閉じきって防衛しないんだろうか。

 俺自身が直接上ったことはないが、外壁の上は登れるようになっているようで見張りをしている衛兵さんが歩いているのをたまに見かける。

 つまり、外壁の上には人が登れるスペースがあるってことだ。

 ゲームやアニメなんかでは、城壁に取り付き梯子をかけて登ろうとする攻め手に、上から弓矢はもちろん岩を落としたり煮え湯や油をかけたりして防衛する、なんて光景があった。

 今回、相手は梯子なんか使わない魔物なんだから、まともに攻城(というのも城じゃないこの街じゃ変だが)なんてしてこないだろうし閉じ籠って上から適当に攻撃していればいい気がする。

 なのに、そうしていない。

 俺に出た指示も「門の外に出て、後ろから魔術で攻撃」だ。

 どうせ遠距離攻撃するなら、外壁の上からの方が良い気もする。

 何か理由があるんだろうか。


 そんなことを考えながら門を通ろうとしていると、魔物の死骸を担いで外から中へ入ろうとしている人とすれ違う。

 革鎧を着ていたから、冒険者かな?

 魔物の死骸を担いでいた冒険者はちらりと俺を見たが、特に気にするでもなくそのまま中へ入って行った。

 あれは、戦利品の回収でもしていたのだろうか。

 だとしたらかなりがめつい気がする。

 あの指揮官さんに許可取っているのか?


 俺は門を抜けて外に出る。

 普段なら土が露出して踏み固めているだけな感じの街道が伸びている草原という長閑な雰囲気の場所が、今は鉄臭い戦場と化していた。

 辺りにはかなりの数の魔物が転がっている。

 鉄臭い理由は血の匂いか。

 立っているのは冒険者や衛兵さんだけで、数は大体二桁を超える程度のようだ。

 今の所、ここに魔物はいないようで戦闘は起こっていない。

 まあ、門から出てすぐの俺にすら、遠くからこっちに走ってきている魔物が見えるんだけどね。


 少し前に歩いた程度の位置で足を止める。

 あまり前に出過ぎるのも良くないだろう。

 周りの冒険者や衛兵さんは、遠くから走ってきている魔物を気にしつつも周囲を警戒しているようだ。

 幸い、門を出てすぐは開けた草原で視界は良好である。

 日が落ち始めているから万全ではないが、よほど小さい魔物やステルス能力を持っている魔物でもない限りすぐに見つけられる環境である。

 …地中を進むのとかもいたらヤバい気がする。居ないよな?


 周囲を警戒している人たちの中に、せっせと魔物の死骸を担いだり引きずったりして運んでいる人もいる。

 門から出る時は「がめつい」なんて思ってしまったが、俺の見当違いも甚だしい。

 彼らが魔物の死骸を運んでいるのは、それが邪魔だからだろう。

 そこかしこで転がっている魔物の死骸は、剣や槍などで戦うのなら障害物になってしまう。

 さらに、その血でぬかるんだ土は足を滑らせる原因にもなるはずだ。

 もちろん、その素材を回収する目的もあるだろうが、見ている限りだと必要に迫られて運んでいる感じだ。

 今の時点でもかなり邪魔臭そうなほどの魔物が転がっているからな。


 そんな風に状況の確認をしていたら、さっきから見えていた魔物がもうすぐ前線にいる人たちに接敵するところだった。


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