表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
35/37

第三十四節


 始めに「衝撃」を感じた時は、異常現象だとは思ったが何も起こらなかった(ように見えた)ため事態を軽視していた。

 しかし、ことここに至り認識を改める。

 人には(今の所)悪影響を及ぼさないが、魔物に異常な行動を、それもより積極的に人を襲うようになるものなど危険極まりない。


 この世界において、村や街というものは「魔物を駆逐し土地を切り開いて造る」ものだと聞いた。

 それ故、必然的に「弱い魔物の生息する土地」には街が立ちやすい。

 ここ「グノーズ」の街もその例に漏れず、周囲には強力な魔物が少ないそうだ。

 森の中に入れば話は別だが、周りの草原やそこにある街道付近はそもそも滅多に魔物を見ないという。


 だが、「衝撃」以降魔物はわざわざ縄張りから出て人を襲うようになったという。

 それはつまり、森の奥にいる魔物なども街に来るかもしれないということだ。

 加えて問題となるのが数だ。

 魔物はどこからともなく現れ、基本的に尽きることがない。

 俺の感覚で言うなら、ゲームの雑魚敵をいくら倒しても絶滅させることはない。みたいな感じだろうか。

 そんな魔物が、何故か街に向かっているとするなら。

 その数は、一体どれだけに上るのか。

 仮に無限湧きする魔物が延々と街に向かい続けていたら、いつか物量で押し潰されてしまうだろう。


 あの「衝撃」は、それだけの可能性を持っているのだ。


 武装した冒険者に礼を言って離れる。

 俺はあの「衝撃」を【解析】してみることにした。

 不審に思われる可能性が高いから、本当は「普通なら知りえない知識を得る行動」で「他人に話してしまいそうな内容」を解析したくはなかったが、危険な状況にあるようなので今回は仕方ない。

 それによって分かったことは、次の三つだ。


 魔物にのみ影響のある魔法のような現象であること。

 魔力によって極めて広範囲かつ無作為の存在を対象とする高出力の現象であるため、多少なりとも魔力を持つ者はこれを認識することができること。

 この現象の影響を受けた魔物は、最も近い場所に居る人の位置を認識することができるようになること。


 これは、効力そのものは微妙だけど魔物の性質のことを考えると地味にえげつない気がする。

 文字通りの効果があるとしたら、「衝撃」の影響を受けた魔物は常に人の位置を認識し続けるということじゃないのか?

 それを「人の位置」と認識しているなら、魔物の人を執拗に追いかけ襲うという性質と相まって延々と人を追い襲い続けるようになると思う。

 というか、そうなっているからこそ魔物の異常行動なんだろう。


 これだと、例えば「外壁の向こうに居る人」が「最も近い場所にいる人」だった場合、ひたすら壁を越えようとするのかとも思うが、ここの魔物はゲームのモブキャラではない。

 道中に見かけた人や門番を狙ったり、外壁を回り込むなどしようとして門に辿り着いたりして、結果的に(そして必然的に)外壁の門に魔物が集中しているのだろう。


 ただ、疑問なのだが、これは自然現象なのだろうか?

 あの「衝撃」の効果が「魔物にしか効果がない」上に「知覚範囲外の人を襲うようにする」ものというのは、まるで「魔物に人や街を襲わせるため」に思えてならない。

 仮にそうだとすると、これは人為的な現象だということになる。

 だが、誰が? 何のために?

 いや、そもそもが仮定に過ぎないのだが。


 そうだ、「現象の原因」を【解析】できないだろうか。

 そう思い【解析】を実行しようとしたのだが、【解析】は反応しなかった。

 感覚から言って、「解析できない」というよりは「対象の指定に失敗」しているようだ。

 なんで失敗したんだ?

 解析の効果を設定した時のことを思い出す。

 解析には魔力を使用する。指定できる対象は…認識している対象のみ。

 俺は「衝撃」を認識したが、その原因は認識していない。ということか?

 いや、そもそも俺は「衝撃」を【解析】したんだから、その原因も解析できてていい気がする。

 そう思いながらもう一度【解析】してみるが、結果は同じだ。

 なんだ? 解析で分かる情報と分からない情報があるのか?


 ここにきて【解析】に疑念が浮かんできたが、とりあえず今は置いておこう。

 具体的にどれくらいの範囲に「衝撃」の影響があったのかは分からないが、一番近い人を狙うのなら魔物は基本的に「一番近い村や街」を狙っていると考えていいだろう。

 となると、「衝撃」範囲内の全ての魔物がこの街に向かっている訳ではないのが唯一の救いか?

 とはいえ、周囲の魔物が押し寄せていることに違いはない、か。


 とりあえず状況を確認した俺は、マスターのいるカウンターの方へ戻る。

 マスターは未だ忙しそうに色んな人と話をしていた。

 その合間を縫うようにして、話しかける。


「大体の話は聴きました。私も門に向かった方がいいですか?」


 俺がそう聞くと、マスターは少し悩んで答える。


「そうだな。お前さんが構わんなら行ってくれ。戦利品を回収してる暇はないだろうが、報酬は出るから安心しろ」


 多分、駆け出しでも魔術があるなら矢面に立たなくていいだろうから邪魔にはならないか。とか考えてたんだろうな。


「分かりました。どの門に向かったらいいですか?」


「お前さんがいつも狩りに出ている門だ」


「分かりました」


 俺は一度部屋に戻って完全武装したあと、いつも背負う袋を置いて宿を出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ