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RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
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第二十八節


 道中、何度か魔物に遭遇しかけたが、荷物を持っていたのが【隠密】持ちの俺だったからか、見つからずに済んだ。


 街に帰り着いた時にはまだ昼過ぎ夕方前くらいの時間だった。


 そのまま栄光の剣亭の裏に戦利品を売りに行く。

 結果だけ言うと、全部で神聖銅貨六枚になった。純粋な量と値段の比率で言えばかなりの儲けになる。

 稼ぎは純粋に折半だ。

 もし端数が出たら冒険者としての知識を教わる料金としてカイザに渡すことにしていたが、今回は丁度二分できたな。


「次の狩りは明々後日ですね。明後日の夜にまた酒場で会いましょう」


「分かりました、では、また明後日に」


 そう返して俺たちはそのまま別れた。


 これも冒険者の基本なのだそうだが、一度冒険に出たあとは休日を挿むらしい。

 その長さは人それぞれだが、大体二~三日くらいが多いそうだ。

 カイザの場合は基本的に二日開けると言っていた。

 今日狩りに出たのは、悲劇的な出来事があったときはなるべく時間を置かずに魔物を狩りに行くのが良い、という冒険者の知恵なんだとか。

 理由はカイザも知らないらしい。

 トラウマを作らないように、とかそういうものだろう。いや、適当だが。


 さて、思っていたより時間が余ってしまった。

 魔力も結構余っているし【解析】するには丁度いいのだが、どうするか。

 とりあえず適当にぶらぶらしてみようか、腹も減ってるし。


 大通りを歩きながら、脇に並んでいる露店を眺める。

 肉、野菜、果物、料理、服、簡易な装飾品、などなど様々なものを売っている店がある。


 俺は露店でサンドイッチのようなものを買って食べる。

 見た目はコッペパンみたいな形のパンを横に割って、葉野菜や肉を挟んだものだ。

 包み紙のようなものは一切なく、そのまま素手で掴んで食べる感じだった。

 お値段、ストルオス銅貨三枚である。結構ボリュームがあるようだから妥当な値段、か?


 若干食べ難いため、歩きながら食べると人にぶつかりそうなのでその場でかぶり付く。

 味は…なんというか、普通だった。美味しいことは美味しいのだが、ボリュームや見た目に反して薄味で、ちょっと物足りない気がする。

 アメリカンで濃い味付けを想像していたせいもあるだろう。


 何が違うのか、と考えながら食べている最中に気付いた。

 ソースだ。

 そもそもこのサンドイッチにはソースが使われていないようだ。

 胡椒(こしょう)などの香辛料の味もしない。


 この世界で食べたものは、大体薄味だったように思う。

 また、味付けも基本的に塩味ばかりだ。

 そういうものなのだろう、とも思うが、もう少し工夫できるだろう、とも思ってしまう。

 俺自身は料理経験なんてほとんどないが、このサンドイッチにしたってもう一味あれば全然違う気がする。


 俺の頭の中にある味は俺にしか再現できない訳だから、最終的には自分で料理することになる、のか?

 それはそれで面倒だな。


 サンドイッチを食べ終えた俺は、井戸まで歩いて軽く手を洗い、散策を続けるのだった。


 その後、明確な目的もなく歩いていたからか、特にこれと言った成果もなく日が暮れ始めた。

 やはりと言うか、何か明確な目的意識がないと情報を収集するのもままならないな。


 結局この日は宿に戻り、食事を摂って寝るだけとなった。


 翌日、俺は一人で森に来ていた。

 今日の主な目的は経験点だ。

 適度に奥まで入って二級の魔物を狩って、魔力に余裕がある内に戻る。

 二級の魔物なら俺一人で狩れば十四点の経験点が入る計算だから、五匹も狩れれば道中浅い場所でも露払いをすると考えて八十点近く稼げるだろう。


 加えて、もう一つ試したいことがある。

 それは近接戦闘だ。


 俺は【剣】や【体術】【防御】などの技能を取ったが、結局一度も使っていない。

 腰に下げている剣だって、折角買ったのだから使ってみたいのだ。

 もちろん、好奇心だけではない。

 魔術を使わずにどの程度戦えるのか。

 それを見極めるためでもある。

 今のままだと、魔力が生命線過ぎるからな。


 森に入ってすぐ、俺は二匹のゴブリンを見つけた。

 近接戦闘を試すチャンスだが、最初から二対一なんてやりたくない。

 俺は隠れたままぎりぎりまで近付いて、既にお決まりとなった石の弾丸で片方のゴブリンを狙う。


 不意打ちを受けたゴブリンは頭を撃ち抜かれ、そのまま倒れる。

 隣に居たゴブリンが反応する前に、俺は剣を抜いて駆け出す。


 残ったゴブリン目掛けて一気に走る。

 俺は武器を手にしているので敵襲だと気付かれてはいるはずだが、突然の事態に混乱しているのか地に伏したゴブリンと俺を交互に見るだけだ。

 このチャンスを逃す手はない。

 あと三歩でゴブリンにぶつかる、という距離で、俺は一歩進む間に両手で剣を振り上げた。

 走る勢いのまま、右足を大きく前に一歩踏み込む。

 重心を前に、右足の上に乗せるように移動させながら、勢いをそのまま腕へ伝える。

 左足は上げず、前屈のような体勢になりながら、腕を、その手にある剣を振り下ろす。

 刀で言うなら袈裟切りだ。

 真っ直ぐではなく、左下に向かうように振り下ろした剣は、唖然としたままこちらを見るゴブリンの肩口を捉えた。

 そのまま、斬る、というよりは叩き伏せるような要領で無理矢理に剣を振り切った。

 そのせいか、感じる手応えは肉の弾力と骨の硬さ、それらを潰し砕くようなものだ。


「ギギャアアァァァァ!」


 ゴブリンが悲鳴を上げる。

 かなりのダメージを与えた、と思う。

 攻撃直後で崩れかけた体勢を立て直し、剣道でいう正眼に剣を構えて様子を見る。

 最初に魔術で打ち抜いたゴブリンは、そのまま頭から血を垂れ流していて動かない。

 剣で斬り付けたゴブリンは、苦痛にもがくように手足を蠢かせていたが、そのまま糸の切れた人形のように動かなくなった。


 剣でゴブリンを突き、完全に動かないことを確認する。

 冒険者は魔物が生きているか死んでいるのか分からない時はとりあえず止めを刺すらしい。

 その手段は様々だそうだが、油断して近付き過ぎるのは良くないと教わった。

 実は生きていて噛み付かれた、なんてことがあるらしい。

 袈裟切りにしたゴブリン少し離れた場所から剣で首を叩き斬った。

 これで、確実に死んでいるはずだ。


 経験点を【固有札】で見る限りでも、きちんとゴブリン二匹分増えていたため間違いないだろう。

 俺は昨日カイザがしていたように、そこら辺の葉っぱを適当に毟って剣の刃を拭った。


 その後は剣を鞘に納め、再び森の奥へと移動を開始する。


 とりあえず、これでゴブリン程度なら剣でも倒せることが分かった。

 同じ一級であることから、ビッグラビットやリーフクロウも行けるとは思う。試してみないと確証は得られないが。

 ただ、二級の、コボルトやハードボアはどうか分からない。

 コボルトは最初、俺の魔術を避けた。【魔術】二級が避けられるなら、【剣】一級が当たるとは思えない。

 ハードボアはかなり頑丈だ。その皮膚の硬さは(死んだあとではあるが)実際にこの手で触れて確認済みだし、頭の部分はゴブリンの頭に風穴を開ける石の弾丸を弾いた。

 剣でまともにダメージを与えられる気がしない。


 とりあえず、コボルトが出てくる辺りの魔物は魔術で倒そう。


 昨日、ハードボアを見つけた時くらいは歩いたので、ここからは移動より索敵をメインにする。

 しばらく歩いていると、視界に違和感を感じた。

 コボルトやハードボアのように分かりやすい「何か」じゃなくて、隠れている「何か」を視界の端に捉えたような感覚。

 一番近いのは、リーフクロウを見つけた時のような感じだった。

 違和感に誘われるまま、視界の一点を注視する。

 それは、地面にある茂みの影。

 茂みの葉に隠れ茎や根が薄らと見える中、それらとは違うものが見えた。

 よーく目を凝らすと、それはぬろぬろと動いている。

 蛇だ。

 ただ、妙に大きい。

 テレビで見たアナコンダみたいなほどではないが、沖縄で見たハブよりは太くて長かった。

 影に居るため分かり辛いが、体の色は緑っぽかった。

 そういえば、マスターが「森で注意する魔物」として挙げていた気がする。

 確か名前は、「グリーンヴァイパー」。

 牙に毒を持つ蛇、だったか。


 コボルトやハードボアとも一味違った感じで近接戦闘を挑む気にならない。

 ここはいつも通り、石の弾丸で奇襲と行こう。


 既に使い慣れた石の弾丸に、ゴブリンを倒した時より大目に魔力を込めてグリーンヴァイパーらしき影に発射する。

 弾丸が茂みに突っ込んだ時の「ずぼっ」という音と、地面を抉ったような「すどっ」という音が大きくて、実際にどれくらいの効果があったのか分かり辛い。

 見ていた限りだと、弾道の先にはグリーンヴァイパーらしき影がちゃんとあったから、当たったように見えたのだが。


 しばらくその場で様子を見ていたが、グリーンヴァイパーらしき影は全く動かない。

 動かないのか、動けないのか、動かなくなっているのか。

 確認するために、まずはいつでも魔術を使える心構えをしながら、隠れていた茂みから出る。

 その時点で少し待機。様子を見る。

 が、反応なし。

 襲って来ることはおろか動きもしない。

 魔物なら、俺の姿を見つければ襲いかかってくると思ったのだが。

 念のため剣を抜いて、慎重に近寄る。

 腕を伸ばして、剣先が影に当たるくらいの距離まで移動し、剣で突いてみる。

 これでも反応なし。

 既に死んでいるのか?

 もう少しだけ近付いて、剣先に引っ掻けるようにして茂みから影を引っ張り出す。その皮はやはり緑だ。

 俺から少し離れた場所に動かし、即座に身構える。

 しかし、これでも反応がなかった。

 緑の蛇はぼてっと地面に落ちて動かない。


 ここまでされて動かないとなると、死んでいるのか?

 試しに【固有札】を確認してみるが、経験点は増えていない。

 俺の勘違いで魔物じゃなかったのか、それともまだ死んでいないのか。

 止めを刺すつもりで、剣で蛇の首を落とした。

 これで確実に死んだだろう。

 その上で【固有札】を確認すると、経験点が「十四点」増えている。

 逆算すると、二級の魔物を倒したことなるな。

 やはり、この蛇は魔物だった。


 俺は「これいくらになるんだろう」と期待しながらその死体を回収しようとして、まだ狩りを始めたばかりだということを思い出した。

 今日の狩りの目的は経験点だ。

 まだ全然経験点を稼いでいない。

 この死体に拘る理由も特にない。

 持ち帰ったことのない戦利品だが、この場に放置するか。

 いくらになるかは、帰ってカイザに聞くとしよう。


※注意※

2014/01/23 時点で経験点に関する部分に修正を行いました。

また、同時に第一章第二十六節を大幅に加筆修正を行いました(内容は第一章第二十六節あとがきをご参照ください)。

大変申し訳ありませんでした。


・誤

 二級の魔物なら俺一人で狩れば七点の経験点が入る計算だから、五匹も狩れれば道中浅い場所でも露払いをすると考えて四十点近く稼げるだろう。

・正

 二級の魔物なら俺一人で狩れば十四点の経験点が入る計算だから、五匹も狩れれば道中浅い場所でも露払いをすると考えて八十点近く稼げるだろう。


・誤

 その上で【固有札】を確認すると、経験点が「七点」増えている。

・正

 その上で【固有札】を確認すると、経験点が「十四点」増えている。


2014/01/24 時点で細かい描写を加筆修正しました。

話の筋は変わっていません。

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