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RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
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第二十六話


 それから俺たちは色々と話し合うことにした。


「とりあえず、クーヴィルの兄貴が一級冒険者な理由ですが」


「ちょっと待ってください」


 我が耳を疑う。

 いきなり変なことを言われた気がする。


「今、なんと?」


「えっと、一級冒険者な理由、ですが」


「そっちではなくて」


 いや、そっちも気になるが。


「今、兄貴って呼びませんでしたか?」


 年齢、いや、肉体年齢で言えばカイザの方が上のはずだ。

 だと言うのにいきなり兄貴なんて呼ばれれば、耳を疑っても仕方ないと思う。


「ああ。クーヴィルさんは恩人ですからね。それなりの呼び方でなきゃあ示しがつかないってものですよ」


 先輩と呼ぶつもりだったんですがね、なんてカイザは笑うが、俺は頭痛がする思いだ。

 年齢、はさておき、先輩から兄貴呼ばわりなんて恥ずかしいやらむず痒いやら。

 とにかく、無い。


「お願いですから勘弁してください」


 そう言って頭を下げると、カイザは妙に慌て出した。


「いや、ちょっと、分かりました、分かりましたから」


 何故か必死に止めさせようとしている感じがしたので、訝しみながら顔を上げる。


 詳しい話を聞いてみると、頭を下げる、という行為は俺が思っているより重い意味を持つらしい。

 それこそ命を賭けるようなレベルの重さのようだ。まあ、元は首を差し出すような意味だろうからな。

 日本人的な感覚で頭を下げたのが良かったのか悪かったのか。

 とりあえず、今後は安易に頭を下げない方が良いな。


「じゃあ、なんて呼びましょうか…」


 まだ話は終わってなかったらしい。


「普通に名前で呼んでくださいよ…」


 その後、呼び方で議論することになったが最終的にはそのままさん付け、ということで落ち着いた。


「それで、一級冒険者な理由というのは?」


 俺がそう聞くと、カイザは話の本題を思い出したようだ。


「冒険者は最初の登録費を払った時に二級になれるんですよ」


 と言った。

 初耳だぞ。


「二級になれば依頼を受けたりもできますんで、駆け出し卒業扱いですね」


 まあ、金だけ出してすぐ二級になる奴もいますがね。なんて続ける。


「そんな話はマスターも言ってなかったんですが。確か、獲物の内容と依頼の成果で決まるって」


「それは間違っちゃいません。ただ、最初の一回だけそういうことになってるんですよ」


 と言う。

 そこから詳しく話を聞いた限りでは、冒険者としてやっていけるかどうかのテスト扱いみたいな感じらしい。


「クーヴィルさんはそんな装備してるから、一級冒険者とは思わないですよ」


 なんて愚痴(?)られた。

 どうも俺の装備は一級冒険者としては良い物らしい。


 まあ、ストルオス銀貨三枚越えの装備を身に着けている奴が神聖銅貨五枚支払えない、とは考え難いか。


「でも、稼いだら最初に装備を整えませんか? 生き残る確率が上がりますし、狩りの効率も上がるでしょう? 登録費は一年待ってくれるそうですし」


 俺が装備を先に用意した理由を言うと。


「そりゃあそうかもですが、怪我でもして払えなくなるような連中もいるんですよ。ちゃんとした訳があれば少しは待ってくれたりもしますがね、信用はがた落ちですよ?」


 と返された。


 確かに一理ある。

 仮に足を怪我して動けなくなったりしたら、具合にもよるが狩りになんて出られないだろう。

 運悪く、もしくは実力不足でそんなことが続けば、俺みたいに戦利品を大量に持ち帰りでもしないときつくなるだろう。

 もちろん、荷を増やせば失敗する可能性は上がる。


 だからとりあえず登録費は先に払っておきましょうと促されたが、俺の今の手持ちは金額にして約神聖銅貨六枚だ。

 今登録費を支払うと懐具合が一気に冷え込む。

 なら狩りをして稼げばいいのだろうが、少なくとも今日はもう昼近い。狩りに出るには遅い時間だ。

 昨日の疲れとかが残ってるだろうと思って、元々今日は休むつもりだったからな。


 昼の鐘が鳴ったため、昼食を摂りながら相談した結果、今日はゆっくり休んで明日は一緒に狩りに出ることにした。


 部屋に戻ろうと思ったが、その前にカイザを【解析】しておこう。


 まず【能力】は【筋力:(8)三級】【耐久:(4)二級】【敏捷:(8)三級】【感覚:(7)三級】【魔力:(4)二級】に【生命力:23:23】【魔力量:12:10】。

 次に【技能】は【剣:(+6)二級】【体術:(+3)一級】【活性:一級】。

 最後に【特殊】は無い。


 ちなみに追記の内容は解析しなかった。

 ここは個人情報みたいなのを書き込まれることが多いようだったから、あまり暴き立てるのもどうかと思った、という建前で、あまり知り過ぎるとついポロッと口にしてしまいそうになると思ったからだ。

 知らなければ「なんで知ってるの?」なんて事態にならないからな。

 とはいえ戦闘に関する情報は重要だから解析させてもらったけど。


 数値を見る限り、総合等級は「三級」か。

 そこだけ見れば俺と同じなんだな。


 部屋に戻り、のんびりしながら昨日の戦闘結果を確認する。

 経験点は八十点も増えていた。

 初日の経験点収入の倍である。

 俺が直接倒した魔物はオーク三体だけだが、どういうことなのだろう。


 どうせ今日は狩りに出ないのだから、魔力を使っても大丈夫だろう。

 俺は「経験点獲得の計算式」を【解析】した。


 獲得できる経験点は討伐した魔物の等級を五倍し共に戦った者の人数で割った値から端数を除き共に戦った者の中で最も高い総合等級の値を引いた値となる。ただし獲得できる経験点の値は零未満にはならない。


 ややこしい。

 まとめると、魔物の等級の五倍を人数で割って総合等級を引く、ってことか。

 簡単に言えば、より強い敵を少ない人数で倒せば獲得経験点が多くなるな。

 しかし、共に戦った者ってどうやって判断するんだろうか。

 これも【解析】してみるか。


 共に戦った者の区別は、戦闘時において味方という相互認識の有無と戦闘の意思の有無である。


 だそうだ。

 良く分からないが、一緒に居るだけでは駄目だということか。

 高レベルの人に付いて行って寄生レベル上げは…多分無理だな。


 魔物の【能力】や【技能】は【解析】したが、魔物そのものの等級は【解析】してなかった。

 ゴブリンやビッグラビットを狩った時は獲得経験点が「四点」だったな。

 計算式から逆算すると、人数は俺一人で総合等級は三級だったから…あれ?

 計算が合わない。

 魔物の等級が一級なら「二点」のはずだしでも二級なら「七点」のはずだ


 そこまで考えて、俺は思い当った。【経験の深化】だ。

 その効果は「自身の獲得経験点倍加」である。

 問題は、どの時点で倍加しているのか。

 計算でも求められそうだが、面倒だし【解析】するか。


 倍加されるのは獲得できる経験点の算出が全て終了した数値である。


 算出が全て終了した数値。最後に残った数値ってことか。

 だとしたら、ゴブリンやビッグラビットから「四点」の経験点が入るのも頷ける。

 本来「二点」しか手に入らないが、【経験の深化】によって「四点」になっているということだな。


 ということは、ゴブリンやビッグラビットは魔物としての等級は一級か。


 そういえば、昨日は帰る途中でコボルトを倒したな。

 俺は実質的に何もしてなかったが、あれでも経験点が入ったのか?


 …過去の状況を記憶から【解析】ってできるんだろうか。


 結論から言おう、できた。


 オークとの戦闘での経験点は単独戦闘扱い、コボルトとの戦闘は二人で行った扱いらしい。

 が、具体的にそれぞれいくつの経験点が入ったかは分からなかった。


 ならばと、今度は昨日「オークを一匹倒した時に獲得した経験点」と「コボルトを一匹倒した時の経験点」を【解析】してみる。

 結果は、オークの時に二十四点、コボルトの時に四点だった。


 逆算すると、オークの等級は三級、コボルトの等級は二級ってことだな。


 これ、認識している対象なら解析できるって設定したが、思ってた以上に応用範囲が広いんじゃないだろうか。


 これは【解析】の使い方についても色々試してみないとな。


 さて、今後のことを考えよう。


 とりあえず、しばらくは実力を付けることを優先する。

 俺は【特典】のおかげで【能力】や【技能】にこそ恵まれているが、逆に言えばそれだけだ。

 この世界での常識、この世界に生きる者としての感覚、冒険者として活動する上でのノウハウ。

 そういう知識や技術を覚えるところからだな。


 次に、俺の状況だ。

 冷静に考えれば、俺は「なんで俺が異世界に来ているのか」を考えてこなかった。

 元の世界に帰る方法、は正直知ってもあまり選ぶ気になれないが、とりあえず片手間に調べよう。

 いや、これこそ【解析】するべきなんじゃないのか?


 と思ったら、できなかった。

 意識しても、【解析】が起動しなかったのだ。もちろん魔力も減ってない。


 これは、どういうことだろう。

 俺が異世界に居る理由や原因も、元の世界に帰る方法も、【解析】できなかった。

 単純に【解析】のポテンシャル不足とかか?

 それとも、他に理由があるのか?

 試しに「異世界に居る理由や原因、元の世界に帰る方法を【解析】できない理由」を【解析】しようとしてみたが、やはり【解析】できなかった。


 なぜ【解析】できないのか、いくら考えても答えが出なかったため別方向から論理展開してみる。


 まず、当たり前だが俺に世界を渡るような超能力などない。

 つまり自力でこの世界に来たと言う可能性は完全に排除だ。


 次に、偶然この世界に来てしまったという可能性。

 これは皆無とは言わないが、いわゆる天文学的確率ってやつだろう。

 現象としては「神隠し」なんて呼ばれるものになるのかもしれない。


 最後に大本命、何者かによってこの世界に呼ばれた、もしくは連れてこられた可能性。

 この世界には魔法がある訳だし、【固有札】や【勇者の加護】を見るに神が実在するらしい。

 なら、この世界の住人なら、他の世界から人を引っ張ってくる、なんてこともできるんじゃないのか?

 なら、そのメリットが呼び出した連中にあるはずだ。

 でなければ、そもそも「異世界から人を呼び出す」なんてしないだろう。大量に魔力使いそうだし。

 その具体的な理由までは分からないが、鍵は【勇者の加護】にあると思う。


 勇者の召喚。

 フィクションの世界には良くある題材だ。

 そういう場合、大体は「この世界を救ってくれ!」なんて言われる。

 仮に俺もそのパターンだとすると、誰もいない草原に一人で立っていたというのが不可解だ。

 誰かが呼び出したのなら、その場には呼び出した奴がいるはずだろう。

 その「誰か」が神とやらなら、目の前に誰も居なくても仕方がないのかもしれないが。


 他にも変な点がある。

 それは【特典】だ。

 誰が、どんな理由であれ、「勇者」として呼び出したのなら俺は初めから【勇者の加護】を持っているはずだ。

 でなければ「勇者の召喚」と言えないだろう。

 しかし、俺には【特典】という名の選択肢が与えられた。

 ポイントと、それを使って得られる各種【特典】。俺が偶然この世界に来たのなら、こんなものはないはずだ。

 ポイントの量に制限こそあったが、何を選ぶかは自由だった。

 現に俺は、今もまだ「1ポイント」使わずに残している。


 色々と辻褄が合わない気がする。

 俺はその後も、夕の鐘が鳴るまで不毛な推測に没頭していた。


※注意※

2014/01/23 時点で経験点に関する部分に大きな加筆修正を行いました。

大まかな追加・変更内容を下に箇条書きで説明しています。

大変申し訳ありませんでした。


・【経験の深化】に関する話を追加

・オーク三体にカイザと一緒に倒したコボルト二体での獲得経験点は八十点(倍加計算忘れ修正)

・ゴブリンやビッグラビットの魔物としての等級の算出考察変更

・オークやコボルトの単体ごとの獲得経験点を倍加(計算忘れ修正)



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