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RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
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第二十一節

 布鎧は俺の体に合わせるために手直しをするそうで、この場では採寸するだけとなった。

 幸いにも時間はかからないそうで、夕の鐘の前くらいに取りに来ればいいらしい。


 空いた時間で次の買い物だ。

 通りにある露店巡りに戻る。

 今度は野営のための準備、それに必要な物資の購入だ。


 森の奥に入るということは、その日の内に街へ戻ることができない可能性が高い。

 単純な距離で言えば徒歩でも行って帰れる程度なのだろうが、森の中を歩くのは街路や草原を歩くようには当然行かず、また魔物に見つからないよう身を隠しながら進む以上余計に時間がかかる。


 普段は森の浅い場所にしか入らないためほとんど好きな時に森から出て街に戻ることができていたが、奥まで入り込む以上そうはいかない。

 俺としては望んで魔物の居る森の中で夜を明かす訳ではないが、そうなる可能性は考慮しておかなければいざと言う時に後悔することになる。

 本来冒険者は数日がかりの冒険に出ることも珍しくないそうだ。そのため、野営時に必要とされる食糧の知識も必要になる。


 俺はこういう場合の冒険者の保存食と言えば、固焼きの保存性が高いパンに一摘みの塩を使ったスープ(という名のほぼお湯)、塩っ辛い干し肉にドライフルーツといったものを想像していた。

 だが、それを先輩冒険者に話した時は大笑いされてしまった。

 どうやら俺が想像していた保存食像は「とても豪華なもの」だったらしい。

 その時先輩冒険者から話を聞いて、俺はまず自分の耳を疑い、その後甘さを呪った。


 まず、不味い固焼きパン。

 これは普通らしい。腹が膨らみ持ちもいい。保存食の基本だそうだ。

 次に、玉ねぎ。

 玉ねぎ!? と大声で聞き返してしまったが、文字通りの玉ねぎである。

 玉ねぎは日持ちすると聞いたことがあるから、選択肢として上る分には納得できたが、問題は食べ方だ。

 それを野営時に調理するのかと思えば、なんとそのまま(かじ)るそうなのだ。いや、もちろん表面の皮は剥くそうだが。


 そもそも、野営時に火を使うことがまずないらしい。理由は単純で手間と危険度の問題だそうだ。

 魔術を使えないと火を起こすのも一苦労で、焚き火をしていたらそれに惹かれて魔物が寄って来る、と基本的に面倒だらけだと言う。

 鍋やらの調理道具や食器は荷物になるから野営時で料理なんてまずできないとも言われた。言われてみるとその通りだな。

 例外は護衛依頼をしている時くらいらしい。


 話が逸れたが、他ににんにく、というのもあった。

 もちろん生で丸齧りである。

 非常に安価だそうだが、オススメはしないとか。

 腹を壊す者が多く、匂いに敏感な魔物がいる場所だと酷いことになるそうだ。

 以前読んだ料理漫画に、生のにんにくは効き目が強すぎるから胃腸に悪いとか言う話をやっていたが、多分そういうことなのだろう。

 ちなみにどう酷いのか聞いたのだが、「やってみれば分かる」と笑って返された。色んな意味でやりたくないわそんなの。


 パンを除けばここまでが金のない冒険者が使う保存食で、もう少し金回りの良い人は食事のランクが少し上がる。


 まずは、魚の干物や燻製品。

 これは海に面している国だからこそだろう、安くてそこそこ質の良い物が普通に売っているそうだ。

 元日本人の俺としては焼いてご飯と一緒に食べたいが、保存食としてはそのまま齧るらしい。


 次に、木の実。

 この場合は青果ではなく、クルミやアーモンドなどのことだ。

 少量で力が付くため保存食としては人気がある一方で、人によっては何故か毒を食べたような状態になるとか。

 それってアレルギーじゃね? と思ったが適当にスルーしておいた。

 これらの食べ方は説明する必要がないだろう。基本的に変わらなかったし。


 これ以上は上等な保存食とされるらしく、その分値段も高い。


 まずはやっぱりこれ、干し肉や燻製肉。

 普通に美味しいため、保存食としての人気は高いがその分値段も張る。


 次にチーズ。

 こちらは味と腹持ちこそ良いが、重いため長期間の冒険には適さないとか。


 最後に、ドライフルーツ。

 ただしこれはほとんど趣味の範囲らしい。そこそこ軽く、意外と腹にも溜まるが冒険者の舌には甘過ぎて合わないなんてことも多い上に何より高い。


 と、様々な冒険の友があるようだが、正直玉ねぎ丸齧りは勘弁して欲しい。

 耐えられる気がしない。


 なので俺が狙っているのは固パンとナッツ類をメインに、干し肉とドライフルーツを少々といった感じだ。

 理由は味ももちろんだが、栄養面も少し気にしてみた。炭水化物、脂肪分、タンパク質、ビタミンと揃えたつもりだ。

 いや、正確じゃないだろうし色々足りないのだろうけど、流石に知識がない部分も多いから仕方ないな。


 固焼きパンは普通にパン屋で売っている。

 というか「安いパン」として売られているのがメインなようだ。

 食べ辛さを無視してこれだけ食べるとするなら、余裕で二食分くらいの量でストルオス銅貨一枚だった。


 ナッツ系は豆屋みたいな露店で買った。

 並んでいる品が豆系ばかりだったので豆屋と勝手に思っていたが、実際は何か違う名前なのかもしれない。

 とりあえず見覚えのあるものとして、クルミ・アーモンド・ピスタチオを選んだ。ピスタチオがあるのには驚いたが、ここらでは一般的らしい。

 ただ、今回は保存食目的だったから買わなかったが、栗があった。基本は焼いて割って食べるそうだ。要は焼き栗だな。

 クルミとピスタチオは外の殻が付いたままで売っていた。野営中に割って食べるのはきつい気がするから、宿でちまちま割るかな。

 ストルオス銅貨五枚分で買ったらそこそこの量だった。ただ、満腹度で言えば一食分くらいの量だから確かに高いか。


 干し肉は肉屋かな、と思って肉屋を探す。

 見つけた半露店の肉屋にはパッと見だと生肉が多く並んでいたが、良く見ると干し肉や燻製肉も売られていた。

 ただ、何の肉なのかは見た目じゃ分からない。聞いてみたい気もするが、聞かない方がいい気もする。

 こ、今回は見逃してやろう。知らなければ美味しい肉、だろう。

 買ったのは合わせて一握り程度の量だが、ストルオス銅貨四枚だった。

 やっぱり高いな。


 最後はドライフルーツか。乾物屋でもあるのかな。

 通りを歩いていると果物を売っている店があったので質問してみたのだが、ドライフルーツ屋はドライフルーツ屋で存在するらしい。

 なんか無駄にややこしいな。

 店の場所を聞いて移動する。

 ドライフルーツ屋はこじんまりとした店だったが、儲かっているのか店の人の服装の質は良かった。

 並んでいるドライフルーツの多くはブドウ…レーズンだった。

 レーズン押しなのか? 特産とかなのか?

 分からんが、俺は嫌いじゃないし問題はないだろう。

 他にも林檎やオレンジのドライフルーツなどがあった。

 こちらもレーズンをメインに全部で一握り程度の量を買おうと思ったのだが、ストルオス銅貨二十枚と言われた。高いわ!

 これは流石に言い値で買う気にならなかった。

 値切り交渉もしてみたのだが、最終的にはストルオス銅貨十七枚で買った。

 やっぱり値切り交渉は苦手な気がするし面倒な感じが否めない…


 買い物が終わる頃には昼の鐘を過ぎていた。

 適当に串焼き肉を食べて小腹を満たし、宿へ戻る。

 どうせ今日は狩りに出ないのだから、夕方までのんびり休もう。


 そうして部屋でごろごろして時間を潰した後、防具屋まで布鎧を取りに行く。

 既に空も赤く染まってきているので、仮にまだ終わっていなくても少し待てばいいだろうという考えだ。

 まあ、杞憂だったんだが。

 防具商人さんは俺を確認すると、やはり気障な笑顔で対応してくれた。


「お待ちしておりました。手直しは終わっていますのでどうぞお納めください」


 そう言って、確かに俺が選んだ黒い布鎧を渡される。

 手直しをしたと言っていたが、特に何かが変わったようにも見えない。

 まあ、服のサイズが多少違っても同じものに見えるような感じだろう。


 防具屋にある広めの着替えスペースで試しに来てみて、着心地を確認する。

 が、正直どうこう言えるような違いが分からん。

 まあ、問題はないようだから大丈夫だろう。

 姿見なんてないが、自分で見た限りだと多少ごつい服といった程度だ。


 一応礼儀として防具商人さんにお礼を言って店を後にした。


 これで今日の予定は終了だ。

 一日で一気に散財したが、予定している収入を考えれば必要経費だろう。今後も使うものだし。

 多少魔力も残ってるから、明日は普段より多めの魔力で動けるだろう。

 全快の魔力で挑むためにもう一日時間を置くことも考えたのだが、やはり精神的な余裕の問題で見送った。


 その日の夜は買ったばかりの剣や布鎧を眺めてにやにやしながら眠ったのだった。


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