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RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
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第十九節


 考えた末、俺は決断した。


 大金を稼ぐ手段はある。が、リスクを考え避けていた方法。

 それは、魔石創りだ。


 一級の魔石を創るのにどれだけの魔力が必要になるのか分からないが、それ一つでストルオス金貨一枚、ストルオス銀貨四枚で売れるのだ。

 俺の五日分の稼ぎだな。


 仮に量産できれば一財産になるのだろうが、そんなことをしたら当然怪しまれる。

 何故なら本来は「魔石は希少で強力な変異種の魔物からしか手に入らない」ものだからだ。

 だというのに、一級の魔物ばかり狩っている冒険者が魔石を大量に売り払うなんて明らかに異常だ。

 常識が邪魔をして「創った」とは思われないかもしれないが、聡い人は気付くかもしれない。

 そうでなくとも「盗んだのではないか」と思われるだろう。


 つまり下手をしたらかなり面倒なことになる。

 しかし金が欲しいので魔石は売りたい。


 今日は既に魔力がないため、明日から計画を始動することにする。

 それまでは我慢、だ。うぅ…


 一晩経って朝。

 今日一日は狩りに出ず計画に集中する。

 魔石創りには魔力が要るからな。


 朝食を摂ったあとは、部屋に戻って【解析】を行う。

 その結論をまとめると、以下のようになる。


 魔石は結晶化している魔力の量で質が決まる。

 魔石の等級は【能力】と同じ法則で決まる。実数値の部分が魔力量に相当するらしい。魔力量「4」なら二級、とかだ。

 魔力を創る際に消費する「生命力」は、作り出す魔石と同値。二級を創るときは「2」の生命力を使うってことだな。

 ちなみに、「魔石を創る魔術」そのものに必要な魔力量は「3」だった。はっきり言ってかなり少ない。


 とりあえず、魔力があれば質の良い(等級の高い)魔石が創れることは確認できた。

 最大魔力まで魔力を回復させて作れば、十級魔石なんかも創れるかもしれない。

 また、魔石を創った際の生命力消費で命の危機、なんてことにはならなそうだ。

 生命力の消費量は意外に少なかった。


 さて、あとは実際に魔石を創ってみて感覚を掴むだけだ。


 俺はテーブルの上に手をかざし、イメージする。

 一つの原子に複数の原子が寄り集まり、分子になる。そんなイメージだ。

 デフォルメされた球体がくっ付いて分子を表現している絵があるが、要はあの絵のイメージで生命力と魔力を表現し、生命力を中心として魔力が集まって行く。

 そんな想像で魔術を行使した。


 が、ここで少し違和感を感じた。

 普段なら特に何もなく魔術が発動するのだが、今回はいつもと違い魔力が少し荒れた感じがした。

 こう、穏やかな海を船で進んでたと思ったら波が強くなってきて操舵し辛いみたいな感じだ。


 そういえば、魔術って魔力の制御が必要だったはずだ。

 今まで気にしたこともなかったのだが、ある程度難しい魔術だとやっぱり意識して制御しなきゃいけなくなるのか。

 今回は特に何の問題もなかったが、場合によっては失敗とかするんだろうな。


 魔術が成り、コトン、と軽い音を立ててテーブルの上に転がり出る。

 それは鮮やかな赤色で、中々に綺麗な石だ。


 ぬか喜びしてはいけない、と感情を抑えながら【解析】で確認する。


 それは確かに、三級の魔石だった。


 やった! 成功した! 等級も各消費量も解析通り!


 大声で喝采を上げる訳にはいかないので、静かに、しかし激しくガッツポーズを繰り返す。

 ここで騒いだら色々迷惑になるだけじゃない。

 場合によってはこの計画の裏、つまり俺が魔石を創れることがバレるかもしれない。

 しばらく興奮冷めやらぬまま、一人静かにはしゃいでいた。


 さて、次に試したかったことを少しやってみることにする。

 以前の解析で「魔石は傷や欠けに強い」というものがあったのが気になっていたのだ。


 おもむろにナイフを取り出し、まずは軽く先端で魔石を引っ掻いてみる。

 キン、なんて軽い音がした。

 魔石を見分してみるが、傷らしきものは見当たらない。


 今度は少し強めに、表面を削り取るようにナイフを立てる。

 結果は、変化なし。

 文字通り傷一つない。


 仮にも金属製の刃物で削るように引っ掻いても傷が付かない。

 この性質は何かに利用できるかもな。


 さて、知的好奇心も満たされたところで、次の手を打つ。


 このまま魔石を売ったら「それどこで手に入れた」って話になってしまう。

 その対策のため、「変異種を狩って手に入れた」風にする必要があるのだ。


 そして、そのために準備としてするべきことがある。


 俺は一階に下りてカウンターに向かった。

 マスターが他の冒険者と話をしていないことを確認すると、その前に陣取る。


「マスター、相談があるのですが」


 そう切り出すと、マスターは無言で話を促す。

 相手が不快にならないように顎で返事をするって、無駄に高等技術な気がする。

 ともあれ、話を聞いてくれるようだ。


「試しに今よりもう少しだけ森の奥に行ってみようと思うのですが、先に装備を整えようと思いましてその相談と、奥で出てくる魔物の話を聞きたいのです」


 と話したら、マスターは少し悩むように俺を見つめたあと、口を開いた。


「まあいいだろう。お前さんなら欲をかかなければ生きて帰れるだろうからな」


 酷い言われようだ。

 が、俺としてはぐうの音も出ない。

 俺が冒険者としての活動期間は短いが、それでも一部の冒険者や商人、門番の衛兵から顔を覚えられている。

 見た目も理由の一つだろうが、今回に関しては別で、俺が毎回大量の戦利品を持ち帰って来ることが原因だ。


 普通、冒険者は必要以上の荷物を持たない。

 いつ戦闘になるか分からないような状況で、重い物を背負っていたり両手に物を持っていたりするのがどれだけ危険なことか。

 走って逃げるのも遅くなる、隠れるのにも邪魔になる、機敏な動きなんて当然できないし、応戦しようにも武器が持てない。

 問題しかない。


 これが原因で命を落とす駆け出し冒険者はもはや様式美のように頻発しているらしい。

 というか、俺はこれで早々に死ぬだろうと思われていたそうだ。

 そりゃあ、冒険者になったばかりのやつが毎日狩りに出て文字通り持てる限りの戦利品を持って帰っている訳だから、そう思われていても仕方がないのだろうが。


 ただし、連日そんな状態で怪我もなく街に帰ってくるので「そこそこやるらしい」程度の認識を持って貰えたようだ。


「だが、お前さん武器は…」


「念のためですよ」


 と言っておく。

 マスターは俺が【魔術】技能持ちだと知っているから、魔術で戦うのに武器を持つのか? と聞きたかったのだろう。

 実際には【剣】も【体術】もあるんだがな。


「そうか。お前さんがそれでいいなら構わんが。それで、どんなのがいいんだ?」


 なんかマスター乗り気じゃないな。

 答えてくれるならいいけど。


「やっぱり武器は剣がいいですね。防具は動きやすさ重視です。あ、やっぱり金属の防具とかだと音とかしますか?」


「ああ、そうだな。大体は音が出る」


「私は身を隠しながら狩りをしているので、音が出るのは困りますね」


「なら布か革だろう。モノは自分の目で選ぶんだな」


 …あれ、終わりか。

 もっとこう、あんなのが良いこんなのが良いと教えてくれるものだと思っていたのだが、そんなものなのだろうか。

 まあ、自分で色々見て回るのも楽しいだろうからいいか。


 ただし、これだけは聞いておこう。


「お勧めの武具屋とかありますか?」


 マスターは少し悩んだ後、数件の店を教えてくれた。

 後で行こう。


「で、魔物はどんなのが出るんですか?」


「そうさな…あの森で一番やっかいなのはオークだな。連中は力が強い上に頑丈だ。大体三級の冒険者より少し弱いくらいな上に群れることが多い。お前さん程度なら簡単に殺されるだろう」


 なんか、微妙な感じの説明だな。

 もっとこう、どの能力は何級で~なんて説明があるんだと思ってた。


 そしてオークか。ファンタジーの王道だな。


「どんな外見なんです?」


「体の色はゴブリンと同じで緑だ。豚面で人間の男くらいの身長だ。腹はかなり出てるが、油断はしない方がいい。どこから持ってきてるのか知らんが、手斧を持ってるのも特徴だ」


 ふむふむ。

 緑で豚面のデブか。

 良くある感じだし、見たらすぐ分かるだろう。


 ただ、それが群れるのか。

 ゴブリンは範囲攻撃で一発なんだが、オークは…耐えるだろうな。頑丈って言ってたし。


「あとは、グリーンヴァイパーにも気を付けるべきだな。二級冒険者くらいならまともにやれれば問題ないが、奴らは茂みや木の上なんかに隠れて奇襲をしかけてくる。森の中で気を抜いた奴はこいつの牙の毒で死ぬことになる」


 グリーンヴァイパー。緑の毒蛇、か。


「どれくらいの大きさなんです?」


「大体これくらいだ」


 と言って、マスターは両手を横に広げる。

 マスターの体格は(俺の感覚で)普通程度だが、両腕をほとんど伸ばすようにして横に広げているためグリーンヴァイパーは結構大きいことになる。

 これ、蛇嫌いな人とか鳥肌ものじゃないか。

 俺はとりあえず大丈夫だが。


 他にも、俺の靴の材料である人型の犬みたいな外見らしいコボルト、皮と頭が異様に硬いハードボアという魔物がいるそうだ。


 俺はマスターにお礼を言って宿を出る。

 目的はもちろん、武具の調達だ。


 なんだかんだで頑張って稼いだおかげで手持ちには余裕がある。

 流石にこれで武器一つ買えないなんてことはないだろう。


 オススメされた店の一つに足を向ける。

 まずは武器屋だ。

 やっぱり武器は憧れだからな。


 武器屋は半露店で、表から色々な武器が並んでいるのが見える。

 その中には当然剣もあった。

 さて、どんな剣があるんだろうか。


「いらっしゃいませ、どんなご用でしょうか」


 店に近付いた時点で商人さんが話しかけてきた。

 まあ、他に客は見当たらなかったし、当然か。


「武器を買おうと思い、栄光の剣亭のマスターに紹介されてきました」


 日本人な俺はそこそこ愛想良く返す。

 これくらいは普通だよな。


「なるほど、武器がご入り用なのですね。当店では様々な武器を取り揃えておりますよ。どのような武器をお求めでしょうか?」


 武器商人さんは笑顔で対応してくれる。

 笑顔が商売の基本なのはここでも同じなのか。


「剣が欲しいのですが、どのようなものがありますかね」


 そう言いながら、剣が並んでいる区画を見る。


「剣ですね、当店では軽く振りやすい短剣から素晴らしい威力を発揮する大剣まで様々な剣が揃っておりますよ」


 武器商人さんと品選びを始める。

 あまり高いものは買えないが、折角だから本気で選ぶことにしよう。


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