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RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
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第一節

 道沿いに歩くと決めて、次に決めるべきは「どちらに進むのか」だ。

 ここは本来の出発点ではない。どう考えても道の途中である。この道沿いに進めば村やら町には辿り着くだろうが、そこまでの距離はまるで分からない。

 もしかしたらここは町のすぐ近くかもしれない。しかしそうなると進むべき方向を間違えた途端に町から離れることになる。

 結局は賭けだ。指針も何もない。

 とりあえず歩き始めることにする。


 その時にふと気付いた。今の自分は異様なほどに質素な服を着ていた。

 上下共に薄茶色く肌触りの悪い布の服だ。当然俺はこんなもの知らない。

 加えて、自分の体が「違う」ように思う。

 例えば、見知った手にあるはずのホクロがない。妙に肌の張りがいい。肌も白い。どうやら髪は黒いようだ。

 異世界に来た時点で服が無かったり違う体になったりすることは(フィクションの世界じゃ)よくあることだが、実際に体験してみると少々気味が悪い。

 とりあえず不都合はないようなのでスルーしよう。素っ裸とかじゃなくて本当によかった。

 体の確認を終え、再び歩み出す。


 まずは何をおいても【特殊創造】の考察だ。なにせこれこそがチートなのだから。【自動翻訳】の取得を前提とするならば、最大で五点までは創り出した特殊能力に割けるわけだ。

 個人的には【勇者の加護】の効果にも興味があるが、勇者そのものにはあまり興味がない。英雄願望が無い訳ではないが、勇者なんてのは担ぎ上げられ利用される存在であるという認識が強いからだ。

 仮に【勇者の加護】なんて特殊能力を持っていると知れたらどうなるか、どう考えても面倒なことになる。いや、チートな能力を持っている時点で色々と面倒なことは起こるだろうが、間違いなく勇者の肩書きの影響力はその比ではない。ってなわけで実態が分かるまで【勇者の加護】はパスで。


 さてどんな特殊能力にするか。

 直接攻撃系は派手だが、おそらく魔法などで十分代用できるだろう。どんな技能などが存在するかは分からないが、特殊能力と言うからには「それでしかできない能力」にすべきだろう。

 他に惹かれるのは、やっぱり魔眼だな。日本に居たころはただのイタい要素として有名だが、この世界でなら当然アリだろう。有名どころだと「石化」とか「魅了」、「先見」や「遠見」って辺りか。


 非常に夢が広がるが、一つ忘れてはいけない。


 一応ここは現実なのだ。【能力】やら【技能】やら魔法やらがあるのだから魔物もいるに違いない(勝手な予想だが)。

 そしてこの世界で「生きて」いくしかない以上、ちゃんと「便利」で「使い勝手の良い」能力を選ぶべきだ。


 元々の趣味知識を活かして考えるに、「鑑定」系や「空間魔法」系がいいのではないだろうか。

 前者の利点は、この異世界で初めて見るであろうものは勿論、知識としては知っていても自分じゃ良く分からないものも分かるということだ。具体的に金属で例えると、この世界に在るのか知らないが「オリハルコン」やら「ミスリル」なんてものは当然見たことがないし知らないし、「青銅」とか「真鍮」とか言われても一般人だった俺には良く分からない。この世界にはステータス的なものがあるみたいだし、「鑑定」系の有用性は高いだろう。

 後者の利点は、移動が楽になる上場合によっては攻撃や防御にも転用できる点だ。「転移」で移動、「空間断絶」で絶対防御に絶対切断とか基本だ。問題は「空間魔法」なんて広い範囲だと有用かつ強力過ぎて特典ポイントが大量に必要になるかもしれないということだ。そう考えれば「転移」とか「空間接続」みたいな限定性を付けた方が必要なポイントは少なくなるだろう。


 いや、転移なら魔法でできるかな? とか、アイテムボックスやらストレージ系は? とか考えていたが、どれも決定打に欠ける。

 創れる特殊能力は一つだけっていうのが難儀なところだと思いつつ、試しに「空間を操る能力」は創れるのかどうかと【特典:特殊創造】を意識しながら考えてみた。

 結果は「可能」。どれだけポイントが必要になるかとか、詳細な情報は一切分からないが「空間を操る能力」を創るのは「可能」だと「確信」できた。

 では創ることができない能力はあるのかと思い、魔眼やら魔法やら色々試した結果、どんな無茶な要求をしても「可能」という答えが返ってきた。


 文字通り「どんな特殊能力でも創れる」と知ってテンションが上がりかけたときに、ふと気付いた。

 今のところ自分が考えた特殊能力には全てメリットしかない。「空間魔法」を「転移」や「空間接続」に制限したところで、メリットしかない特殊能力であることに違いはない。

 今一度【特典】を確認する。


 【特典:特殊創造】とは任意に特殊能力を創造する特典である。ただし、その効果に応じて必要となるポイントが決定する。


 この説明がこの【特典】の全てだとしたら、自分が創造した特殊能力において自動的に決まるのは「習得するのに必要なポイント」だけだということだ。

 仮に「既知の空間に転移する特殊能力」とだけ設定し創造した場合、既知であれば転移できる能力になるのだろう。ゲーム的に言えばリソースを消費することなく魔法が使えることに等しい。

 それははっきり言って強すぎないか?

 俺は(なぜか)既に技能【魔術】を習得している。その技能が教えてくれる感覚によると、魔法を使うためには魔力を使用(消費)するのだ。

 ゲームで言えば魔法を使用するには普通、マジックポイントなりスキルポイントなり消耗品なりを消費することになる。それは、システムやバランスにもよるが、魔法が強力であるが故の制限と言える。

 まあ、あくまでゲームの話で現実とは違うだろう。しかし【能力】や【技能】、【魔術】などから得られた情報を元に考えるに、ここの法則(システム)は極めてゲームチックだ。


 つまり【特殊創造】で創った特殊能力の習得に必要なポイントを決める要素が「効果」であるならば、意図的に制限やデメリットも混ぜることで必要ポイントを減らせるのではないか?

 一度しか創造できないが故に検証できないのが残念だが、的外れではないだろうと思う。

 石化の魔眼を創るとしてメリットを「対象を石にする」と設定し、「対象を直接見ていなければならない」「石化は手足の先から徐々に進行する」「対象が見えなくなった時点で石化の進行は止まる」などの制限に加え「発動に魔力を使用する」「発動すると一時的に目が見えなくなる」などのデメリットを設定する。

 制限やデメリットを設定しなかった石化の魔眼は「どんな形であれ対象を見た時点で石にする」特殊能力になるのだろうが、そんな強すぎる特殊能力を習得するにはどれだけポイントが要るのか。


 …あれ、もし「見たものを石にする」だと自分の手足を見ても石になるのか?

 怖っ!

 なんか「触れたものを黄金に変える力」を貰った人が妻か子供かに触って黄金になっちゃった悲しいみたいな話を聞いた覚えがある。その時は欲張ったことするからだと内心バカにしてたけど、これは笑えない。

 特殊能力創りは慎重にいこう。






 そうしてどんな特殊能力を創るべきかあれこれ考えた結果、【魔術】や他の技能で何が出来るのかを知り「出来ないこと」にしようという、ある意味当たり前な結論に至った。


 まずはどんな技能があるのか確認しよう。経験点を使えば技能を習得できるそうだから、経験点五百点を意識して新しい技能を習得したいと考える。

 しかし結果は無反応。なんの情報も浮かんでこない。

 正直一番判断に困る結果だ。経験点が足りないのか、具体的に技能を指定しないといけないのか、技能の習得には条件があるのか、他になにか制限があるのか。

 確認しようにも手段がない。仕方がないからとりあえず放置で。

 となると次はアレだろう。


 さあ、魔法の検証だ。

 まずはおさらいといこう。【魔術】によって可能になったことは魔法の行使だ。方法としては「魔法の内容を想像」して「魔法の式」を構築、その後魔法の式に魔力を流し込むことで魔法となった魔力を制御する。

 ただし、魔法の内容が強力であるほど必要な魔力も多くなり、必要な魔力が多いほど制御は困難であるようだ。魔法の強さというのが具体的に良く分からなかったが、恐らく物理法則から見た異常性だろうと予想する。

 魔法の制御に失敗した場合、魔法の効果は現れず使用された魔力は霧散する。つまり魔力が浪費される。現状どれくらいの魔力があるのか、また魔力が尽きたらどうなるのか分からないため、浪費は避けたい。


 まずは水を作り出してみよう。しばらく歩いていたからか、喉が渇いてきていた。

 初めての魔法である。集中するために適当な場所に座り、左右の手の平を上に向けて並べ合わせる。掬い上げる形を作り水を溜める用意をして、魔法を行使してみる。

 水をイメージする。水道の蛇口から水が溢れ、手の平へ落ちる。そんなイメージを少しの魔力で以て魔法と成した。

 魔力を操る感覚は奇妙なものだった。体の内側に燻っていた熱を解放するような、血流を操るような感覚だ。

 すると中空から水が現れ、手の平に落ちる。可能な限り少ない量の魔力しか使わなかったはずなのに、水は余裕で手の平から溢れた。

 その感触に感動しつつ、綺麗な水を口に含む。冷たくはないし味もない。冷水をイメージしなかったことと、魔法で作ったがために蒸留水と変わらないものができたのだろう。喉の渇きを癒す上ではとりあえず問題なさそうだ。

 これでお腹でも壊したら笑えないことになるが。


 とりあえず魔法は成功した。魔力が減るというのは、量が減るというよりは熱が冷めるような感覚に近かった。感覚的だが、まだ魔力はあるようだ。同じ魔法をあと十回はいけるだろう。

 他の魔法でも実験してみよう。水の次は火かな。

 そう思い左手の平を空に向けるようにして、先ほどの倍の魔力を使いその上に火を灯すイメージで魔法を行使する。

 結果は劇的だった。煌々と輝くバスケットボール大の火の玉が現れたのだ。正直かなり熱かったが、数秒の内に消えてしまった上延焼もしなかったので喉元過ぎればなんとやらだ。

 火力や熱量などを全く意識せず蝋燭に火を灯すつもりで魔法を使った。蝋燭の火をイメージしたからか、火の玉は普通の火に比べて明るい光を放っていたように感じた。これは俺自身が蝋燭の火に明かりとしての役割を見ていたからだろうか。


 試してみて思ったが、魔法は万能だ。魔力とそれを制御する力、魔法を形作るイメージ。材料さえ揃えば物理法則なんのその。

 多分【能力】の【魔力】を高めれば魔力の量は増えるだろうし、【魔術】を高めれば魔力を制御する力も高まるだろう。後は魔法のイメージだが、発達した科学文明の中で育ち漫画やアニメなどのサブカルチャーを愛した俺の想像(妄想)力を以てすれば可能性は無限大だ。

 とはいえ、ここは異世界。俺は技術者でもなければ研究者でもない。自前の頭に蓄えてる知識なんてたかが知れてる上にインターネットもない。加えてこの世界特有の法則や物質もあるだろう。

 知識こそが魔法の糧となるとするなら、それを得るための特殊能力にすべきか?


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