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RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
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第十八節


 さて、まだ夕の鐘まで時間もあるため、事後処理と行こう。

 その為にもまずは身支度だ。


 森の中に居た時は、茂みに隠れるためしゃがんだり伏せたりしたので、服はそこそこ汚れている。

 街に入る前にある程度土を落としたりはしたが、汚れて見えることに変わりはない。

 とりあえずは手拭いで体を拭いて着替え、あとは汚れた服の洗濯か。


 と思ったのだが、その前に石で作った桶を洗わないといけない。

 面倒だ。汚れも魔術でどうにかできないだろうか。


 結論から言おう。できた。

 石の桶の正面に付いている汚れを、一か所に集めて固めたものを燃やして消すイメージという、半ば乱暴なイメージで魔術を使ったが、意外にも成功したのだ。

 しかし魔力を「4」も消費した。効率はあまり良くないが、便利である。


 …あれ、この魔法を服や俺の体に直接使った方が良かったんじゃないか?

 うわあ、失敗した。

 しかも残りの魔力は「4」である。

 お湯を出して消したら終わりだ。

 今日の夜の分もあるし、魔力が「0」のまま動き回るのは不安だ。


 仕方ないから、一階に下りてお湯の入った桶を頼んだ。

 そのお湯で体を拭き、服を洗う。

 面倒だ。

 こっちには洗濯機なんて上等なものは当然存在しない。

 今朝、井戸に水を汲みに行った時には、井戸の側で木桶に水を張り素手で洗濯していた人がそこそこ居たのだ。

 だから、今俺が自分の服を手洗いしているのも当然のことなのだ。

 そう自分に言い聞かせながら洗濯を終わらせる。

 魔力さえあれば楽できるだろうに…


 さて、身支度は済んだ。

 次は買い物だ。

 木桶を廊下に出して置き、宿を出る前に回収して貰うよう少年に言っておく。


 外に出て、露店巡りに表通りへ。


 目当ての品は大きな背負い袋と武器手入れ用の布である。

 他に剣なんかも欲しいのだが、多分金が足りないだろうから見送る。

 いや、そもそも値段確認してないんだが。


 そう思っていたのに、俺の手には肉の串焼きが二本握られていた。

 今日は色々動いたからか、腹が減っていたのだ。

 稼いだのだし、これくらいは大丈夫だろう。


 適当な露店で手拭いと同じような布に、麦の祝福亭で買ったよりも大きな背負い袋を購入。二つ合わせて神聖銅貨一枚だった。

 ストルオス銅貨百枚分か、高いな。

 袋は背負えるように帯が付いているものを選んだが、リュックのように両肩で背負う形のものは無かった。

 そもそもの需要が「いざとなればすぐに手放すことができるもの」であるため、売っていたのはどれも帯が一本で片方の肩だけで背負う形のものだったのだ。

 要所を大兎の革で補強してあるため、ただの布袋よりも丈夫で旅人や行商人、冒険者にオススメだと商人は言っていた。

 やっぱり行商人とか居るんだな。


 他に何か必要なものはないかと思いながら通りをぶらつく。


 保存食、は街から離れる時でいい。

 今は近くの森で経験を積むことにする。


 防具、も今のところ必要ない。

 そもそも今のやり方なら、防具が必要になる時点でほとんど失敗なんだ。

 近接戦闘を考慮に入れるまでは今のままでいいだろう。身軽だし。


 武器、は凄く興味があるが必要という訳でもない。

 潤沢な資金がある、という訳でもないのだからあまり無駄遣いは出来ない。

 いつか絶対手に入れるが。


 道具、は思い浮かばない。

 あえて言えばアイテムストレージ的なものだが、そもそもそんなもの無いようだし、仮にあっても馬鹿高い気がする。


 色々考えたが、とりあえず今回は見送る。

 欲しい物はいくらでもあるが、今は我慢だ。


 宿に帰って部屋に戻り、ナイフの手入れを…しようとして、失策に気付いた。


 にわか知識だが、こういうものは血脂が付いていると切れ味が落ちるため、最低でもそれを拭きとるとかなんとか聞いた気がする。

 なので布を濡らして拭き取ろうと思い、体を拭くのとは別の布を用意したのだ。


 が、俺は既に一度お湯を借り、返してしまった。

 なぜ返したんだ。まだ使えたじゃないか。 


 地味に落ち込む。

 不貞寝(ふてね)するようにベッドの上で夕の鐘まで休むことにした。

 横になると、疲労感を強く感じる。

 流石に疲れたようだ。


 その後、夕の鐘が聞こえてからはストルオス銅貨五枚と少し大目の食事を摂って必要なことを済ませたら早々に眠った。




 翌、朝。

 ストルオス銅貨三枚の朝食をゆっくり食べながら今後のことを考える。


 昨日の稼ぎは神聖銅貨五枚だった。ストルオス銅貨で五百枚分である。

 戦利品を自重するとしたら今後の稼ぎはもう少し下がるが、食費や宿泊費も考慮して一日神聖銅貨三枚と考えたらかなり儲かる計算だ。

 しばらくはこのまま堅実に稼ぐか。


 対して、経験点は四十点取得した。一日に稼ぐ量としてはどうなのだろう。

 多分、多いんだろうな。

 何せ十日分稼げば一級の技能を二つ二級にできるくらいだ。


 となると、やることは一つだろう。

 金稼ぎと経験点稼ぎだ。

 体感だが、疲労が残っているようには感じない。

 念のため【固有札】を確認するが、特に異常は見当たらない。


 俺はしばらく真面目に働く(?)ことにした。

 もともとレベル上げ作業は嫌いじゃない。




 そうしてこつこつ稼ごうと、朝起きて狩りに出て昼過ぎに帰り獲物を売って食べたら寝る、という生活を五日繰り返した。

 今はその五日目の夜である。


 この五日間で、俺は神聖銅貨を二十枚と経験点を百六十二点稼いだ。


 ストルオス銀貨にして四枚分である。

 宿代として十日分先払いしたのと食費で、合計神聖銅貨一枚とストルオス銅貨十枚使ったが、それを差し引いても十分な稼ぎだ。


 経験点についてはまだ溜めている。

 【鑑定】を得るには足りないし、【能力】を上げていては【鑑定】が遠のく。

 逆もまた然りだ。


 余力があったので、出会った魔物を適度に【解析】してみたところ、リーフクロウ・ビッグラビット・ゴブリンは全て「総合等級」が一級だった。

 その【能力】も全て一級と、かなり弱かった。ただ、リーフクロウは【隠密】、ビッグラビットは【体術】の技能をそれぞれ一級で持っていた。

 魔物も技能を持っているのか、と驚いたせいで隠れていたのがバレた時は焦ったな。

 ちなみにこれら以外の魔物には出会っていない。森の奥に入らないようにして意図的に避けているというのが正しいが、あれから他の種類の魔物は見なかった。


 他にも先輩冒険者さんから話を聞けたり(お酒奢ると凄くご機嫌に話してくれる)、門にいる衛兵さんに顔を覚えられたりして(よう黒いの、とか言われてる)この世界の常識なんかも着々と集まっている。


 そんなこんなで、金・経験点・情報収集共に順調だ。


 しかし今、俺は一つの問題に直面している。

 こんな簡単な問題に、なぜ今まで気が付かなかったのか。

 そう思ってしまうが意味はない。


 あれこれ解決法を考えた。

 一応、方法はある。

 が、それを選ぶのにも問題がある。

 そんな葛藤が精神的にも肉体的にも追いつめられている俺を尚苦しめる。

 その問題とは、至極単純でいて、それ故に如何(いかん)ともし(がた)いもの。

 (すなわ)ち。


 性欲を持て余すのだ。


 格好付けてはいるが、酷い内容である。

 だが切実な問題だ。


 最近は魔物を狩るのも、魔物を解体するのも慣れてきたのだが、逆にそのせいで精神的にも余裕が出てきて、戦闘の興奮が中々収まらないことがあるのだ。

 それが尾を引き、街に戻ると性欲として感じてしまう。

 一人で処理をする、という発想はあるのだが、方法がない。


 この世界には写真や動画など当然存在しない。

 似顔絵の類は存在するのだろうが、値が張るだろうし保存する手段もない。宿暮らしだし。

 また、性欲を処理した後の処理をする方法も思い付かない。ティッシュなんて上等なものなどない。


 あれこれ考えているのだが、方法があることは知っている。

 その一つは、娼婦の利用だ。


 娼婦には大きく二つの種類があるようで、娼館に所属している娼婦か否かだそうだ。


 一応、決まりでは許可を得た娼館の中でしか春を売るのも買うのもしてはいけないそうだが、個人で春を売っている流れの娼婦も普通にいて、黙認されているらしい。

 ただ、流れの娼婦には盗みや詐欺を行う者もいる。そもそも非正規なので全て自己責任なのだが。


 対して娼館は、一定以上のサービスと安全性から娼婦を利用する上では当然オススメだが、その分高い。

 具体的な額は知らないが。


 金次第では手軽(?)な娼婦の利用だが、俺はこれについて一つ疑問を持っている。

 俺はこれでも元日本人だ。

 だから、性病の危険性を知っている。

 下手をしたら命の危機。

 そう考えてしまい、どうしても娼婦を利用しようと思えないのだ。


 当然だが、流石に犯罪手段に出る訳にもいかない。

 通常の恋愛的な感じでどうにかするという発想はない。ないのだ。


 となると、もう一つの方法しかない。

 それは、奴隷だ。


 この世界にも奴隷制度がある。

 しかも、かなりシビアだった。


 まず、この世界の奴隷は「所有者」の「所有物」とされる。

 つまり、そもそも人として扱われないのだ。

 そのため生殺与奪権他、文字通り全て「所有者」の「物」となるのだ。

 また、この世界の奴隷は魔術によって縛られていて「所有者」に逆らうことができない。

 逆らった時点で全身を苦痛が襲う上、逆らい続けると命を落とすらしい。


 そんな奴隷だが、用途は色々のようだ。

 単純な労働力、教育や躾けの練習台、愛玩動物、戦闘の駒や盾、そして性欲処理。


 俺は当然性奴隷希望なのだが、完全にただの性奴隷だと問題がある。

 性病に関しては処女を買えばいいのだが、俺は冒険者としていずれ色んな場所を見て回るためにも旅をする予定だ。

 その中で魔物と戦闘することがあるだろうが、奴隷を守りながら戦う自信がない。

 故に、最低でも自分の身を自分で守れるくらいの戦闘力が奴隷にも要ると思うのだ。


 あ、もちろん奴隷は美人の女性または女の子限定で。

 グラマーな子やスレンダーな子、犬耳とか猫耳とか狐耳とかエルフ耳とか…

 まあ、当然だよね。


 とまあ、最終的な解決策なんて一つなのだが、それを実行するためには莫大な金が要る。

 美人で強い処女の奴隷。安く買えるはずがない。


 金だ。

 金が要る。

 金を稼がなければ。


 しかし、今のまま「一級」の魔物を狩り続けていても、大金なんて入ってこないだろう。


 選択を迫られていた。


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