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RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
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第十節


 朝、鐘の音で目を覚ます。

 この鐘は便利だが五月蠅(うるさ)いな。長く寝たかったり二度寝したい時は完全に邪魔だ。

 割と眠かったので鐘が無駄に恨めしい。

 とはいえ寝過ごす訳にもいかないため起床する。

 眠い。


 朝食を食べ終える頃には目も覚めた。あ、当然着替えてから部屋を出た。

 まずは魔力量を確認する。【魔力量:20:12】と確認できた。計算通りだな。

 これで一日に十二回の解析が可能になった。

 そういえば、と試しに総合等級を確認してみる。前に解析した時に「総合等級は最も高い等級三つを平均した値に等しい。ただし、端数は除く」とあったので、【魔力】が三級になり平均値が二を超えた今、総合等級がどうなっているのか確認しようと思ったのだ。

 結果は二級のまま。端数はまだ四になってないから、計算方式が四捨五入な可能性もまだあるが。端数繰り上げは確実になくなったな。


 今日の解析一発目は既に決めてある。「新しい【技能】の習得方法と必要経験点」だ。

 指定内容が実質二つだから、二回分の魔力を消費しそうだと思いながら【解析】する。


 新たに【技能】を習得するには経験点を必要とする。ただし「総合等級」数を超える数の【技能】を習得することはできない。習得できる【技能】は本人の資質による。ただし特定の条件を満たしている場合は任意の【技能】を習得できる。条件は「対象となる【技能】の正確な名称を知っている」「対象となる【技能】を習得することを強く意識する」「対象となる【技能】を習得することを一定以上信じる」の三つである。

 新たに【技能】を習得する際に必要となる経験点は、既に習得している技能の数に二百をかけて百を足した値に等しい。


 思っていたより長かった。

 しかし前半にはかなり重要な情報があった。

 一つは「総合等級数を超える数の【技能】は習得できない」こと。いつか【限界突破】を解析した際に「技能数上限」ってのがあったが、これのことか。

 とはいえ、これは知らなかったら面倒なことになっていた。

 例えば総合等級が三級なのに技能数が四つ以上あったら変な目で見られるだろう。

 この世界の住人は経験則で「総合等級=技能数上限」だと知っているんじゃないかと思われる。【技能】を習得しようとしてもできないのだから。

 …あれ? 前に新しい技能を取ろうとしたことがあったような。あの時は総合等級二級で技能数は【魔術】だけで一つだったはず。何か違う条件があるのか? とも思ったが、チートである【解析】の結果が間違っているとは考え(にく)い。

 まあ、後で試せばいいか。


 それより次の情報だ。

 習得できる【技能】は本人の資質による、ってことはつまり「ランダム」ってことだ。

 冒険者をやっているのに、戦闘にも冒険にも関係のない技能を習得する、なんて結果にもなりかねない。

 経験点と技能数制限の浪費だ。前者は魔物を狩れればなんとかなるのだろうが、後者は…あれ、どうなんだろう。もし「【技能】を削除する」ことが可能なら問題ない、のか?

 分からないが、無駄に経験点を消費するなんて絶対に嫌だからな。


 そして任意に【技能】を得る条件。

 知っていること、意識すること、信じること。

 とあるのだが、何か問題があるのだろうかと思ってしまう。これならランダムに【技能】を習得することなんてないんじゃ?

 正式名称は既に技能を習得している人から教えてもらうなりすればいい。【固有札】を確認させてもらえば一発だ。

 意識するのなんか余裕だろう。【固有札】を出さずに【能力】とかを確認する要領でいいはずだし。

 信じる、なんて言われても、こちとら経験点を支払って【技能】を習得しようとしているのだから、任意の技能を習得できるのなんて当たり前じゃないのか?

 良く分からん。とりあえず【解析】で有用な技能を探して任意習得、のコンボで問題はなさそうだ。


 ならすぐに【体術】を覚えてみたい、のだが経験点が足りない。

 計算式によると、二つ目の【技能】を習得する際に必要な経験点は三百点。あと七十点足りない。

 まだ魔物を狩ったことがないから、経験点の価値が今一つよく分からないな。


 すぐに【特典】で経験点を得て一気に強化してもいいんだが、現状では知っている【技能】が少ない。

 そのために【解析】で人の【技能】を覗きまくろう。

 とはいえ、一般人を解析しても戦闘向けの【技能】なんて持ってないだろうから、狙うは冒険者や兵士なんかの戦闘を生業(なりわい)としている人だな。

 冒険者なら「栄光の剣亭」に行けば居るだろうし、兵士や騎士なら…あれ、副隊長さんっていい技能持ってそう。

 やっぱり解析すればよかった。

 兵士は衛兵詰所に行けば会えるだろうが、用もなしに会いに行ったら不審がられるだろうしなぁ。


 とりあえず街の中をぶらぶらする。

 当然、裏道っぽい人通りの少なそうな場所には立ち入らないが。

 今度はちょっと本格的に道行く人を観察する。

 半袖短パンの忙しそうに走り回る子供に、大声で客寄せする露店の商人。大きな通りには馬車が荷を運ぶ姿も見られた。

 大体の人が忙しそうにしていて、普通に歩いている俺がのんびりしているかのようだ。

 細かく見ていると、耳が細長く先が尖っているエルフっぽい人や、どう見ても子供な身長の大人にしか見えない人、そして動物の耳と尻尾を持つ人がいた。

 それぞれ何人か確認したから、色々な意味で特徴的な人だったというオチはないだろう。

 これが【固有札】にあった「種族」の意味だろうな。

 順に「エルフ」「ドワーフ」「獣人」ってところか。

 それぞれ解析してみたいが、今は魔力がもったいないから我慢だ。


 道行く人の中には、普通に武器を持っている人や鎧を着ている人もいる。暗い面持(おももち)だったり仲間らしき人と笑いながら話していたりと様々だ。

 多分冒険者なのだろう。こう、アウトローな感じがひしひしとする。

 肩に大きな袋をかけて談笑しながら歩いている、剣を下げ革鎧を装備した冒険者らしき男の【技能】に【解析】を使ってみた。

 結果は【剣:(+9)三級】【体術:(+9)三級】【探知:(+6)二級】だった。

 三級が複数あるし、技能数が三つだから総合等級も三級かな。解析しなくても予想が立てられるのはいい。場合によっては相手の魔力量を計算する目安になるしな。

 そして【剣】と【探知】。

 やっぱり剣だよな。

 個人的には武器は剣、短剣、投げナイフ、斧槍(ハルバート)が良い。何が良いって格好いい。

 剣か斧槍(ハルバート)かだと正直迷うが、広い戦場で戦う兵士ならともかく、森の中を動き回ったり隠れたりする(と思われる)冒険者なら携帯性に優れた剣だろう。狭い場所じゃ長物(ながもの)は取り回し難いしね。

 次に【剣】と【探知】の【技能】にそれぞれ【解析】をかける。【剣】は技能習得予定リスト入りしてるから調べる意味もあるし、その内容は他の武器系技能にもそのまま適用されるだろう。

 そして解析結果はこうだ。


 【剣】の技能を持つ者は、剣を扱う技術を得る。(剣による攻撃の命中率と威力に補正)

 【探知】の技能を持つ者は、任意のものを探し出す技能を得る。(目端が利き勘が鋭くなる。任意対象を意識することで補正)


 武器系技能は命中率と威力に影響するようだ。つまりこれがあれば攻撃はとりあえず大丈夫、ということだろう。

 ただし「剣による攻撃」とある以上、それ以外の、例えば拳や蹴りは勿論他の武器には効果がないのだろう。

 ゲーム的には当たり前なのだが、現実的に考えると変だよな。別の武器でも心得程度の効果はある気がする。まあ、この世界はゲームチックだからそういうものなのだろうと納得しておくか。


 そして【探知】。これはかなり便利な技能だ。

 戦闘には直接関係ないだろうが、冒険者としては垂涎の技能なんじゃないだろうか。

 魔物を狩りたい場合。魔物や魔物の痕跡を探す時間が短縮されるだろうし、薬草やらの採集物を探すのにも効果があるだろう。さらにわざわざ「目端が利き勘が鋭くなる」という解析結果が出ているということは、能動的に探すだけじゃなくて受動的に気付く場合にも有効だってことじゃないかと思う。

 加えて、こんな技能があるってことは逆に隠れたり隠したりする技能があるんじゃないか? という推測もできた。


 ついでにさっき解析した冒険者と一緒に歩いていた二人の【技能】も解析してみる。

 一人は弓と矢筒に革製らしき胸当てや肘膝当てを装備していて、一人は剣と盾に厚めの頑丈そうな革鎧を装備している。

 結果は【隠密:(+9)三級】【弓:(+12)四級】【体術:(+6)二級】と【防御(+12)四級】【剣:(+9)三級】【探知:(+9)三級】だった。

 新しい技能は【隠密】【弓】【防御】か。弓の解析はしなくてもいいような気がするが、遠距離攻撃だと勝手が違うかもしれないからやっておくか。

 しかし、技能だけ見れば盾持ちが一番強かったな。能力を見てないから実際にはどうなのか分からないが、技能一級分の実数値補正は大きい。彼がリーダーなのかな。

 とりあえず三つの【技能】を【解析】する。


 【隠密】の技能を持つ者は、任意のものを隠す技能を得る。(自身の気配を察知され難くなる。任意対象を意識することで補正)

 【弓】の技能を持つ者は、弓を扱う技術を得る。(弓矢による攻撃の命中率と威力に補正)

 【防御】の技能を持つ者は、身を守る技術を得る。(身を守る行動に補正)


 予想通り【隠密】は【探知】の対極にある技能のようだ。これがあれば隠れて近付き奇襲をかける、なんてことも容易になるのだろう。

 そして【弓】も大体予想通りだが、解析結果が「弓による攻撃」じゃなくて「弓矢による攻撃」になっていた。まあ、弓で攻撃なんてしないだろうからな…しないよな?

 微妙なのは【防御】だ。解析結果も見たままだった。もうちょっとこう、何かあっても良い気がする。とりあえずダメージ軽減効果はあるのだろう。


 こうなってくると逆に【体術】【防御】【探知】【隠密】がないのは不安になる。

 能力の実数値を考えれば技能の補正効果は高い。つまり【技能】がない者は【技能】がある者に比べて圧倒的に不利になるということだ。

 例えば俺は今【体術】の【技能】を持っていない。この状態で誰か【剣】技能を持つ相手に剣で襲われたら、まず避けられないということだ(今の俺は能力も低いし)。そして【探知】のない俺は【隠密】で後を付けられても全く気付けないだろう。

 そう考えると急に不安になってくるな。

 ソロでいくためには一人で何でもできなくてはならない。普通は技能数制限が問題になるのだろうが、俺には【限界突破】がある。

 ただ、技能をあれこれとっていては経験点を大量に消費することになるだろう。その分を基礎ステータスである【能力】や魔力さえあれば応用性の高い【魔術】に()ぎ込む方が効率的な気がしないでもない。


 何が正解かは分からないが、最終的には「魔物を狩って得られる経験点」によるのだろう。

 冷静に考えると、魔物一匹を狩って得られる経験点なんて高が知れている気がする。

 何せ、ここはゲームな世界だが現実なのだ。

 人間以外の種族はどうなのか知らないが、人間の体質(性質?)が同じなら長くて百年生きられるはず。

 老化での【能力】や【技能】の低下があるのかは分からないが、仮に十五歳から四十歳まで一日に一体魔物を狩り、魔物一体につき経験点が一点入るとしたら、一年が三百六十日だから二十五年で九千点の経験点が入る。六十歳までなら一万六千二百点だ。

 それだけあれば、かなりの強化が見込めるのではないだろうか。

 もっとハイペースに狩りをすれば、その分経験点も増えるだろうから、中年くらいになったら総合等級十級の人もそこそこ出てきそうだ。

 仮にも等級は限界が十級で、それ以上は例外として特級なんて評価方法なのに、そうポンポンと十級が現れるものなのだろうか。

 俺はそうは思えない。

 つまり、経験点の取得はそこそこ困難であるという予想なのだ。

 そう考えると【特典】の経験点一万点は大きいな。


※注意※

表現の決定的なミスを修正しました。

・修正前

 一つは「総合等級数以上の【技能】は習得できない」こと。いつか【限界突破】を解析した際に「技能数上限」ってのがあったが、これのことか。

・修正後

 一つは「総合等級数を超える数の【技能】は習得できない」こと。いつか【限界突破】を解析した際に「技能数上限」ってのがあったが、これのことか。

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